はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

難民問題

2015年09月08日 | はなこのMEMO
 ヨーロッパでは切迫した問題として、難民の受け入れをどうするかについて専ら取り沙汰されているが、本来ならもっと早くに難民を生み出さないよう、周辺諸国や国連の働きかけで中東アフリカの混乱を収拾させる等の根本的な解決が図られるべきだった。

 それが今に至るまで出来なかったのは、本来世界全体のスーパーバイザー組織としてあるべき国連が形骸化し(いい加減制度疲労して、単なる常任理事国の利益誘導の場と化しているし、加えて現事務総長は無能過ぎる)、機能不全に陥っているからであり、中東の金満産油国家が同じ宗教でありながら宗派の違い等を理由に、隣国の紛争に積極的に関与しようとしないからだ。

 かくて自国の内戦から逃れて中東アフリカからヨーロッパへとなだれ込む難民の数は増える一方だ。

 しかもヨーロッパへの難民が一気に増えた原因は、トルコ人組織による難民輸送が、ひとつのビジネスとして確立したからだとも言われている。内戦国の人間は自国にある自らの不動産を引き払い(内戦下でも不動産が売れるのが不思議。おそらく内戦を理由に買い叩かれるんだろうけれど)、売れるものは売れるだけ売って、ヨーロッパへの渡航費用を工面しているのだろう。

 そんな必死の思いで渡航を実行したのに、難民をただの金づるとしか見ていない仲介業者の杜撰な輸送方法によって、輸送船の転覆による溺死や、先のウィーンで発覚したようなコンテナ内で70人以上が窒息死と言う悲惨な事故も起きている。

 情報化社会で容易に他国の情報を仕入れることが出来る現代である。しかも、今難民としてヨーロッパに辿り着いている人々は、自国では比較的裕福で、教育レベルも高く、渡航費用を工面出来た人々だ。そんな彼らの大半はネットで得た情報をもとにドイツを目指す。一方、貧しい大多数の人々は仕方なく自国に留まったままか、近隣国国境にある難民キャンプに身を寄せているのである。

 さらにEU域内の移動の自由を認めたシェンゲン条約を利用してドイツに向かう難民が経由する国々でも、大量の難民が一度に押し寄せたことで、現地と様々な摩擦を生んでいる。

 EUの優等生ドイツは経済的に豊かであることと、大戦時のユダヤ人迫害で多数の難民を産んだ反省から、難民受け入れには積極的ではあるが、そのキャパシティにも限界がある。英国も当初の難民受け入れ拒否から一転して、最近2万人の受け入れを表明したが、同じEU域内でも経済的にまだ貧しい東ヨーロッパ諸国では難民受け入れに難色を示す国々が多く、EUはけっして一枚岩ではない。

 それほど広くない土地に大勢の民族がひしめきあい、経済格差の大きな国々がせめぎあうヨーロッパで、大量の難民を受け入れることにはそもそも無理がある。高邁な人権意識だけでは立ち行かない厳しい現実がある。当初移民は地元民が厭う仕事に安価な労働力として重宝されるが、地元民の中でも下層に位置する人間とは競争関係にあり、意欲に優る移民との競争に敗れた地元の下層民は、反社会勢力(ドイツなら排外主義のネオナチ)として台頭する恐れもあるのだ。

 本来は自らの生まれた国で、同じ価値観の人々と共に暮らすことが、最も理に適った生き方のはず。難民が生まれる祖国の情況こそが問題なのだ。

 歴史を振り返れば、現在のヨーロッパの苦境は、かつての帝国主義時代、ヨーロッパ列強が中東アフリカを蹂躙したツケが回って来ただけとも言えるが、戦後石油利権に絡んで中東紛争に深く関与した米国も含め、当事者意識を持たざるを得ない国々は、今一度、中東アフリカの混乱の収拾策を、もっと真剣に探るべきではないのだろうか?

 それとも武器商人(兵器産業)の暗躍で密かに莫大な利益を得ている国があるからなのか、直接自国の利益にならないことには、どの国も積極的に関わりたくないのか?或いは、誰も自分の政権では、この混乱の責任を取りたくないということなのだろうか?

 日本も朝鮮半島の緊張や中国経済の先行き次第では、大量の難民が日本海や東シナ海を越えて押し寄せて来ないとも限らず、けっして他人事ではないのが怖いところだ。

 国連難民高等弁務官事務所からは、日本もシリア難民の受け入れを要請されているようだが(現時点で難民申請が受理されたのは3人のみらしい)、歴史的に関わりも薄い上、言葉、民族、宗教、生活習慣の壁が厚いと思う。特に宗教の問題はすごく繊細だ。一時的な避難だとしても、日本政府が態勢をきちんと整えてから受け入れないといろいろと問題が起きそうだ。もし政府に受け入れる考えがあるのなら、ヨーロッパに倣って今から準備していなければならないはず。実際のところ、どうなのだろう?

 高度情報化社会である21世紀の民族大移動は、豊かな社会への一極集中を招きかねないだけに、現時点では誰もその問題の解決策を見出せないでいる。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 女神(ミューズ)たちの奏でる... | トップ | 『親』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。