試写会、当たらない時には全然当たらない。当たる時には続けて当たる。
川崎チネチッタの女性限定試写会に昨夜友人と行って来た。今年チネチッタはチネチッタとして開業して20周年、ラ チッタデッラとしては5周年に当たるそうである。それを記念して、6月1日(金)~3日(日)の3日間、Festa Italiana a LA CITTADELLAというイベントが開催されるようだ。その関連か、今回の試写会ではその宣伝チラシと共に、仏ワイン(赤・白)他、国内外の食品の詰合わせパックのお土産まで付いていた。ちょっとしたサプライズ・プレゼントだった(笑)。
「しっかり見ろ」―表現はさまざまだがニュアンスとしてはほぼこの言葉に近い言葉が劇中何度となく繰り返される。観客は舞台を見ているようで肝心なところは何も見ていない。そういう観客の迂闊さが大仕掛けのトリックの成功を支えているとも言える。しっかり見ているつもりでも、たぶん騙されてしまうのだ。逆にタネを明かされようものなら、途端に興ざめしてしまう。とどのつまり、トリックとは騙されてナンボのもん、ということなんだろう。
この作品は男性マジシャン二人の確執を軸に物語が展開するのだが、"トリック”に取り憑かれた二人の対決が陰湿で、ネチッこくて、いやはや男性のライバル意識や執念や怨念も女性に負けず劣らず凄いものだと恐れをなした。この二人を人気俳優ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールが演じており、二人の間を行き交う美しきヒロインが今をときめくスカーレット・ヨハンソンである。
しかし、この作品の演出を手掛けたクリストファー・ノーラン監督、彼の名声を一気に高めた『メメント』を私はあいにく未見なのだが、その後の『インソムニア』『バットマン・ビギンズ』を見ても感じたと同様にどうも「女性を描くことがあまり得意ではないのかな?」という印象が否めない。当代きっての”華”であるはずのスカーレットの魅力が本作ではあまり伝わって来ないのだ。露出度の高い衣装で惜しげもなくセクシーな肢体を晒してはいるものの、強烈な男性二人の対決の影に隠れて、彼女の存在感は今ひとつ薄い。男を惑わすファム・ファタールを演じた『マッチポイント』の彼女の方がずっと良い。
物語の展開も、印象としては『デジャブ』で感じたようなモヤモヤ感が残った。物語の舞台となった20世紀前後は工業化時代、科学の時代であったのだから”ソレ”もアリなんだろうが、おかげで純粋なサスペンス劇とは言い難くなった。おそらく鬼気迫る二人の心理的駆け引きがこの作品の一番の見どころであり、物語の整合性や合理性よりも優先されたのだろう。
キャスティングは主役級の3人を始めなかなか豪華。名優マイケル・ケインに、お久しぶりのデヴィッド・ボウイが脇を固めている(そしてLoRのゴラムも!)。米アカデミー賞撮影賞、美術賞にノミネートされただけあって映像も美しい。トリックの監修も当代随一のマジシャン、デビッド・カッパーフィールドが手掛け、いかにもお金をかけた映画という感じだ。こういう大仕掛けの”トリック”は観客も好きだろう。
Yahooのレビューサイトには既に20以上のコメントが寄せられている。それらをザッと読んでみたが、本当に感想、評価はひとさまざま。たぶん、そういう映画なんだろう。『ザ・シューター』よりは、個人的にはこちらの方が好み。