ほとんどの勝負事では、先手が有利で、後手は不利となる。最終的に領地(単位を目(もく)で表す)の広さを競う囲碁は、そのはなはだしい例といえる。
先手(黒)と後手(白)の条件を同じにするために、プロの対局ではコミと呼ばれるハンディが取り入れられる。現在のコミは6目半、つまり先手は後手より7目以上多く領地を確保しないと負けになるというわけだ。
北朝鮮の金正日総書記もまた、先手の優越感をかみしめていることだろう。きのう、人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを打ち上げた。土曜日の朝、「まもなく」と発表してから、さんざん待ちぼうけを食わせたあげくの発射だ。後手に回らざるを得ない日本政府に、誤報というダメージを与えることもできた。
幸い、日本列島に残骸(ざんがい)が落ちてくることはなかった。一方で、発射が成功したとすれば、北朝鮮によるミサイル攻撃の危険性が強まったことを意味する。北朝鮮は、米本土の一部に到達するミサイルの脅威を利用して、米国との交渉でも先手を取る構えのようだ。
しかし、国際政治は、勝負事のようにはいかない。今回の発射を監視してきた、日米韓の連携が乱れることはなかった。日本人の防衛意識をさらに高める“効果”もあった。それは、北朝鮮の打つ手の幅を狭めることにつながる。実は、「先手必勝」の鉄則は、勝負事の世界でも、崩れつつある。
囲碁ほどではないにしろ、先手が有利とされてきた将棋だが、平成20年度のプロの公式戦では、初めて後手の勝率が、先手を上回った。トッププロの分析によれば、苦しい分、後手が工夫を重ねて、対策を立てるようになったためらしい。この点は、日本の外交、防衛の当局者たちも大いに見習ってほしい。
産経抄 産経新聞 4/6
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