自民党の菅義偉選対副委員長が、衆院選の政権公約に、世襲候補の立候補制限を盛り込もうとして、党内で物議を醸している。世襲は、企業にとっても古くて新しい問題だ。
「創業者の孫というだけで、社長にするのはおかしい」。平成9年、当時、松下電器産業の相談役だった山下俊彦氏の発言を、メディアは松下の“お家騒動”とはやし立てた。山下氏は、昭和52年から9年間、社長を務めた。
「経営の神様」松下幸之助、娘婿である正治氏(現名誉会長)に続く3代目、創業家以外からの初のトップだった。しかも取締役二十数人を飛び越えての大抜擢(ばってき)は、「山下跳び」の流行語まで生んだ。その山下氏の発言は、正治氏の長男、正幸副社長が社長に昇格する、創業家への「大政奉還」の動きを牽制(けんせい)するものだった。
どれだけの効果があったのか不明だが、その後も松下の社長は創業家以外でバトンをつないでいる。平成20年には、社名から「松下」がとれた「パナソニック」に生まれ変わった。世襲といえば、本田技研工業創業者の本田宗一郎が腹心の藤沢武夫と、親族を会社に入れないことを誓った“美談”が有名だ。
もちろん、世襲が悪いわけではない。トヨタ自動車は、あえて創業家4代目の豊田章男新社長のもとで、世界同時不況の大逆風に立ち向かう道を選んだ。菅氏の提案は、案の定世襲の衆院議員が3分の1強を占める自民党内から、猛反発を受けた。公約化に意欲を示す民主党に、追随する必要はない。
ただ、「職業の選択の自由」まで持ち出して、問答無用を決め込んでいいのか。生き残りをかけて、世襲問題と格闘してきた企業に比べて、自民党内の危機感が薄すぎるのが、老婆心ながら、気にかかる。
産経抄 産経新聞 4/23
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