kouheiのへそ曲がり日記

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要領のいいエゴイスト(38)

2015-05-22 04:47:21 | 日記
――♪ずっと愛してる、たとえ雨でも、明日の風に忘れなさいと言われても、愛してる、他には何もいらないの、My love♪(松田聖子)――

「J・K君(ペルーからの留学生)が、『たとえ雨でも愛してる』っていうのが分らないと言うてましたよ」
「?・・・君の言うてることが分らんけど」
「とにかく、アイドルの唄は歌わない方がいいですよ、恥ずかしいですよ、聴いてるこっちが」

・・・これは『原子心母』みたいに、クラシックの合唱団をつこうとるんやな・・・
・・・でも、あそこでギターが変な音だすやろ? なんでそのままレコードにするんやろ? 修正したらええのに・・・

「あれ、どこの合唱団?」
「あれ、と言いますと?」
「Mama, just killed a man. Put a gun against his head. Pulled my trigger, now he’s deadという曲やがな」
「あぁ、クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』ですか。あれは合唱団つこうてません。フレディ・マーキュリーとギターのブライアン・メイ、そしてドラムのロジャー・テイラーが何遍もオーヴァー・ダビングをくりかえして、あの効果をだしてるんです」
「へぇ~、しかしそのちょっと前にギターが変な音だすやろ? あれは失敗やな?」
「変な音?・・・あぁ『預言者の唄』と『Love Of My Life』のつなぎ目ですか? あれはフィードバック奏法といいまして、エレクトリック・ギターの正式な奏法です」
「どうやってあんな音出すの?」
「つまり、エレキギターというのは、弦を弾くところにピックアップ、まぁ、マイクがついとるわけですね。で、アンプから出た音をそのピックアップで拾い、循環さすわけです、するとああいう音が出ます」

・・・これは、キング・クリムゾンの『USA』です・・・
・・・これ、何の音やろ?・・・
・・・ヴァイオリンのような、でもちょっと違うな・・・

「『USA』のヴァイオリンのような音、あれ何や?」
「あれはメロトロンです」
「メロトロンって何や?」
「まぁ、鍵盤楽器ですけど、鍵盤の数だけ、ホンマもんの楽器の音を録音した3トラックのテープが入ってるんです。で、CならCの鍵盤を押すと、その高さのヴァイオリンならヴァイオリンの音が録音されたテープがまわりだして、アンプからその音が出てくるわけです。当時のシンセサイザーはいかにも電子音という単純素朴な音しか出せなかったし、和音が出せなかったんです、だからクリムゾンなんかはメロトロンを多用したわけですけど、メロトロンは録音テープを再生するので音質が悪く、また早弾きができないし、7秒すると音がなくなってしまうんです」
「なんでや?」
「つまりテープが終わってしまうんです、で、鍵盤から指を離すと、0.5秒で巻き戻るんですけど」
「なるほど、それで分った」

僕はその日、『春の祭典』を聴き、次にキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』を聴き、さらに松田聖子の『ユートピア』を聴いた。
その翌日、H教授が呆れかえったような顔をして言った。

「丸山真男が書いてるけど、君はどういう耳をしているんや? クラシック聴いてロック聴いて、さらに続けて歌謡曲聴くなんて・・・ちゃんぽんやないか」
「丸山真男?・・・はいはい、たしかいろいろな時代の曲をいっしょに聴くなんて『容器』であって『人格』ではない、という論でしたね、でも、音楽は理論ではありませんから、思想でもないですね。たとえば現代日本の食生活を考えてみれば、朝にご飯とみそ汁を食べ、昼にラーメンと餃子を食べ、夜に彼女とフランス料理のフルコース食べにいっても何の不思議もないわけでしょ? 音楽もそれと同じですよ、丸山のあの議論は、主知主義的なヘンコウ(偏向)がありますね」
「ヘンコウって何や?」
「バイアスです」
「・・・それにしても、なんで君は丸山真男の音楽論知ってるの?」
「そらあ、読んだからですよ」
「いつ読んだ?」
「H先生に日本社会主義思想史やれと言われて、丸山を必死に読んでたときだから・・・5年ほど前ですね・・・あっ、思い出した! たしか論文のタイトルは『盛り合わせ音楽会』じゃなかったですか?」
「・・・」
「でもまぁ、あの論文は丸山がどうしても俺はこれが言いたいって書いたもんじゃなく、音楽雑誌の編集長かなんかに頼まれて仕方なしに書いたもんでしょ? 最後に『こんな文章ができましたが、こんなもんでも雑誌に載りますか? 載るもんなら載せてやってください』とかなんとか、ユーモアたっぷりに書いてますやん。だから丸山真男は間違っているなんて、目くじら立てるつもりはまったくないですけどね」
「(唖然として)・・・」(つづく)

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