ヤワラちゃん、アリガトウ

いよいよ北京五輪が開幕しましたね
私はヤワラちゃんこと谷亮子選手の大ファンなので、
今日が初日にして既に最終日の様なテンションでした。
毎年見に行ってる淀川花火大会もキャンセルしたほどです。



ヤワラちゃんの試合を初めてで見たのは、
多分バルセロナオリンピックの時だったと思います。
その時は16歳にして銀メダル。
その次のアトランタオリンピックでも、
金は確実と言われながらも北朝鮮の選手に決勝で負けて銀メダル。
あの時の印象はとても強くて、今でも忘れられません。

普通なら銀メダルでも万々歳ですよね？
それをムスっとした表情で表彰台に上がり
表彰式が終わった瞬間、メダルを首から外してしまった。
彼女は決勝の試合終了後、控え室で号泣したそうです。
そんな彼女の気持ちが現われてるような行動が
今でもずっと記憶に残っています。
そしてそのヤワラちゃんを見てから、
私はずっと彼女を応援したいと思ったのです。



その４年後のシドニー。
やっと。
やっとの想いの金メダル
私、泣けました


その４年後のアテネでは
「最高で金。最低でも金。」の助言通り、
彼女はまた金メダルを獲った



過去４回のオリンピックで金２回銀２回。
その他にも世界選手権７回金メダル。
普通では考えられない記録です。



そんな彼女が挑んだ今回の北京オリンピック。
もちろん期待されるのは金メダル。




昼間からにかぶりつきでした。
「５回勝てば金メダル」。
私の中には１回戦からその気持ちがありました。
なので例え相手が格下の選手でも、
どの試合もドキドキで見ていました。

１回戦はアメリカの選手。
優勢勝ちではありましたが、なんとか勝ってくれました
しかし５分をこんな長いと思うことってないですよね



「あと４つ」




２回戦は地元中国の選手。
声援もすごくてムードは完全に中国。
そんな中でもなんとか５分戦いきり、
延長戦へともつれ込んだのでありました。

延長戦はヤワラちゃんペースでしたが、
１ポイントでも決められればその時点で終わりなので、
ほんと緊張はマックスです
それでも延長戦が始まって１分半ほどで、
見事技ありを取って勝ってくれました
私、この時点でもう泣きそう
それだけ彼女の試合には、彼女が背負ってるものが見えるんです。



「あと３つ」



３回戦は同じようなタイプの選手。
正統派でちゃんと組み合ってくれる選手だったので、
これはヤワラちゃんにとってやりやすいんじゃないかと思いました。
それでも時間ギリギリまで戦って優勢勝ち。
また５分が長かった



「あと２つ」



そこから少しインターバルが開いて、
７時過ぎから決勝戦が行われました。
４回戦（準決勝）の相手はヨーロッパの選手。
上背があり、組み合ったら不利な感じ
でもヤワラちゃんは今までそう言う選手と何度も戦ってきてるし
何度も勝ってるので大丈夫と信じていました。

ところが試合が始まっても、お互い組み合わず指導が
両者３分の間に指導が２つも出され、
とても苦しい試合運びとなりました。
そして試合終了33秒前、ヤワラちゃんにだけ指導が



残された時間は33秒。
焦るヤワラちゃん。
組み手が取れなくても全身でぶつかっていく。
何度待てがかかっても、
何度も何度も全身で。


無情にもポイントがないままブザーが鳴った。。。



喜んで飛び上がる相手選手。
現実を受け止めようとするヤワラちゃん。
私はショックで言葉が出ませんでした…。




「あと２回だったのに」




その数分後、銅メダルをかけての試合に
ヤワラちゃんが会場に姿を見せました。
その目は金メダルを追ってたときの目とまるっきり違って
どこか虚しげな、淋しげな、気持ちの無い、
とても今から戦う選手とは思えない表情でした。


負けてから次の試合まで多分10分ぐらい。


その間に気持ちなんて切り替えられるワケないですよね。
この４年間どんな想いで、
そしてどれだけの期待の中で過ごしてきたのかと想うと、
その眼差しが痛々しくて苦しくなりました



それでもヤワラちゃんは、この試合で
今回のオリンピック初めての１本勝ちを収めてくれました。
投げて銅メダルが決まった瞬間にも
笑顔は一つも見られませんでした。




天井を見上げるヤワラちゃん。
前回見上げた天井は、
もっとキラキラ輝いて見えたでしょう。
でも今日はどんな風に映ったんだろう。

応援してくれた人の笑顔が映し出されたんだろうか？
自分の25年と言う柔道人生まで映し出されたんだろうか？
目を落とした瞬間、ヤワラちゃんの目は赤くうるんでいました




たたみを降りる前に観客に少し笑顔を見せ、
深々と頭を下げるヤワラちゃん。
それは銀メダルを首から外したあの頃の彼女より
はるかに大人になった彼女の姿だった。




引き上げる姿に、
どれだけの期待が
この小さな肩にかかってたんだろうと思う。
どれだけの痛みを、
どれだけの苦しみを
この小さな身体で乗り越えて来たんだろうと思う。

彼女の表情は、その全てを表現していて、
恐らく誰も気軽に「オメデトウ」は言えなかっただろう。
彼女がその言葉を待っていないのを分かってるから。






「アリガトウ」




私は今彼女に贈りたい。
ヤワラちゃんは「皆さんに感謝したい」と言ってたけど、
夢や希望を貰ってたのは、
周りにいる人やファンの方だったと思う。


オリンピック５回出場
全てメダル獲得



この結果がどれだけ素晴らしいものか、
それは見ていたみんなが知っている。
だからこそ、感謝の気持ちを贈りたい。




少し休んでいいんじゃないかな？
25年間も走り続けたんだもん、
ちょっとは自分にご褒美あげてね、ヤワラちゃん
今日の銅メダルはもしかしたら、
神様からのだったのかもしれないと
今になって思います。
頑張り続けてるヤワラちゃんに、
「もう荷物を下ろしなさい」って、ね。



これから彼女がどんな道を選ぶか分からないけど、
もう誰かのことを考えないで、自分の好きなことやって欲しいな。
と言って全く柔道を見られなくなるのも淋しいけどね
ってこんなファンがいるからダメなんだろうな




それでも。
私は５年前にあなたから貰った手のぬくもりと。
あなたから貰った最高の笑顔は。
ずっとずっとココロの宝物にしてくからね