10月24日。
3時起床、4時前宿を出発。
登山の朝はやたら早い。
車で行けるのは屋久杉自然館まで。
そこから登山口までの約20kmはバスを利用しないといけません。
バスチケットには「入山協力金」ってのも含まれてます。
くねくね道を時間にして40分くらいかな。
鹿児島からきた女子三人組と仲良くなったのでお喋りしてたらあっという間だった。
6:00 荒川登山口着。
今回のコースは「縄文杉ルート」って最もメジャーなとこを使う。
屋久島でトレッキングする人のほとんどはこの荒川登山口からスタートして縄文杉までの往復ってのを選ぶ。
往復22kmの長い行程だけど、16kmくらいはほぼ平坦なトロッコ道なんで普通の人であれば早朝に出発して夕方には帰ってこれる。
でも今回我々は縦走するので、ここには帰ってこない。
ま、何はともあれ、とりあえず朝飯だ。
前日に予約し、行きがけに受け取ってきた弁当。
屋久島には登山者用に朝4時から6時の間だけやってる弁当屋さんが何件かある。
ここだけに成立するニッチな商売。
多い時期にはここに1,000人を超える人が訪れるんだとか。
でも今回は200人は超えてたけど300人まではいなかったと思う。
バスの時間があらかた決まってるので、どうしても皆の出発も同じくらいの時間になるし、
多少の速い遅いはあっても人がまとまっていくので有名なスポット等では渋滞がおこってしまう。
でも自分達はそういうのも加味してルートを組んだので、いろんなとこでゆっくりと見る事が出来てよかった。
トイレを済ませて6:30に登山開始。
さあ行ってみよう!
素掘りのトンネルから屋久島トレッキングが始まる。
ガイドが「帰りでこのトンネルが見えたらゴールですよー」って言ってた。
なるほど。でも我々は縦走するのでここには帰ってこない。
特に必要性を感じなかったのでガイドは頼まなかったけど、ほとんどの人がガイド同伴なのであちこちに沢山いる。
だから途中途中で説明してくれるのも横から全部盗み聞きできちゃう。
のっけから木や切り株がでかい!
山の深さといい色んなスケール感が普通じゃない。
これは後半になればなるほどスケールアップしていく。
トロッコ道
縄文杉ルートはこんな道が約8km続きます。
基本的に歩きやすいし、ほぼ平坦みたいな道なんで楽ちんなんだけど、長いのでそのうち飽きてくるw
復路はもっと長く感じるんじゃないかな。
4kmほど歩いたとこで、白谷雲水峡への分岐が現れる。
当初は退屈なトロッコ道よりもこっちから登ろうと思ったんだけど、下山してからの事を考えると今回の荒川から入った方が便利。
でもこっちも見たいのでここからピストンする事に。
トロッコ道はちょっと退屈だけど、こっちに入ると道の表情が断然良くなる。
ヤクジカ、近づいていったら流石に逃げるけど、普通に歩いてる分にはチラリと見るだけで無視してる感じ。
屋久島には熊もいないし猪もいない。
要は鹿にも猿にも天敵がいないって事なので、そんなに警戒心が強くないんだな。
出来るだけ楽な道で・・・とかってのを求めるんじゃなければ、こちらを通る方がより楽しめると思う。
起伏が多くて変化を楽しめて、トロッコ道よりも「大自然の中にいる」って気分に浸れるし、
大きな岩を持ち上げてやっと通れる場所とかあってアドベンチャー要素が強い。
えっ?? こんなの持ち上がるわけないって??
大丈夫大丈夫、ほんの30tくらいなもんですよ。
そんなこんなでこの道のピーク「辻峠」に到着。
ここにザックをデポして枝道に入っていく。
太鼓岩
もののけ姫のワンシーン、モロがアシタカに向かって「お前にサンが救えるか!!」と叫んだ場所と言われる。
ちょっと霞んじゃってますけどね、ほとんど展望のきかない森の中からこの景色が見えたら思わず声が出ちゃいますよ。
ちなみに落ちたら無事じゃ済まないけど柵なんてものはない。
正面にあるのが翌日にアタックする宮ノ浦岳。上の方は雲に隠れてよく見えませんが・・・。
ほとんど晴れる事がないと言われる屋久島の最高峰。
頑張って登っていっても何も見えない確率の方が高い。
でも行きたい。
ここでなんかえらい大きなザック持ってる人がいるなって思って聞いてみたら、なんと110㍑だと。
試しに担がせて貰ったけど、立ち上るのがやっとで、とてもじゃないが山道を歩こうなんて思えない。
彼女さんと一緒だったので、一人で荷物を全部背負ってあげてる優しい人なんだな・・・って言ったら、
「いや、彼女も頑張って70㍑を担いでくれてます」ってw
話を聞いてみると、どうやら素人じゃないカメラマン。
カメラもNikonのフラッグシップだったし、ザックの中もほとんど機材だって言ってた。
これを担いで屋久島の山を登ろうって考える事がまず凄い。
世の中にはいろんな人がいるもんだ。
40㍑のザックで重いとかえらいって言ってる自分達が恥ずかしい。
でも重いものは重い。
太鼓岩を後にして、白谷雲水峡方面へ下っていく。
より一層緑が濃くなっていく。
すごく綺麗。
屋久杉
屋久島にある杉を屋久杉っていうんじゃない。
屋久島の、標高1,000m以上の場所にあって、樹齢が1,000年を超えたものだけが屋久杉と言われる。
この七本杉の樹齢は2,000年とも3,000年とも言われる。
普通の杉の寿命は300年から長くても500年くらい。
屋久杉の育つこの島の環境が如何に特異なのかってのが分かる。
苔生す(こけむす)森
これぞもののけ姫の舞台。
辺り一面緑色で、静寂で、神秘的とすら思える世界。
屋久島は火山帯に位置する島だけど、通常のようにマグマが噴火して積もって出来たのではなく、海底が隆起してできた島。
だからほとんどが花崗岩をはじめとする岩石地質で、土が非常に少ない。
さらに上部では年間8,000mlを超える豊富な雨が降る。
この条件は苔が生えるのに適してるんだとか。
月に35日雨が降るってほど雨が多いので川も多いってのは前回言った。
でも仮に何ヶ月も全く雨が降らなくても水が枯れることはないらしい。
屋久島の朝の森は霧に包まれる。
その水分をこの苔が含み、川の水となって流れる。
だから水がほんとに豊富で、登山に必要な水場がそこかしこにある。
普通登山する時は飲み水や調理に使う水を持ってあがるのが基本で、富士山の時も合計5㍑近くの水をザックに入れて登った。
水はとても重いから大変なんですよね。
でもこの屋久島では500mlのペットボトル2本も持ってればまず大丈夫。
ちなみに自分の場合は1本で足りました。料理の時の為に折りたたみの1.5㍑のは持ってったけど。
白谷山荘小屋でトイレと水の補給を済ませて、やってきた道を帰る。
「神秘の森」って表現がぴったりだと思う。
木も苔もけして何も語らない。
でもきっと何かを感じ取れる場所。
正直言ってここに来る前は「苔なんてどこにでもあるじゃん」って思ってたけど、予想以上にずっと美しかった。
こちらまで足を延ばしたのは大正解でした。
分岐まで帰ってきて、再びトロッコ道を歩く。
程なくしてザックが二つ歩いてる・・・じゃなくて先ほどのカメラマンカップルに追いついた。
ザックまじででけーなw
また少し話しして、今晩の目的地が同じだという事が分かった。
「じゃあまた夜に会いましょう!」って別れたけど、その晩そこに彼らが辿り着く事はなかった。
まあこれだけの荷物背負ってたらペース遅くなるので仕方がない。
とても感じがいい二人だったし、写真の事とか色々話し聞きたかったな~。
歩く、歩く、もくもくと歩く。
名前がついてる木は流石にでかい。
実際に見ると「でけー!!」って思うけど、写真に撮るとどうもその大きさが伝わらない。
なのでもう大きな木を紹介するのは基本的にやめる事にしました。
13:15 大株歩道入口到着 = トロッコ道の終わり
今回は白谷雲水峡に寄ったけど、通常の縄文杉ルートではここからやっと登山道っぽくなってくる。
ちょっと遅くなったけどここで昼ご飯。
弁当は朝と昼の二つ頼むのが普通。
基本同じだけど、おかずを替えてくれてるちょっとした心遣いがうれしい。
そして写真で見るよりおにぎりが大きくてかなりボリュームある。
再びトイレと水の補給を済ませて先に進む。
いいね!やっぱ登山はこういう道でなきゃ。
この辺りから縄文杉を見て下ってくる人とすれ違う事が多くなってくる。
基本は登り優先なので、みんな止まって道を譲ってくれる。
でも女子のグループの時ははこっちが止まって美人度チェックをしっかりと。
しばらく歩くとなんか賑やかそうなエリアに。
ウィルソン株
豊臣秀吉の命令により大坂城築城(京都の方広寺建立とも)の為に切られたといわれる木の株。
秀吉なのになんでウィルソンやねん!って思うけど、後に発見したのがウィルソン博士だからだとか。
これね、中が空洞でとても広いんですよ。10畳くらいあるんじゃないかな。
中には祠みたいなんがあって、神聖な場所みたいになってます。
屋久島の中でけっこう代表的なスポットなんですが、大木がこれでもかってある中で何故ここがそんなに有名なのか。
それはこういう事。
ある場所から見上げるとハートの形に見えるから。
ここに来ると恋人が出来るとも言われるパワースポット。
だから「これ自由に使っていいよ」ってアメックスブラックカード渡してくれるような愛人が僕にもできるかもしれません。
通常はここは順番待ちで写真撮ってる混雑エリアなんですけどね、白谷雲水峡に寄ってきたのですぐに人がいなくなりゆっくり見れました。
さらに先へ進む。
ここから木のでかさがハンパなくなってくる。
なんだろう・・・
とにかくスケール感が圧倒的すぎて、むしろ自分の知ってる木がおかしかったんじゃないかと。
映画とかで外国の馬鹿でかい木とか出てきますけど、そんな感じ。
日本じゃないみたい。
これくらいしか自分の表現力では上手く言い表せない。
山ばっかりのとこで生まれ育ちましたけど、木や森を見てこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。
やっぱり来てみて自分の目で見ないと分からない。
森林浴とか、マイナスイオンとか、そういう理屈っぽいのはどうでもいい。
とにかくもっとこの場にいたいって思った。
縄文杉
死ぬまでに絶対見たいって思ってるもの、また一つ達成できました。
しかも完全貸切で。
今は枝が折れる恐れがあるからって近くまでは行けないようになってるけど、
唸るほどの大木が溢れる中でも一際大きくて、存在感がハンパない。
縄文杉は樹齢7,200年とも、いやいやそんなになくてせいぜい3,000年くらいとも言われるけど、
ロマンがあるので自分の中では7,200年としておこう。
幹周は16mを越え、大人8人でも手が届かなかったって話を聞いた。
屋久杉の成長は普通の杉より何倍も遅い。
例え樹齢何年であろうと、自分の想像できる範囲を超えた年月を生き抜いてきた事には変わりない。
屋久島にはここよりいいとこ他にもいっぱいありますけど、
なんだかんだと言っても屋久島と言ったら縄文杉、この光景が一番目に焼きついてます。
日本で一番大きな木。
これより大きいのを見るには・・・これから見える機会あるかなぁ?
森を抜けて尾根っぽいとこに出た。
下から見上げてた山と方を並べるとこまで登ってきたようだ。
この時点で標高1,400mくらい。
今晩の寝床となる新高塚小屋はたしか1,600m地点。
看板の距離も1.7kmと出てたのでもうすぐだと安堵感。
・・・だが甘かった。
登るはずだのに道はどんどん下っていく。
おいおい・・・て勢いで下っていく。
正直道を間違えたんだと思って何度も引き返す事も考えた。
下って登ってを何度も何度も繰り返し、しかも急な階段の区間も多いからかなりシンドイ。
縄文杉からの1時間ちょっと、今回の山行で最もきつかった区間。
17:15 新高塚小屋着。
着替えたり荷物の整理してたら辺りは漆黒の世界へ。
もちろんここには電気などない。
この日の晩御飯。
アルファ米って言うんだっけ? けっこう美味しいのね。
カップラーメンにはお餅を大量投入して豪華バージョン。これも美味いね。
そしてなんと言っても美味かったのはこれだ!
缶ビールは重たかったので諦めたけど、スーパーで見つけたペットボトルの屋久島焼酎。しかもちょうどいいサイズ。
天然水を沸かして作ったお湯割りが、身体がほわ~んと暖まってえらい美味かったなぁ・・・。
夜にする事ないからと、小説とか花札とか持ってきてたけど、そんなのする余裕全然なし!
久しぶりの寝袋でちゃんと寝れるか心配だったけど、20:30には全員爆睡。
こんな時間に寝るなんてインフルエンザにでもならないとありえないぜ!
GPSないので歩いた距離は分からないけど、万歩計の数字は35,000オーバー。
そりゃ寝れるわけです。
翌日に続く。
長くなりすぎました。でも反省してません。
読んでくれた人ありがとう
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