東京都江東区の自宅で高齢の女性が縛られて亡くなった強盗殺人事件で、容疑者の男3人が13日、警視庁に逮捕された。事前に現金があるかを尋ねる不審な電話「アポ電」が入るという手口から、高齢者から金品をだまし取る特殊詐欺との関連も浮かぶ。被害を防ぐにはどうすればいいのか。
東京都江東区の現場マンション1階玄関に設置された防犯カメラ。警視庁によると、2月28日午前11時ごろに時間差で侵入し、約30分後に出る3人組が映っていた。3人は黒ずくめの服で白っぽいマスクをつけていたが、その後の捜査で、3人がマンションを出た後に服を着替えていたことが確認されたという。
被害者宅には2月中旬、現金の有無を尋ねる「アポ電」と呼ばれる電話がかかっていた。犯行グループの周到な準備が浮かぶ。
東京都渋谷区で1、2月に起きた緊縛強盗事件の前にも、同様に「アポ電」がかかっており、警視庁は同一グループによる犯行とみて捜査している。
息子や金融機関の職員などを装って電話をかけ、家族構成や資産状況を事前に聞き出す「アポ電」。これまでは特殊詐欺の手口とされてきたが、強盗に使われる例は他府県でも確認されている。
「病院でかばんを盗まれた。今日中にお金を支払わないと会社を首になる」
昨年3月、横浜市保土ケ谷区の80代と70代の夫婦宅に男3人が押し入り、刃物を突き付けて現金を奪おうとした事件では、この数日前に夫婦のおいを名乗る男から、こうしたうその電話がかかっていたという。男3人は同年9月に逮捕された。
神奈川県秦野市では2017年11月に80代女性宅にドアを壊して押し入り、女性の頭を殴るなどして現金約480万円を奪ったとして、男2人が逮捕された。男らは事件の2日前、女性から現金を受け取りに家を訪れていた。女性はその前に警察官などをかたる電話を受けていたが、不審に思い、受け渡しを拒否していた。男らは女性が手元に現金を置いていると知った上で、強盗に入ったとみられるという。
大阪府門真市で昨年8月、男3人組が70代の男性宅に押し入り、男性と部屋にいた90代の女性を粘着テープで縛るなどして現金などを奪った強盗傷害事件でも、事前に資産状況などを探る不審な電話があったという。男3人は翌9月に逮捕された。
「アポ電」について、警視庁は統計上、「犯行予兆電話」と呼んでおり、同庁への通報件数は昨年1年間で計3万4658件と、前年より8747件増えた。今年1~2月は計6368件。前年同期比で557件増と、歯止めがかからない状況が続く。
警視庁の捜査幹部は「特殊詐欺グループの中に、より手っ取り早く稼ぐために強盗に走る者が出てきた可能性がある」と指摘する。強盗などの「粗暴犯」が、逮捕のリスクがより少ないとされる特殊詐欺に移行したが、詐欺の手口を組み合わせた形で強盗に「回帰」してきたという見立てだ。
警視庁は「家に鍵をかけるように、電話にも『鍵』をかけて犯人側の電話に出ないでほしい」。留守番電話を設定して内容を確認してからかけ直すことや、自動通話録音機の設置などを呼びかけている。