81歳の女性が作ったスマートフォン向けゲームが24日、アップルから配信された。多くのゲームは動きや展開が速く、若者が有利。「お年寄りが若者に負けないゲームを」と一からプログラミングを学び、半年かけて完成させた。

 ゲームは、ひな祭りをテーマにした「hinadan(ひな壇)」。画面上の4段のひな壇に、内裏びなや三人官女など12体の人形を正しい位置に並べるものだ。全問正解すると、「ポンッ」と鼓の音が鳴る。お年寄りの知恵が生き、反射神経もいらない。「オババが作った、ハイシニアが楽しめるひな壇飾りアプリ」との売り文句で、アップルのアップストアに無料で並んだ。

 手がけたのは神奈川県藤沢市の若宮正子さん(81)。きっかけは、知人のお年寄りが「デジタル機器を若者のように楽しめない」と話していたことだ。お年寄りにデジタル機器の使い方を教えるボランティア団体を介して知り合った東北文化学園大非常勤講師の小泉勝志郎さん(44)に昨夏、シニア向けのゲーム開発を求めたら、逆に「自分で作ってみたら」と背中を押された。「何でも面白がる性格に火が付いた」

 ホームページを作った経験はあるがゲームは初めて。専門書を読み込み、宮城県塩釜市に住む小泉さんにインターネット電話で教わりながらこつこつと作業を進めた。若宮さんは「究極の脳トレーニングだった」と完成に満足げだ。

 ログイン前の続き手伝った小泉さんが「大きな発見」と舌を巻くのは、お年寄りの気持ちがわかる若宮さんならではのゲームの設計だ。

 例えば、人形をひな壇に置く動作。通常なら人形を指で触り、そのままひな壇に移動させる「ドラッグ&ドロップ」という動作を使うが、「お年寄りは苦手」と若宮さん。置く場所と、人形を軽く触る「タップ」という動作に置き換えた。ただ、お年寄りはつい力を入れてしまい、「長押し」という別操作と認識されやすい。ゲームの説明に「指で軽く『トン』とたたきます」と丁寧に記した。

 若宮さんは、完成したゲームがお年寄りの交流施設などで活用されるのを期待する。「おばあちゃんたちがヘルパーさんに勝って、優越感を味わってもらえたらうれしい」

 プログラミングを覚えたことで思いを形にした若宮さんは「今のネットの世界は、プログラムをかける人にとって面白いものになっている。お年寄りが自分の使いたいアプリやサービスを作れるようになれば、新しいサービスが出てくる」と話す