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川柳・海一枚・・・極光誌(鑑賞文)

2013年06月29日 | 川柳

                オーロラ集鑑賞 海一枚

                                  久保裕美子

 

 十年前は、高嶺の花の存在であった、諸先輩の鑑賞文を今回担当させていただくとは、あらためて感慨深いものです。

 

切り裂いた視界にひらく 海一枚   有 人

 視力回復の術後の感動を詠んだ句だろうかチャールトン・へストン主演、モーゼ十戒の映画のワンシーンが浮かんだ。それにしても気宇壮大な句立てです。

 

あなただけトランポリンではねている  一 車

 あるある、こんなこと!一人でテンションが上がる光景をこんなにもスポーティーに表現できるとは。作者は冷静なのだ。

 

ファスナーをきっちり上げて無神論   まどか

偏った宗教はその国家国民をひとつの方向に統制しやすい。宗教戦争に加担するより、凛として無神論者を貫くのも立派な姿勢。

 

北酒場天狗一匹釣り上げる      テイ子

 いるいるこんな人。飲むとやたら人格が変わったように鼻が伸びる。相手を上手によいしょしながら結果吊るし上げる。滑稽な酔っ払い天狗の一夜干しが肴にもなる。

 

かがやける「時」のかけらを追うキリン  美 茶

 素敵な詩の一節。過ぎ去った日々はどれもが美しく輝いて愛おしい。動物園の檻の中にいる無垢なキリンがそっと首を長くして過去を覗き込む作者を投影している。

 

自分探しはジ・エンド晴れて自由人  詔 子

 自己の未知数を探し続けても「たかが人間・されど人間」の絶対数の中で最高位に辿り着くことだってある。

自己を脱皮して、広く愉しい世界に飛び出してこそ精神性の自由が手に出来るのかも。

 

にんげんを欲しがる街のマネキンよ  かずこ

若い頃、不眠不休でデパート全館のウインドーディスプレイの装飾デザインを仕事にしていた時期がある。

 「マネキンは購買欲をそそる美の媒体。」

消費者は賢くもあるが、愚かでもある。

 

きみどりの音階をゆくウォーキング はる香

 新緑の季節。自然にゆっくり溶け込んでゆくこころの進行形の比喩が美しい。

 こんな句が作りたい!・・・と、ふと立ち止まった。

 

お姫様抱っこで柩までの距離    満 知

 後期高齢の橋を渡ると、この句のような現実を近くに感じたり、嫌、まだまだ・・・と、「気」を吐いてみたりの昨日今日。

 お姫様抱っこは、新婚さんの特権でもないらしい。

 

絆とも反逆罪ともなる握手     さとし

 岡崎守氏は「句を作る行為は肯定と否定の五分五分のあわい「間」を行ったり来たりすることではないか」

と、いうようなことを「水脈誌」に載せておられました。

すべては握手した至近距離が生み出す災い。

 

海にして瓦礫のようなまつりごと  迷々亭

 神道では、通夜のことを「前夜祭」と呼ぶ。

海に対峙すれば、総てがたあいもないチーパッパな事と教えてくれる。

                海一面は心の鏡。

<メモ>

 GREYのタクローの叔母でもある、川柳作家・文筆家のA氏からまたまたすばらしい文筆の手紙をいただいた。

北海道川柳家が集まった勉強のための極光誌に私が鑑賞を載せたことに対する「喜び」の手紙である。

感受性・情感が並外れた彼女に、タクローと同質な遺伝子を感じないではいられない。

 「極光」の鑑賞文を師から依頼され、躊躇することもなく小一時間くらいで書き上げた。

(考え考え書いた文章は・・・読み手にとっては・・・消化不良になるからだ。)

 今読み直し、あー・・・少しは私も何かを積み重ねたのかと・・・A氏から再考させられた。

 

コメント
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