組紐用の組糸を作るための整経用特大トンボを作っている最中に旋盤が止まってしまった。 ああああああああ・・・
もう20年以上使っていて、いつもそばにあって、何でも作れるというワシの自信を支えてくれていた旋盤FL260E・・・いつも使えている道具が使えなくなると、いろいろな面で自信を失ってしまうのだ。
今回も3日ほど元気がなくなり、どうすれば旋盤を元に戻せるか、という思案に明け暮れした。
部品を取り換えれば動くのか・・・寿貿易に修理に出すか・・・どれくらいの日数と費用が掛かるのだろうか・・・ネットに経験者が記事を書いていないか・・・モーターや電子部品についての知識を仕入れなくっちゃ・・・などなど。
最悪買い替えなんてなった場合、これまで投資してきたすべての部品、4つ爪スクロールチャック、デカヘッドスクロールチャック、ツールボスとアダプター、固定触れ止め、移動触れ止め、多くのバイト、作ってきたJIG類、はどうなってしまうんだろう・・・また一から揃えなおすのか・・・この年齢でいまさら買い替えなんて価格が高くてできゃしない。
故障の状況はこうだった・・・
トンボの芯にする真鍮を削っていた。 両端からベアリングを入れられるように削り、次に隣にトンボの芯を入れるためのネジを切っていた。 ネジ切装置をセットしてネジを切っていた。 ネジの始まり、終点の細かいところを旋盤の正転・逆転をこまめに切り替えてネジ切をしていたんだ。 正転・逆転はトグルスイッチの切り替えで行うのだ。 そうしないとネジとバイトの位置がずれてしまうんだ。
すると・・・トグルスイッチが固まった・・・動かなくなったのだ。 正転の位置で、うんともすんとも、動かなくなってしまった。 旋盤は回ったままだ。 急いでコンセントを抜いた。 ネジ切を止めないと・・・
コントロールボックスを取り外して中を調べた。 このとき幾つかの配線が抜けたのであろう。 コントロールボックス内の配線類は、もともと長さに余裕を持たせていない。 ボックスを開けると、いくつかの配線は突っ張って抜けたりする。
この段階ではコントロールボックスのスイッチを入れてもスイッチランプが点灯もしない。
思案しているうちに、こういうことが頭に浮かんだ。
スイッチが点灯しないことはどういうことか。トグルスイッチが壊れていること、場合によっては電気系統やモーターが焼け切れたりしていないか。
一つ一つを命題として解いていこう・・・と思いいたるまでに3日かかった・・・
コントロールボックスの中はこうなっていた・・・
モーター側から白と黒の線が2組出ていて、1組は外れていた。 両方とも先端にはファストン端子がついている。 もう一組は、トグルスイッチの中央部に接続されていた形跡が残っていた。 ファストン端子の中央部で焼け切れたように切れていた。
焼け切れていた白黒線のファストン端子を取り除き、新しいファストン端子に取り換えた。 こちらには絶縁用に赤と黒のゴムカバーをかぶせた。
トグルの中央に接続されていた白黒線。 赤黒の絶縁カバーを付けた
トグルスイッチは2極双投で3ポシションON-OFF-ON、という形式のものだが、なぜかこれが2組ついている12本足のものが取り付けられていた。 以前もここが故障して取り換えたことを思い出した。 購入時には2極双投3ポジションがついていて、こわれたトグルスイッチは保存してあった。 だから、このトグルスイッチは12本足ではなく、2極双投で3ポジションON-OFF-ON用の6本足のものが正常ということなんだ。
3ポジション12本足のトグルスイッチ、半分は使っていない状態
古い2極双投トグルスイッチを分解してみた。
スイッチレバーは、手前、中央、向こう側、というように停止するようになっている。 レバーの先端が、かまぼこ型の部品の中央の穴に入り、レバーを動かすと反対方向に動く。 かまぼこの底には2つの穴が開いていて、ここに小さなスプリングとそれをカバーするプラスチックのような部品がかぶされている。
トグルスイッチの箱の底には接点が3つづつ2列ついている。 その上にシーソー型をした切片が載せられている。
かまぼこの底についているプラスチックが、シーソーを手前、中央、向こう側、というように押すわけなんだな。 シーソーの中央は常に箱底の切片に接触している。 シーソーを向こう側に押すと、中央と手前側の切片が接触する。 手前側に倒すと中央と向こう側の切片が接触する。 常に2極が投入されるから2極双投という。 ON-OFF-ONは、レバーが中央位置の時は、通電OFF、端の時は導通というように使いたいスイッチ、という意味になる。 足の数は配線との関係で決める。 スピーカーの切り替えの時は、同じ形式で12本の足の物を使った。 スピーカーは1つで2本の線を配線するからね、ステレオにするにはその倍の足がいる。
この切り替えによって、電気の流れる方向を逆にすることができる。 そのように配線すればである。 それによって旋盤(モーター)の正転・逆転をコントロールすることができるわけだ。
モーターを正転・逆転させるための配線図の例はこのように。
くっついていた12本足のトグルスイッチも配線つけたまま分解してみた。
中のシーソーの周囲には、これまでに旋盤で削った木の粉や金属の粉がこびりついて固まっていた。 これじゃ~電極がショートしたり動きが悪くなったりするの、無理ね~な。
部品を一つ一つティッシュでふき取り、きれいにしてもとに戻した。 トグルスイッチの構造って意外に簡単。 分解修理も意外と簡単。
トグルスイッチの不具合、固まって動かず、は、かまぼこを動かす金具が緩んで回転するために斜めになり、引っかかって動かなくなっていた。 金具の曲りを直し、もとに戻した。 しばらくは使えるが、新しい部品に取り換えた方が良いね。 注文しとこっと。
次の命題は、何故白黒配線が2組もモーターから出ているのか?
旋盤のコンセントをソケットに差し込み、それぞれの白黒配線を、たまたま買ってあったサーボモーターにつないでみた。 導通テスターがなかったので100V用サーボモーターをその代わりに使ったのだ。
すると、赤黒を付けた白黒配線・・・サーボモーター回らず・・・つまり電気来ていない。
外れていた白黒配線・・・サーボモーター回る・・・電気来ている。
そして、一体これらの白黒配線は何者なの? という疑問が消えない。
そこで、旋盤のモーター側のカバーを外してみた。 そしてわかった・・・なあ~んだ・・・
左側の白黒配線は、電源そのものだった。 コンセントから一直線。
もう一方の赤黒の白黒配線は、そのままモーターに入っている。 これがモーターへの電源入力となるわけだ。
当然上のサーボモーターの導通テストの結果になるわな~。
分かったところで、電源の白黒配線はどこに接続すればいいのだろうか・・・疑問が残ったまま・・・ファストン端子が入りそうなのは残っている12本足の半分なんだが・・・とりあえず中央部に差しておこう。
そして、スイッチが点灯しない件について思案・・・
スイッチって、他の回路には電気が来ていて、スイッチ回路だけが開いている状態なんだよな。 (素人の考えです)
そんなら、コンセントを入れてみて、スイッチの足である電極までは電気が来ていないとおかしいよな。 足と足をサーボモーターにつないでみて、回ればそこまでの電気は来ている、ということになる。 その場合は、スイッチ部品が壊れていることになるな・・・
ということで、サーボモーターをスイッチの電極に接触させてみたんだな。
結果は、サーボモーターは回らず。 うん、電気はきていないな~・・・そしてひらめく・・・気が付くというか・・・(素人ですので)・・・
あたりまえじゃ~ないの・・・電源である白黒線がどこにもつながれていないんだから、スイッチ以外の回路に電気が来ているわけがないじゃ~ないの!
スイッチをよ~く観察してみた・・・
スイッチって単極単投で、電極は2つじゃ~ないの? なんで足が3本あるの?・・・ はは~ん、ランプを点灯させるための電極があるんだな・・・きっと・・・すると・・・2極単投ということなのか・・・投入すると旋盤回路への通電とランプの点灯を同時にやるってことだな・・・きっと
1本目の足・・・ハンダがやけに根元に着いているな~
2本目の足・・・ハンダは足の端の方についているな~
3本目の足・・・右にネジってあるな~
そして再びひらめく・・・気が付くというか・・・(素人ですから)・・・
電源をつなぐとしたら・・・スイッチの近くじゃ~ないの?
そして繋いでみた。
電源の白黒配線の黒い方を1本目の足に、白い方を3本目の足につないでみた。
電極を右にねじってある理由がわかった・・・狭くて指が入らない・・・ファストン端子を電極に突っ込むには電極が斜めになっている方が入れやすいのだ。 何事にも理由がある・・・
そしてスイッチをオン・・・やった~・・・赤いランプが点灯した。 うれし・・・涙・・・
テストしてみた・・・Foward・・・回る・・・スピードコントロール・・・効く・・・Reverse・・・回る・・・スピードコントロール・・・効く・・・
なんか自分がすごいことをやってのけたような気がした・・・やったあ~
FL260E修理完了で~す。 さあ、巨大トンボを作らなくっちゃ。
ネット中を探し回ったが、この種の記事が見つからなかった。
分かっている人には簡単なことなんだろうが、電気のことが素人のワシには、大変な事件だった。
とにかく一つ一つを観察し、考察し、思案し、モーターについて調べ、電子部品について調べ、配線について調べた。 そして、恐々としてテストした。 結果オーライだった。
よくよく考えると、今回の事件はトグルスイッチが壊れただけのことであったのだが、途中で配線が外れてスイッチがつかなくなり、旋盤全体が故障したと思ったのだった。 だが、解決に至る道、その道中で理解したことは決して無駄にならないと思う。 以後自信をもって旋盤を使うこともできる。
同じような目に会うであろうお仲間にとって、この記事が少しでもお役に立ってくれれば、嬉しい。
もひとつ・・・ForwardとReverseの切り替えだが、ワシはこれまでスイッチをオンにしたまま、トグルスイッチを切り替えて作動させていた。 Forward-Stop-Reverse, Reverse-Stop-Forward、と。
ネジ切のように頻繁に切り替えると、よくないらしい。 正しくは、切り替える場合、Swittch Offをまず行い、Forward-Stop-Reverse、と切り替えた後、Switch Onで作動させる、というのが回路的には正しいらしい。
旋盤に着いていたロッカースイッチはLED照光式ではなく、ネオン照光式たっだのです。 間違ってLED式を発注しちまいました。 ネオン式は3本足で、必要な抵抗部品が内臓されているようです。 だから両端の足に電源をつないで中央を負荷につなげば良かったわけです。
さんざんネットを調べまくったあげく、最終的にたどりついた、ネオン照灯式ロッカースイッチの配線図がこれです。 実際の旋盤の配線と同じように見えるので、これで正解だったと思っています。 これで動いてますから・・・ LED式とネオン球式でスイッチの配線がこんなに違うなんて・・・素人にはわからないよね・・・
ネオン照灯式ロッカースイッチの配線図
LED照光の場合は足がもっとたくさんあり(例えば5本)、LEDを点灯させるための回路を別途つながねばならないようです。 これらの差がよくわからず、調べて答えにたどり着くまでに2日かかりました・・・