しのぶwaves

有馬忍 ライブ情報 日々記

者語り。

2009-12-29 22:18:37 | ★☆ライブ情報☆★
堅物め、見えてないな?カレンダーをめくるたびに壁神がつぶやく。

柔軟な技を何度も繰り返して見せたのに、残念だ、と、電気が消えた。

読めんのか、馬鹿め、心臓が打ち付ける。

流れに任せてみては?血流がささやいた。

お前こそ、誰だ!勝手は許されない、私だけの内面が振り向く。

階段がらせん状に登った部屋まであなたを連れて行きたかっただけだった。

息を切らしたあなたが、愛おしい。

エレベーターを満員の老人が明日のために欠かせない命を乗せている。

空白の表札に、あなたは気づくだろうか?

堅物め、見えてないな?壁神がつぶやく。

柔軟な技を何度も繰り返して見せたのに、残念だ、と電気が消えた。

読めんのか、馬鹿め、心臓が打ち付ける。

流れに任せてみては?血流がささやいた。

お前こそ、誰だ!

覗き穴の宇宙であなたが横切る影は、満月のうさぎのようにぴょんっと飛んで

見えなくなった。

地球から見ると綺麗だな、と窓ガラスが言った。

月を雲が覆うまで待ってから扉を開けたのは逆説好きで、皮肉屋の癖。

螺旋階段を駆け下りていく足音だけが、者語り。








師走の心・・

2009-12-28 17:59:27 | ★☆ライブ情報☆★
面倒くさいんだよーっと、雑巾が言った。

この、世話焼きが!と、台所のレンジがそっぽを向く。

べたべたしてんじゃないぞ!何年経ってると思ってるのよ、その失恋話・・と、

エプロンが言った、ような気がした。

仕方なくよろよろと、起き上がる。はっきりしろよー、あんた何歳?17歳?

なら、わかった。行っていいから、掃除は私がするから、と私が言った。

あれ?洗剤がないじゃん、ばかだねー、何やってんの?とバケツ。

つめてーなぁー、お湯だせよー、と、湯沸かし器。

もたもたしてたら日が暮れちゃうよーーぅっと、ほこりの積もった棚。

ゴミ袋に詰め込んだ過去の重さなんて、両手でどっこいしょだ。あれ?誰だ?この写真の美女びじょは?

う、う、美しい~!輝ける20代の、わ、た、し!

ふん!生言ってんじゃないわよーー!この、あたしを誰だと思ってるのよぉ!

この美しさには、すべてがひざまずくはずなのよ!

箪笥なんか、一人で動かせるのよ、ははは!ずりずりずり・・・うううぅ・・その時、

「お前・・よくも今までほって置いたな~恨んでやるぅ~」と箪笥の裏から埃の声が・・

「埃ーーー!怖いーー!お化けーー!誰か、助けてー!ひぃーーー!」

「君ねぇー、コホン!考えすぎだよ。」

「あ!先生、すみません・・こんな時間に電話して・・

あんまり、怖い日常で手に負えないんです。どうしたらいいのでしょう?」

「君ねぇー、コホン!ためすぎなんだよ。単なる、なんといいますか、言いにくいけど・・それはね・・・」

「先生!やめて!ください。それだけは、言わないで・・私困ります。

夫も、子供も居るし・・私は・・困るんです。先生ーーー!ああーー言わないでそれ以上!・・・」

師走・・・

あ・・!もうこんな時間?妄想の中もこんな埃だらけ・・・あちゃー。手に負えない。




12月の歌・・

2009-12-25 23:35:18 | ★☆ライブ情報☆★
何処かに居る人を、知っていて知らない私達を時が激しい雨で濡らしている

当たり前だろうと、本当の人生は語るだろう。

それでこそ、真実だから熱くなる朝が来ると歌う。

12月にめくられていく、小窓から新しい希望のパズルが解かれていくのを

私たちは事も無げに楽しんだからこそ、たどり着くことを許されて。

あなたは雪国から来て、そして私は南国から来たという。

過去から未来へと、2人がたどり着いた国が、決して交わることを許されない暗黒の街だとしても、

私を抱くあなたの許しが、解けない呪いを解いていく。


12月の歌だけに、許された奇跡が、今夜2人を最後の窓辺へ導いてそして

初めて私は知った、聖夜に起こる真実は一番身近な貧しい場所から

一番美しい富める天国の場所まで、この町を、この夢を、この愛を

凍える形で、汗の流れる方向で、風と光が交差する空で、どこまでも

私たちを結びつけていく。






12の歌・・Ⅲ

2009-12-21 20:22:20 | ★☆ライブ情報☆★
灰色の毛に覆われた私を受け止めた彼の腕で、
暴れる私の身体を胸に抱いた彼が言った。

「ラルーア!」

彼の身体は、狼から人間へと移り変わって行く。

「ソロ?」

人間から狼へ移り変わる私を抱き止めながら、

一瞬の光の輪の中で私達は互いの姿をかろうじて確かめ会った。

吹雪は2人を、少しでも長く絡め合うように、雪のカーテンを地上から巻き上げるかたちで覆った。

10年前の記憶は蘇り、幼馴染の2人は12月の奇跡をまとって見つめ合った。





冬の歌・・Ⅱ

2009-12-16 15:31:00 | ★☆ライブ情報☆★
町中の豪腕な男達の松明が、山道をS字型に何度たどっても、父は私に追いつけなかった。

家に戻ってみると、母の姿はなく、空には地球を見下ろす程大きな満月が見えた。

思い出が真っ直ぐ今に繋がる人生を描いて、壁に飾りながら幸せを何度も刷り込んできた母。

母の真実と娘の真実の姿を、壁紙の裏側に貼り付けて見つけた幸せの日々。

10年前、父が灰色のオオカミに襲われたニュースは、町中に広まった。

山間で道に迷った人間が、オオカミに襲われて無事に帰った事がニュースというべきか・・

父は、かすり傷とそして灰色の髪の娘に支えられて帰って来たのだ。

掟は厳しいものだった。

母は8歳を迎えた私を、部屋に閉じ込めたのだ。満月にもかかわらず、私は始めて

自分の部屋に居たのだ。窓は閉ざされていた、夜になると母は枕元で優しく言った

「今夜だけ決して部屋から出てはだめ、何が起きても、判った?」

私はうなずいて、銀色に輝く母の瞳を見つめた。

薄明かりに12時を回った針と針が合わさった瞬間のことだった。

窓の無い部屋の壁で、私が描いて飾った月夜の絵は額縁から窓になった!

ふぶきと一緒に吸い出された私の身体は、空中に舞い上がりそしてそのまま、

灰色の毛皮に覆われた貴方に再会したのだ!



冬の歌・・

2009-12-11 16:00:19 | ★☆ライブ情報☆★
体中に毛が生える季節だから、私は気づく。

月夜だけ、生えるから、今までは気づかずにいた。

でも、やはり来るときが来たのだ。私は人間から脱皮したかのように、

体中毛だらけの怪物になってしまった。美しい灰色の毛に覆われて私は、

家の窓から、飛び出した。

12月、暖炉に火をくべる母の背中を見たのは一瞬の幻だ。

ジャングルでウサギを追いかけた、慣れない狩だけど猛烈な乾きと空腹で

解放された血が心臓をかき乱している。朝を見る丘で、私は吼えた。

遠い荒野に向かう道へ導く、あなたの応答が山々の峰と峰に共鳴しながら届くまで。

理性が失われていく、かと思えば、又、新しい理性が宿るようだ。

思い出が早回しのビデオテープのように巡っていく。

いったい、どこまで巻き戻せばそこにたどり着くのだろうか?

岩山のふもとで幼い頃泣いていた。冷たい雨で小さな体が濡れていた。

そうだ!ここで私は生まれたのだ。なぜ、私は今まで人間だったのだろう?

それとも、まだ、人間の心のまま私は今生きているのだろうか?

姿形は昔読んだ童話から抜け出した狼だが・・昔読んだ童話という言葉は、

人間のままということだ。おかしい、私は狼少年ならぬ狼女に変身したというのか?

12月のある日、雪が降るように雲は重たくこの世界を包みこんでいた。

私は小さな部屋で眠い目をこすりながら、待っていたのだった。

雪の一片を一番に見つけるためだけに。勲章にように手のひらに残したいから

窓を開けて、いつまでも空を見つめていた。そして、気がつくとこの洞窟に居た。

10年も前になるのか・・そして、私は貴方に会ったのだ。

12月の歌を歌いながら、貴方は私をさらってきたのだ。

熱い毛皮の匂い、長い耳、赤い舌、銀色の瞳、すべてに魅せられた。

狼に育てられた娘のうわさを聞いて、町中が山に押し寄せた。

母はなんども父に言った。「今度こそあの子を連れてかえって!」と











12月の猫・・

2009-12-02 16:12:01 | ★☆ライブ情報☆★
12月の猫達を何匹も見たけど、猫が習性として猫本位であるとは言いがたい。

なぜなら、私+猫=私私私猫猫・・・ねこねこ  であるからだ。

12月の猫は、クリスマスツリーの下から天使の飾りでじゃれている。

12月の猫は、クリスマスツリーを背に擬態している。

茶色い模様、白黒の模様、黒トラ模様、真っ白、真っ黒、三色、二色でツリーを

飾り付ける。

ある日、擬態した猫を探して雪の夜道に出かけた。

ツリーから抜け出して公園のベンチで泣いてるんだろう。

名前は、スタッド。雄猫。

チャトラで尻尾がなーがい。そして、かーいい。

一人暮らしの私+スタッド=猫擬態私、私擬態猫…ねこひと。

スタッドはハンサムだ。なぜなら、口ひげが長くピンと伸びていて

その瞳は右目が緑色で、左目が銀色に光ってる。

出会いを知りたい?すごく劇的な夜の事を話せば長い・・いえ、余りに当たり前、

公園のベンチ・・と、月の明かり・・と、都会の限られた星があれば・・

ロマンティックな出会いがあるのだ。

スタッドは猫だから、思い切り愛して、思い切り抱きしめて、そして、

12月のツリーに擬態して、スタッドは居なくなった。

すごく月が大きい夜に、スタッドと何度も散歩した。人+猫=宇宙に擬態して。

野原に出ると、スタッドはおもいきり端から端へ走った。

草むらを駆け抜ける毛皮が緑色に擬態したスタッドを月夜の光は、

さざめく波の合間から息継ぎするのを、私の瞳に向けて映写した。

スタッドはそれに気づくと、傍にきてじっと私を見つめた。

夜のフェンスの隙間からそっと誰にも気づかれず抜け出た私と猫は、

細い家路の道を何度も幾度もいく夜も黙りこくって心だけ研ぎ澄まして話した。

又いつかこの世界で2人が出会ったら、互いが姿形にとらわれず気づく方法が

12月の夜の方程式は、壁づたいに斜めに記していると。