しのぶwaves

有馬忍 ライブ情報 日々記

1月のパイ星人

2010-01-21 20:48:30 | ★☆ライブ情報☆★
パイ星人が始めて地球に来た時、人間に食べられる一方のパイが存在することを知ったパイ星人たちは、

余りの恐ろしさに二度と地球には近づくまいと話し合った。

しかしある家の窓から、パイ星でも稀に見る良い匂いのパイ香りを探知したのがP大統領だったのだ。

Pは恐ろしさも忘れてその窓辺にフワフワと着地したのだった。

多恵子はその日、こんな歌が頭に浮かんでいた。口ずさまづにはいられないほどその歌は
多恵子の頭を何べんも行ったり来たりしていた。

プァ~イ、プァ~イ、貴方はだぁ~れ?(小麦粉を混ぜる)

お前こそ、だ~れだ?(卵を割り入れる)

私は多恵子、幸せをあげる!(バターを入れる)

ほんとかい?(優しく練る)

ほんとうよ!(もっと練る)

うそつかない?(のし板にのせる)

あったりまえだ!(めん棒で伸ばす)

気持ち良いなぁ~(さらに伸ばす)

あったりまえだ!(パイ皿に乗せる)

気持ち良いなぁ~(リンゴを乗せる)

愛してるよ!(パイ生地を乗せる)

暖かいなぁ~(パイ生地をそっとかける)

もっと熱くしてあげる(オーブンに入れる)


多恵子が歌いだしてパイが焼きあがるまでいつも通りの時間内であったが、

パイ星の時間では1年がかりのパイ製作が、驚愕の1時間の速さであったのだ!

木の葉の子

2010-01-16 23:55:24 | ★☆ライブ情報☆★
ミル・フィユ

千枚木の葉の子 

パイの実生った

木の芽の子

何人生った?

千枚鳴って サクサク踏んで 割れた順から食べた

千枚木の葉の子

パイの木張って

木の根の子

何人這った?

千階這って ザクザク掘って 見つかる順から食べた

ミル・フィユ 冬の子 木の葉の子

白雪かけたら 狐の子 春の木の芽のごちそうを

前足 サササと生地越しに

印を踏んだら出来上がり

1月のフェーブ

2010-01-15 14:07:29 | ★☆ライブ情報☆★
送り届けられたパイに、多恵子は驚いた。なんと、それは「ガレット・デ・ロア!」だったからだ。

このパイは王様のガレットと呼ばれ1月の祝日を祝う伝統あるパイなのだ。

そのパイはパイ生地の中にフェーブ(そら豆)と呼ばれる小さな人形がしのばせてあり、パイを切り分けてフェーブに当たると

王様もしくは王女様になれるというパイなのだ。

多恵子はこの大きなパイを見つめてため息をついた。「きっと、P大統領が間違えたにちがいないわ・・」

しかし、事情が何であれすでにパイの出産は近い。ガレッド・デ・ロアのパイ生地はみるみるうちに膨れていく。

多恵子は、その大きなパイをパイ皿に移すといつものように多恵子の部屋に運んだ。

そして、多恵子の設えたベッドの中で見事な焼き色と香りに包まれたガレットが産声を上げたのだ!

泣き声がパイから聞こえた、多恵子は恐る恐るパイを切り分ける。一番泣き声に近い場所をお皿に取り分けた。

もしも、少しでも感が鈍ればフェーブを傷つけてしまうと知りつつ方法はそれしかないのだった。

上手くいった。一切れのパイの中でフェーブが手足をばたつかせているのが生地ごしに見える。

多恵子は重なったパイ生地の間から、小さな足と小さな腕がそして可愛らしい顔が現れると

P大統領には決して確かめないと心に誓ったのだった。


1月のパイ星人

2010-01-14 15:42:06 | ★☆ライブ情報☆★
パイ星人はパイの中から生まれる。24時間の熟成期間を経て健康的なパイの赤ちゃんが生まれるのだ。

パイ星人の赤ちゃんが、様々なパイの中で育つ様子を多恵子は研究してきたのだが

そこで、発見したのはパイの中身がなんであれ、パイ星人の発育には大した変わりがない、

という事実だった。

研究に多くの貢献をしてくれたパイ星大統領Pから、多恵子に宛てた手紙が毎年届く。

「多恵子様、今年も沢山のパイ星人が誕生いたしましたことを心よりお礼申し上げます。

多恵子様にはパイ星人の健全なる育成と発展に多大なるご協力と愛情を注いで頂きましたこ

とを深くお礼申し上げます。   パイ星Pより」

といったお決まりの文面ではあるが、多恵子はいつになく、手紙と一緒に送られて来るパイを

今か今かと待っていたのである。

実は今年、パイ星誕生から100周年を迎える記念すべき年でありそのお礼に記念パイが

贈呈されると言うのだった。

多恵子の研究の日々は、一年間の間、絶え間なくパイ星人の赤ちゃんを取り上げては

どんなパイの中身であれ、健康に発育した子供の記録をとりつつパイ星に送り返すといった

繰り返しであったのだが、星人Pからこんな追伸を受け取ったのだった。

「追伸・・100周年を記念してこの度、送パイするわが星の贈呈プアイに関してですが、

実に申しあげにくいのでありますが・・お恥ずかしい話このプアイには引き取り手がなく

よろしければ多恵子様にお育て願えればとお願い申し上げるしだいです。」

多恵子は長い間、パイ星人の赤ちゃんが生まれる度に研究者としての立場から、冷静な判断

と正確な記録に元づいた、理性的かつ平等な態度で接することを心掛けてきた。

しかし、今多恵子に送られて来るプアイは多恵子のプアイなのだ。







一月のブルーベリーパイ

2010-01-10 15:21:39 | ★☆ライブ情報☆★
多恵子が帰ると、白いシャツの胸元に紫色の染みがついていた。
「あ!美咲の部屋で食べたブルーベリーパイだ!・・」

美咲が部屋で片付けてたら、白いクッションに紫色の染みがついていた。
「あちゃ・・ブルーベリーパイ・・こぼしちゃったんだ・・」

多恵子が、白いシャツを漂白してる間
美咲は、クッションのカバーを漂白していた。

今日は多恵子の誕生日だった。!1月10日。
美咲は多恵子にとって人生で一番大切な存在だ。

だから、美咲が作る誕生日のブルーベリーパイは新しい歳を生きていく上で
大切な2人の行事にもおもえる。

多恵子は今年で90歳になる。美咲はまだ15歳だ。
でも多恵子の見た目は15歳と変わらない。

多恵子は5年前に亡くなったが、美咲が新しい命を与えたのだ。
その替わりに、多恵子の90年の人生の記憶は失われた。

美咲は多恵子の90年の人生の記憶に値する知識と人生の意味をプレゼントされた

それが、2人の約束。

1月のブルーベリーパイ 紫色の染み

1月のチェリーパイ

2010-01-08 17:37:23 | ★☆ライブ情報☆★
真っ赤に熟れたチェリーパイ 始まりには少しためらいがち

大切だと気づくには早すぎる季節だけど 大切な時に早い遅いは無い

真っ赤に熟れたチェリーパイ 終わりのない円形

螺旋を描いてパイ生地練って 高く高くチェリーの木を茂らせる

誰でも未熟な枝が成熟して行くのを 自然な成り行きと気に留めない

私の一枝が 1月から12月まで伸びていくのを

喜びと痛みできしんでいる音と味わいが完成する日に

世界で一つの パイ記念日があることも知らない

ナイフで12個に区切って 最初の一切れを あなたの口に運べたら

1月のチェリーパイはその命が尽きる円周率を越えて

大切な味わいを心に残すだろう




1月のパイ

2010-01-07 11:24:55 | ★☆ライブ情報☆★
まるくふくれた焦げ目で見つめた 中味はな~んだ?教えてあげないで
・・
好き嫌いも聞かずに無理強いしたら 味見もしないで小鳥は逃げた

空から見渡すと 私のパイは小道のへこみだった

匂いで誘うと風向きに任せて 手作りのイカダみたいに荒海に浮かんでる

リンゴは煮ないでいいんだよ 砂糖をまぶしてシナモン振って 焼いた

だから すっぱい酸味が残って くちびるが少しすぼむから

美味しいって言うのに時間差が出来るよ 素朴な味がホームメイド

一秒間待てば 元通り 甘さだけ残るよ

見上げた空には 半分食べたパイの月 明日もきっと欠けていく 

中身も見えるよ 裏側までも 

朝には小鳥も舞い戻り 歌ってくれる

隠してごめんね 焦げめに浮かんだクロスを切って 窓辺に正しく並べるから