しのぶwaves

有馬忍 ライブ情報 日々記

冬の歌・・

2009-12-11 16:00:19 | ★☆ライブ情報☆★
体中に毛が生える季節だから、私は気づく。

月夜だけ、生えるから、今までは気づかずにいた。

でも、やはり来るときが来たのだ。私は人間から脱皮したかのように、

体中毛だらけの怪物になってしまった。美しい灰色の毛に覆われて私は、

家の窓から、飛び出した。

12月、暖炉に火をくべる母の背中を見たのは一瞬の幻だ。

ジャングルでウサギを追いかけた、慣れない狩だけど猛烈な乾きと空腹で

解放された血が心臓をかき乱している。朝を見る丘で、私は吼えた。

遠い荒野に向かう道へ導く、あなたの応答が山々の峰と峰に共鳴しながら届くまで。

理性が失われていく、かと思えば、又、新しい理性が宿るようだ。

思い出が早回しのビデオテープのように巡っていく。

いったい、どこまで巻き戻せばそこにたどり着くのだろうか?

岩山のふもとで幼い頃泣いていた。冷たい雨で小さな体が濡れていた。

そうだ!ここで私は生まれたのだ。なぜ、私は今まで人間だったのだろう?

それとも、まだ、人間の心のまま私は今生きているのだろうか?

姿形は昔読んだ童話から抜け出した狼だが・・昔読んだ童話という言葉は、

人間のままということだ。おかしい、私は狼少年ならぬ狼女に変身したというのか?

12月のある日、雪が降るように雲は重たくこの世界を包みこんでいた。

私は小さな部屋で眠い目をこすりながら、待っていたのだった。

雪の一片を一番に見つけるためだけに。勲章にように手のひらに残したいから

窓を開けて、いつまでも空を見つめていた。そして、気がつくとこの洞窟に居た。

10年も前になるのか・・そして、私は貴方に会ったのだ。

12月の歌を歌いながら、貴方は私をさらってきたのだ。

熱い毛皮の匂い、長い耳、赤い舌、銀色の瞳、すべてに魅せられた。

狼に育てられた娘のうわさを聞いて、町中が山に押し寄せた。

母はなんども父に言った。「今度こそあの子を連れてかえって!」と