しのぶwaves

有馬忍 ライブ情報 日々記

27

2005-09-28 22:05:43 | 物語
2人は、その声に導かれて水中を、どこまでも泳いでいきました。王様の泡も、静かに2人の後についていきました。
「シー!聞こえた?今、確かにこのあたりで・・・」
「うん、僕にも聞こえたよ、ほら、ごらんよ、光が見えるよ!」
光の差し込むその方向へ、3人は上って行きました。
水面のように見えた、平面は夢格納庫の床に続いていて、3人がたどり着くとシドの国の人達が苦しそうに助けを求めていました。バスタスもエルマーちゃんも、驚いて、叫びました。
「ああー!大変!皆死んでしまう!」人々はすでに、息も止まりかけていました。
その時、エルマーちゃんの足に結ばれていた糸が、するすると登っていって、夢格納庫の床の隙間に入り込みました。あっという間に、真四角の扉が床ごと抜け落ちてすべての人々がだーっと水中になだれ込みました。皆、息をしています!
そして、昔からここに居たように、スイスイと泳ぎながら、王様の周りをぐるぐる回って歌いました。
   すべては 貴方の 眠り
   すべては 王様の 安らぎ
   幸せは 幸せは 自由の 国へ
バスタスは、エルマーちゃんと手をつなぎ水面へ向かいました。
顔を出すと、そこは、シドの国をひっくりかえしたドシの国でした。

ひっくりかえるドシの国 26

2005-09-27 20:11:19 | 物語
エルマーちゃんは、足から大理石の床の中へしゅっぽんと飛び込みました。
目の中に少し冷たいけれど澄んだ水がさっと流れ込んだその時、バスタスの姿が
目の前にありました。バスタスはエルマーちゃんを見つめてそーっと云いました。
「今、僕の口から出た一つの泡の中に、王様が入りました。そして、眠りについたんです。このまま、眠り続けたらきっと夢の国は滅ばないよね!」
エルマーちゃんとバスタスは、静かに王様の入った泡を見つめてブルーに透き通る水中でうっとりと見つめあいました。その時、遠くから声が聞こえてきました。
それは、とても悲しいコーラスでした。2人は驚いてその声の方向へ進みました。
その声はこんな風に歌っていました。
   夢はどんなふうに 生まれてくるの?
   苦しいと、何度も、言っているのに
   新しい 夢を 見る事を 許されない
   罪を 犯した 罪人のように ただ祈る
   夢は なぜ 新しく 生まれ変わる事を
   拒むように 美しく 切なく 現れるの?
   もう もう 息ができない 
   もう一度だけ 聞きたい 愛の歌を

25

2005-09-27 13:26:11 | 物語
その時、ソドの国ではヘビ使い達がお城を灰色のとぐろで覆い尽くしていました。
ダガールの歩く後からお城の輝く白いふかふかの絨毯がじっとりと湿った苔に姿を変えていきました。ヘビ使いの面々が深深とこうべえお垂れて、ダカールを迎え入れようとしています。ソドの人々は宮殿の夢格納庫にぎゅうぎゅう詰めに詰め込まれ涙ながらに、助けを呼んでいました。その声はむなしく響いて夢格納庫の中に人々の涙が溢れて、始めは足まで、あっと言う間に、腹まで、そしてついに頭のてっぺんまで達してしまったのです。その時エルマーちゃんは宮殿の食堂から消えたバスタスを追って大理石の光る床の匂いを丹念に嗅ぎながら、僅かな夢枕の匂いに向かって云いました。「コロコロころがってだんだん小さくなるものなんだ?」
すると、床のなかから一本のブルーの糸がするすると出て来てエルマーちゃんの足に結びつきました。

バスタス王様になる24

2005-09-26 22:33:47 | 物語
ころころ転がった王様の元に枕を投げようと、バスタスが枕を掴んだとたん、バスタスの腕から身体ごと枕の中に飲み込まれていきました。
その瞬間王様の姿まで、消えてなくなりました。枕の中は、エメラルド色の水中でバスタスの口からぷくぷくと泡が出ていきます。王様がニコニコ笑いながら、手招きして言いました。「ブバスブタブ君~こぼちぶらばへべ~」バスタスも話てみました。「おぼうさばぁ~どぼこぼへべ~」2人は水中を魚の様にスイスイと泳いで進んでいきました。王様の身体は丸いフグのようにプカプカスィーっと進んでいます。バスタスはまるで生まれた時からずーっと魚だった様に王様の後に横に並んで進んでいきました。バスタスの肺に不思議なしびれが感じられて人間だった頃の空気の残りがプクっと一つ、くちびるから飛び出したその中に、王様がすぅーっと入り込みました。そして、王様は大きくあくびを一つしたかと思うと、静かに眠りについたのでした。

バスタス対ダガール23

2005-07-27 21:40:37 | 物語
エルマーちゃんの全身の毛が総毛立って、追っ手のへびに身構えました。少年は、王様を抱きかかえて走りだしました。へびの鎌首が一瞬王様を捕らえたかと思うと、目にも留まらぬ速さで少年の足に向かって飛びつきました。足を取られた少年が、バッタリ倒れたその時、王様の身体がコロコロ転がって厨房から大理石の食堂まで、勢い良く滑っていきました。ヘビが王様めがけてその鋭い牙を向けたその時です、エルマーちゃんの声が響きました!
「バスタス!王様の枕を!」

へび使いの魂胆 22

2005-07-21 20:13:34 | 物語
雷鳴の中から何本もの腕が逆稲妻と共にソドの国めがけてのぼってきました。
真っ黒い雲が、もくもくと立ち上ったその中から、へび使いは現れました。雲が別れてふた手に退くと灰色の球体が、ぶよぶよに折り重なって歩いているのか、這っているのか、ずるずると、しかし、頭の部分だけは、透明なその中に見えるとぐろが不気味な動きで、すばやく回りを伺っているかのようでした。
へび使いの名前は、ダガール。シドの国を征服しようと、実体のない悪意と憎しみで形づくった体を、長い年月をかけて造りあげたのでした。とぐろの脳みそが、ダガール自身でした。

ヘビ使い 21

2005-07-14 15:17:08 | 物語
ソドの国の下に続く空が、にわかに掻き曇り、雷鳴が遠くの方から近づいてきました。
その稲妻は、空からソドの国に向かってジグザグに、雷音を味方につけて昇ってきました。
ドーン、ドーン、ガラーン、ガラガラ、ドーン、雷鳴がますます近づいて、もうこれ以上耳をふさがづには居られなくなったその時です。宮殿のブルーの階段を真っ二つに引き裂いて、
鉤爪の五本の指を鷲の爪のように折り曲げた黒い腕が、鉄の扉を突き破りました。
真っ黒な手のひらの真ん中は目になっているようです。右や左を探るように動きながら、宮殿の中に入ってきました。ソドの住民はアリの様に逃げ惑うばかり、中には蝿や蚊の様に叩き潰された人もいました。
宮殿の厨房では、今まさに王様とエルマーちゃんと少年がテーブルベッドに投げ出されたところです。夢格納庫の中から、3人を追いかけてきたヘビ枕は、みるみる内に毒々しい色のへびに姿を変えて厨房の床からするするっと目にも留まらぬ速さで飛び出しました。

へび使い 20

2005-07-13 19:55:40 | 物語
頭から、するっと抜け出しました。そして、へびの様に細長く伸びたかと思うと、王様の首に巻きついていきました。少年が叫んで言いました。「急いで!エルマーちゃん、王様が死んじゃう!」
エルマーちゃんが大きな声で呼びかけました!
「逃げる時、後ろの人が踏んでしまうもの、なーに?」
すると、へびが巻き付いていた王様の首が黒い影にに代わりました。2人の目の前に青いパジャマ姿の王様がにっこりほほえんで立っています。そして、言いました
「バスタス君、エルマーちゃん、お久しぶりだね~、君達に会えて本当に嬉しいよ。」
2人は、王様の丸くてかわいい身体を抱きかかえると、クネクネと今では王様を探そうとやっきになっている、へび枕を尻目に一気に丸型の青い扉めがけて走りだしました。
扉はいつの間にか閉じていて、3人のおでこすれすれになって目覚めた様にスルスルと開きました。
王様は、楽しそうにエルマーの背中で「はいよー、はいよー、」と、足をバタバタ動かして上機嫌。
一気に地上まで吸い上げられて、3人は宮殿の食堂の床からポーンと飛び出しました。

19

2005-07-11 19:46:30 | 物語
青い光で覆われた場所は、ドーム型天井でその中心にハンモックのように吊り下げられた揺りかごが
ゆらゆらと揺れていました。手に届きそうな高さで、届かない微妙な位置で揺りかごは止まる事も無く揺れ続けていました。そのカゴを揺らしているのが、青い制服姿の男で、のんびり椅子に腰掛けて腕だけは世話しなく動かしているといった様子です。音もなく揺れるその中で、王様は何やら寝言のような言葉を常に話しています。例えば、「おお~!そこの赤いリボンのおじょうちゃん、そこの扉を開けてごらんなさい、美しいお話の玉手箱を君におくりましょう~!きっと、幸せが訪れますから」とか、「こらこら、そんな乱暴な言葉で友達を傷つけてはいかんぞ!」とか、「満足、満足、」
とか、「悲しいな~、つらいな~、よしよし。」とか、まるで起きて居る様にしゃべり続けているのです。とにかく、ヘビ男達より一歩先にたどり着いたのですから、無事に王様をここから助けださなければなりません。
その時でした、ドーム型の天井から白い紙が少年の足元に舞い降りました。その紙に小さな文字で書かれてあったことは、
「わしの事は気にするな、起きてもなお夢見る力も残しておるぞ。それより、ソドの国を滅ぼさないために、わしをここから連れ出す方法を考えてくれ!」
少年が驚いて言いました。「王様の言葉だとしたら、早く助け出さなくちゃあ!」
エルマーちゃんは急いでいい方法を考え出そうとしています。青い制服の男の腕が一定の速度で、揺りかごを揺らしていましたが、突然その腕がへびのようにクネクネになって王様の揺りかごもクネクネと変な動きになっていきました。王様はまだぐっすりと眠っています。でも、何かが違います、
王様の枕が頭の下から這い出して、生き物のように動き出すと、顔の上に這い上がり王様の息の根を
止めようと

王様の枕 18

2005-07-07 21:01:15 | 物語
「ご主人様に、早いとこお知らせしないと、2人ともご褒美なしだしだしな。お前のアホ頭で考えても無駄だしだし、わかったか!」
一人のヘビ男が舌をしゃーしゃーだした。もう一人が言った。
「おめーに何がわかっとんじゃじゃ、この道はさっきもいっぺん通っとんじゃじゃ、それもわからんくせして、偉そうに言うんじゃねーじゃじゃ」
やはり、舌がしゃーしゃー出ている。最初の男が言った。
「なにおー!そんくらい、わしゃーもわかっとるんじゃ~じゃ~(舌がでている)、ご主人様はな、
この秘密通路のどっかに、この国の宝物があるとわかっとるそうじゃーじゃー、それを早いとこ見っけて、ご褒美いっぱい貰いたくねえのか?」
2人は、肩をこづきあいながら、右ての通路を突き当たると、又しても二手に分かれた道をうらめしそうに見つめた。エルマーちゃんと少年は、ヘビ男達が今度は左に曲がっていった後ろ姿を見送ってから、立ち止まって、今来た道を振り返った。
ウィニーは、格納庫に行く道は、目でみて解るのでなく、夢みて知ると言っていた。
夢を見るなら、目を閉じて眠りにつこう、でも、こんな状態で眠れるわけが無い。
そこで、2人は単純に王様の夢格納庫へたどり着くことを、心から夢見ることにした。王様の夢のお部屋は何処?私達を、どうか、連れて行って下さい。2人は静かにめを閉じて夢を見た、しっかりと手をつないで。
すると、不思議なことがおきました。2人の足元から、真四角に切り取られた石段が、ゴーっという
音と共に真下に下りて行ったのです。切り取られた石のエレベーターはどこまでも落ちていきまし
た。2人の髪の毛はその速さに逆立って、今にも身体が宙に浮く寸前、目の前に青色の丸型の扉が開いて、2人をまるで吸い込む様にその中へ運び込んだのです。
エルマーちゃんの身体の白い毛は、うす灯りの中で青く染まってキラキラと輝いています。
少年の黒い髪まで、青い光で不思議な色に変わっています。