しのぶwaves

有馬忍 ライブ情報 日々記

冬の歌・・Ⅱ

2009-12-16 15:31:00 | ★☆ライブ情報☆★
町中の豪腕な男達の松明が、山道をS字型に何度たどっても、父は私に追いつけなかった。

家に戻ってみると、母の姿はなく、空には地球を見下ろす程大きな満月が見えた。

思い出が真っ直ぐ今に繋がる人生を描いて、壁に飾りながら幸せを何度も刷り込んできた母。

母の真実と娘の真実の姿を、壁紙の裏側に貼り付けて見つけた幸せの日々。

10年前、父が灰色のオオカミに襲われたニュースは、町中に広まった。

山間で道に迷った人間が、オオカミに襲われて無事に帰った事がニュースというべきか・・

父は、かすり傷とそして灰色の髪の娘に支えられて帰って来たのだ。

掟は厳しいものだった。

母は8歳を迎えた私を、部屋に閉じ込めたのだ。満月にもかかわらず、私は始めて

自分の部屋に居たのだ。窓は閉ざされていた、夜になると母は枕元で優しく言った

「今夜だけ決して部屋から出てはだめ、何が起きても、判った?」

私はうなずいて、銀色に輝く母の瞳を見つめた。

薄明かりに12時を回った針と針が合わさった瞬間のことだった。

窓の無い部屋の壁で、私が描いて飾った月夜の絵は額縁から窓になった!

ふぶきと一緒に吸い出された私の身体は、空中に舞い上がりそしてそのまま、

灰色の毛皮に覆われた貴方に再会したのだ!