木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

●アーティストの啓示

2010-02-13 21:17:48 | Weblog

 

文章を書き続けていると、それほど苦労することなく言葉が出てくるのだが、しばらく書かないで居ると、何となく書くのが億劫になってこのブログも1週間振りである。

 

先週の週末、マーヴェリック・ディー・シーという音楽プロダクションの社長をしている大石氏の誕生パーティが麻布十番のF・barというスペースであり、出席をしてきた。

元はデンジャー・クルーという名前のプロダクションで、今、バンクーバーオリンピックのテーマソングを歌っている、”ラルク・アン・シェル”の所属プロダクションである。

 

 F・bar(写真左) というのは、世界でチェーン展開しているクラブらしいが、ファション、音楽、食事を楽しめるクラブのようだ。

私は初めてだったが長いカウンターバーがあり、コーナーに幾つかテーブル席が置いてある。

デザインも斬新で中々のインテリアだが、何分にも狭いスペースに150名ばかりの人間が集まって凄い雰囲気であった。

ロック・アーティストらしき人も、多く見受けられたが演奏はなく背景には当日のディスクジョッキーの選曲で音楽が流されていた。

 

 ”詩人は時を知らせる”と言ったのは、ヘルダーリンだったが、現代の潮流の一端をロック・アーティスト達が作っているのは確かだろう。

私もあるスタジオでラルクの録音風景に居合わせたことがあるが、演奏前の緊張感は大変なものだった。

たくさんの人に支えられて、これからのプロダクションの隆盛を祈る次第である。

 

ファッションデザイナーの、アレクサンダー・マックイーンが亡くなった。

ニュースに拠るとどうも自殺だったらしい。 4年程度前には、抜群のセンスでアバンギャルドなデザインをし、いかにもジバンシーのチーフデザイナーを勤めた人らしいエレガントさで好感を持ったが、少し前からどうもそのデザインにおかしな雰囲気を感じていた。(写真中、右は2009年のコレクション)

 

急にバランスを崩したデザインだったり、エスニックな異様なパターンを取り入れたり、奇妙な感じだったが、今回の出来事でなんとなく背景が理解できた感がある。

繊細なデザイナーに特有な予言能力を持ち、チャールズ皇太子の服装にクレイムをつけたりで、デザイン界をリードした人だった。

 

黒川紀章さんも、予言能力やコンセプトを実際のデザイン以上に重要視する人だった。

目に見えるものより、その背景にある見えないもの、思想により価値を認める人だった。 

最近の建築界にはどうも少なくなったタイプのような感じがしている 。

もっとも多くの建築が組織によって創られている時代ではやむをえない事かもしれないが、、、。

 

アーティストの創る作品は、その人のほんの一端が現れるだけでその背景には積み重ねられた多くのものが、海を流れる流氷の底部のように存在しているのだろう。

思うにアーティストによる啓示はそんなところから滲み出てくるものではないのだろうか。