木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

東急文化村 オーチャードホール

2008-01-04 20:17:24 | Weblog

今年も正月三が日があっという間に過ぎてしまったが天気が良く穏やかなお正月だった。

二日には東急文化村オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団のニューイヤーコンサートを聴いてきた。

東京フィルは女性のヴァイオリニストが多く、それぞれ色の違うドレスに身を包んで華やかな舞台であった。お正月らしくオペラに題材をとり例の荒川静香のバックミュージック、プッチーニのトゥーランドットやドイツのオペラ王ワグナーの曲からはじまるが、一部の最後は日本の民謡をアレンジした楽曲で終わる。

 

 オーチャードホールは日本有数のコンサートホールであるが、確か建築家の三上祐三氏の設計だと記憶している。

三上さんはシドニーのオペラハウスを設計したデンマークの建築家ヨルン・ウッツオンの事務所で修業した人で、ホールの随所にきめ細かなデザインを見ることが出来る。

オーチャードホールは現在サントリーホール、東京オペラシティのタケミツ・メモリアルホールと並んで日本の三大コンサートホールと言われている。

 

コンサートホールにはシューボックス型(長方形)とワインヤード型(ぶどう畑)がありオーチャードホールはシューボックス型、サントリーホールはワインヤード型の典型と言われている。

ワインヤードはアリーナ型とも言われ舞台を客席が取り囲む形を言う。小沢征爾氏が指揮者を務めるウイーンフィルの本拠のウイーン楽友協会のグロッサーザールがシューボックスの代表で、カラヤンが指揮を取っていたベルリンフィルのコンサートホールはワインヤードの代表格である。

 

ベルリンのホールは表現派の建築家ハンス・シャロウンの設計、五角形のプランで外観も熱っぽいもので建築家にはなじみの深い魅力的なものである。

サントリーホールはカラヤンの意見を取り入れワインヤード型を採用したと言うが日本には圧倒的にシューボックス型が多い。

私は音響的にはともかくワインヤード型の方が座っていて楽しく好きである。

 

オーチャードホールは素晴らしい施設だが、2300席ものホールとしてはそのアプローチの空間やホワイエ、そして幕間の休憩所となるビュフェのスペースがどうしても狭く感じられ、百貨店の一部の土地を利用した限界が見られるのは残念である。

もう一ついつも感じるのだが、演奏する側はブラックスーツやドレスに身を包んで正装であるが、聞く側はラフな服装の人が大部分である。気軽に音楽会を楽しむことで良いのだが、女性はともかく男性がなんとなくだらしなく見える。

コンサートホールが幾ら立派でもいささか台無しだと思うのは私が建築設計を業として居るせいだろうか?

 

後半はヴァイオリニストの古澤巌の演奏。これもスケートの浅田真央のバックミュージックのチャルダッシュから。オーケストラをバックとしたソリストの迫力ある演奏を堪能した。

ユニークな服装と巧みな演奏の裏にソリストとしての孤独な戦いを見る思いがして感慨が深かった。ポピュラーな演奏会ではあったが、新年に相応しく気持ちの改まるコンサートであった。