文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

「英語寄(3/21)」(40u)第40丁裏

2009年12月21日 | 文明開化と平仮名英語

 英語寄[いぎりすのことばよせ]は、商売に関係する言葉を寄せ集めた商用英語集のようなもの。『萬国通商往来』(明治6年出板)の第39丁裏から第49丁裏まで全21頁にわたって頭注に掲載されている。
 今回は、その第3回目(3/21)、当時の往来物に掲載の英語を知る上で大へん興味深い。皆さんと共に当時の英語を垣間見て、興味を分かち合えれば幸いです。

 頭注は、それぞれ10行にわたり、「通商」つまり商売にかかわる用語を取り上げ、その英語読みを片仮名で表す。つまり片仮名英語を収録している。

表わし方:「(平仮名による振り仮名付きの漢字)・・・を(片仮名英語)・・・≪≫といふ」≪≫に英文字を補足

 ここでは、振り仮名は[ ]で示し、平仮名の崩し字の読みは()で示す。 崩し字には悩みが尽きない。お気づきの点はご教示を願います。以下、数字は行を示す。
商人[あきうど]をメルチヱント≪merchant≫といふ
手附金[てつけきん]をアドワンスモニー≪advance money≫と云、モニーにはしばし戸惑い、これがわからないと先に進めない
半金[者(は)んきん]をハーフセモニー≪*≫と云、「セ」が不可解
贋金[尓(に)せ可(が)年(ね)]をコーントルフヱイトモニー≪counterfeit money≫といふ
旅用金[ろようきん]をトラウヱルリングエクスペンス≪traveling expence≫といふ
飛脚賃[ひきゃくちん]をポステーシ≪postage≫といふ
為替[可(か)王(わ)せ]をヱクスチヱンジ≪exchange≫といふ
無利息[む里(り)そく]をウイサウトイントレスト≪without interest≫といふ、イントレストは悩ましい
税金[ぜいきん]をデユテイー≪duty≫といふ
基本金[もとできん]をカピタル≪capital≫といふ

半金 注:③ハーフセモニーの「セ」に悩まされる。『和英語林集成』でHANKIN、ハンキン、半金 の見出で「half the money」とある。これで疑問氷解、「ハーフセモニー」はよく見ると「ハーフゼモニー」でどうやら「セ⇒ゼ⇒the」、≪*≫に≪half the money≫と補足。これで一件落着

<挿図>
『萬国通商往来』明治6年(1873)、神奈川県立図書館k670.3/2
『和英語林集成』慶応3年(1867)、明治学院大学デジタルアーカイブ、横浜開港資料館D.VIII.7C



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