95下段③102-107
88までに②『外国商通言葉集』下段の「言葉の部」を中心に調べてきた。しかし、②の「言葉の部」にはどのような経緯があったのか、①『外国商通ことばつけ』や③『外国商通古と者附』にある臨場感あふれる商売上のやり取りなどの言葉が収録されていない。その部分が本命の筈なのだが・・・③と①は多少の言葉つかいに違いがあるものの同じといってよさそうだ。③を上蘭に①を下蘭に分けて搭載したから細部の違いも比較できるでしょう・・・
今回は、③『外国商通古と者附』の102行目から107行目までを掲載
102行目 ③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』それぞれの日本語≪ねる≫英語よみ≪すりいぷ≫≪す里(り)いぷ≫英語綴りは・・・sleep・・・であまり抵抗はない。
103行目③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』の日本語≪おきる≫英語読みは③①とも≪げ多(た)つぷ≫
英語綴りは・・・get up・・・
104行目 ③『外国商通古と者附』のみ①『外国商通古と者つけ』には見当たらない。日本語≪たつ≫英語よみ≪春(す)てんと≫とまどうが、どうやら英語綴り・・・stand・・・
105行目 ③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』の日本語≪す王(わ)る≫≪春(す)王(わ)る≫英語よみ≪せつ多(だ)ん≫≪せつだん≫・・・sit down ・・・
106行目③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』58行目の日本語≪もちき多(た)る≫英語よみ③≪ぶりんぐ≫ と明確、ただし①は≪**んぐ≫とご覧のように英語読みの二文字が摺りムラで判読不明。ただし、③の読みのお蔭で英語読み・・・bring・・・
107行目③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』59行目の日本語≪いや多(だ)≫英語よみ③≪のう々≫ ①≪*う々≫この場合も58行と同様に摺りムラのためか判読困難。こちらも③の読みに救われて・・・英語綴り・・・No! No!.・・・
ところで,「く」の文字を縦に引き伸ばしたような繰り返し符号は、縦書きの場合は画像として貼り付けてみたものの、横書きとなると表現のしようがない。ここでは、やむなく「々」を使用した。
参考に下記サイトをご覧ください。
http://www16.ocn.ne.jp/~kageyama/Column20.html#くの字点
④清水卯三郎編著『ゑんぎり志ことば』の下巻「ひとくちばなし」(これは小会話のことか)から「ねむくなる」がどのように使われているか探してみた。
上段に日本語≪王れハ、ねむく奈りし≫
下段にその英語読み≪アイ、ヱム、フェーリング、エスリープ≫とあって、この片仮名の英語読みに≪ヱム、 し≫≪フェーリング なり≫≪ ヱスリープ ねむく≫戸惑いながらも、平仮名で意味を付記してあり、さすが清水卯三郎先生だけあって丁寧で有難い。これから・・・I am feeling asleep・・・。何回も見比べながら当時の英語を味わってみたい。
清水卯三郎は学者、実業家、商人など多彩な肩書を有し、パリ博覧会での貢献でフランス政府から勲章を授与されたという。当代随一の人物とも評されていた。卯三郎の実用英語を熟読玩味してみよう。
③『外国商通古と者附』は特に④清水卯三郎編著『ゑんぎり志ことば』の影響を強く受けていたものと思われる。
改めて、③『外国商通古と者附』下段”ことばのぶ”全129語と比較して、①『外国商通古と者つけ』は下段全部で107語とかなり収録語数が少ないところ、ご覧のように商売に関係するところは遜色ないところを見ても、やはり呼び物は物のやり取りの場面・・・。
次回 :96:③『外国商通古と者附』の下段108行目から113行目まで
挿図
①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
④清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵