文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば51:本文178-181

2011年06月27日 | 文明開化と平仮名英語

51:本文178-181

挿図にある赤数字、②の場合は上段全189語のうち180番目を示す。③は上段全186語のうち175番目を示す。①は収録語彙が上段全109語(実は109番目は「つる」なのだ!②③の配列と合わせるために前後を組み替えて表示した。ご容赦のほど。)つまり、①②③ともここで取り上げた4語についてはすべて対応している。   
注:行数の表示は、従前との関係もありここでは②を基準にして178行目から181行目に従う。

178行目:日本語②「と里(り)」③①「とり」、その英語読みは②「者(ば)ーあづ」英語綴り「birds」、③①「ふるす」英語綴りはfowls であろう。二つに分かれたのは・・・④『ゑんぎり志ことば』≪とり ビルヅ≫birdsであろう⑤『新撰英語実用便』では≪鳥 とり バーアヅ≫②と同じ読みのようだ。
⑥『改正増補英語箋』には≪鳥 トリ bird ボイルドこの読みには驚いた。≪
b→ボ≫と読んだのが混乱のもとか。

179行目:日本語①②③とも「つる」その英語読みはいづれも「くれいん」英語綴り crane
④『ゑんぎり志ことば』≪つる ストルク≫英語綴りは stork 、これはコウノトリで似て非なるもの・・・⑤『新撰英語実用便』≪
 つる クレイン≫この鶴の文字の難しいこと・・・これが鶴とは見当もつかないのは私だけではなかろう⑥『改正増補英語箋』≪鶴ツルcraneケレーン≫この英語読みには苦労させられる。≪ク→ケ≫の読みで惑わされる。

180行目:日本語①②③とも「尓(に)ハとり」。英語読みは③①「ごつく」「ごッく」②「こっく」濁点が消えて見える。英語綴り cock だと「おんどり」
④『ゑんぎり志ことば』≪に王(わ)とり をす コック≫≪に王(わ)とり めす ヘン≫雄雌の使い分けを示して有り難い。英語綴りはそれぞれ cock hen
⑤『新撰英語実用便』には≪ 尓(に)王(わ)とり フヲル≫英語綴りfowl らしい。⑥『改正増補英語箋』には≪ニハトリ fowel フヲール≫当時このような英語綴りも存在したのか、筆の勢いの誤りなのか。ところで、この
だというから漢字は大変だ。

181行目:日本語①②③とも「あひる」。英語読み①③ともいづれも「志(じ)ゆく」②「どっく」
④『ゑんぎり志ことば』に≪あひる ドック
⑤『新撰英語実用便』≪家鴨 あひる トック≫英語読みの濁点が見当たらない。欠落か⑥『改正増補英語箋』では≪家鴨アヒル duck ドック≫このようにたどって見るとダックへの道のりはまだまだ遠いようだ。


次回:52本文182ー

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
 ④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
 ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
 


外国商通ことば50:本文174-177

2011年06月20日 | 文明開化と平仮名英語

50:本文174-177
挿図にある赤数字、②の場合は上段全189語のうち175番目を示す。③は上段全186語のうち170番目を示す。①は収録語彙が上段全109語のうちには表れない。下段(紛れを避けて紫数字)全107語のうち100番目を示す。編集上の如何なるいきさつがあったのか収録語数の少ないなかで、下段に落としている。何か劇的な変化が、曰くが有りそうだが、まだ、何も見えてこない…。   
;注:①に激変があったが配列はあまり乱れていない。行数の表示は、従前との関係もありここでは②を基準にして174行目から177行目までに従う。②にない「やなぎ」は①[やなぎ]を尊重して[101]、同様に③の「ざいもく」は[171]とした。

174行目:日本語②「木」③「き」、その英語読みは「うーど」、「て里(り)いす」英語綴りはwoodと treeに分かれた。④『ゑんぎり志ことば』≪き ティリース≫⑤『新撰英語実用便』では≪木 き ウード≫≪植木うへき ツリー≫とある。樹木がtree で木材が woodの使い分け。
⑥『改正増補英語箋』には≪樹ウエキtree ツリー


175行目:日本語①②③とも「まつ」その英語読みは③①とも「者(ぱ)いん」②「ぺいんつりー」。
④『ゑんぎり志ことば』≪パイン パイン パインティリー≫⑤『新撰英語実用便』≪松 まつ パインツリー≫⑥『改正増補英語箋』≪松マツpine パイン≫英語読みに苦労した様が窺える。

[101行目]:①のみ日本語「やなぎ」、英語読み「ういるろう」。
④『ゑんぎり志ことば』≪やなぎ ウィルロウ ウイルロウティリー≫ティリーは tree のことらしい。
⑤『新撰英語実用便』≪柳 やなぎ ウイルローツリー≫⑥『改正増補英語箋』≪楊 ヤナギ willow ウ井ルロウ ≫とある。
 
176行目:日本語①②③とも「さくら」。英語読みは①「ちへるりい」③「ちゑろりい」②「ちェるりー」。
④『ゑんぎり志ことば』≪さくら チェルリー
⑤『新撰英語実用便』には≪桜さくらチエルリー≫⑥『改正増補英語箋』には≪桜 サクラ cherry tree チェルリーツリー

 177行目:日本語①③「うめ」②「むめ」。英語読み①②③ともいづれも「ぷりゆむ」
④『ゑんぎり志ことば』に≪むめ プリュム
⑤『新撰英語実用便』≪梅むめプリユム≫⑥『改正増補英語箋』では≪梅ウメ plum tree プリュム ツリー≫ここで初めて「ウメ」になった。それまでは「むめ」が幅を利かせていた。≪む⇒う≫への移行については識者のご教示を仰ぎたい。

[171行目]:日本語③のみ「ざいもく」、英語読み「てんぷる」。これはどうやら timber のことらしい。⑤『新撰英語実用便』≪材木 ざいもく ランバア≫この英語綴りは lumber ④⑥には見あたらない。何故か材料に乏しい。  timber lumber log 等の使い分けはその道の専門家に伺いたい。
 
次回:51本文178ー

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
   ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
   ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
 


外国商通ことば49:本文166-173

2011年06月13日 | 文明開化と平仮名英語

49:本文166-173
挿図にある赤数字、②の場合は上段全189語のうち170番目を示す。③は上段全186語のうち160番目を示す。①は収録語彙が上段全109語のうちには表れない。下段(紛れを避けて紫数字)全107語のうち105番目及び最後の107語を示す。編集上の如何なるいきさつがあったのか収録語数の少ないなかで、下段に落とし、しかもこれで締めくくっている。目まぐるしい突発的な何かが発生したことは間違いない。劇的な変わりようだ!何か曰くが有りそうだが、まだ、何も見えてこない…。   
;注:①に激変があるほか、配列は全てにかなり乱れている。しかし①②③すべてにある程度、顔を出している。行数の表示は、従前との関係もありここでは②の166行目から173行目までに従う。

166行目:日本語②のみ「むし」、その英語読みは「うをーむ」英語綴りは wormこの虫の総称は何故か②のみ収録。⑤では片仮名で「ウヲーム」
⑥『改正増補英語箋』には≪虫ムシ柔ナル虫ノ総名 wormウオルム
虫ムシ甲ト羽トヲ持チタルモノ総名 insect インセクト≫≪虫ムシ這行スル虫ノ総名 reptile レプタイル≫普段あまり目にしない虫全般を通覧出来て有り難い。

167行目:日本語②③とも「可(か)いこ」その英語読みは②「志(し)るくうをーむ」、③は「するくうおるん」。
④『ゑんぎり志ことば』≪かいこ シェルクウォルム≫⑤『新撰英語実用便』≪蠺 かいこ シルクウヲーム≫⑥『改正増補英語箋』≪蠶カイコ silk-worm シルキウォルム≫蚕の文字の難しいこと・・・お手上げ。文字を眺めていると虫が変わる様子・・・変態する様を想像させてくれるが果たして如何か。

168行目:日本語②③いずれも「へび」①は「遍(へ)び」、英語読み①③「せるぺんと」、②「春(す)ねーき」・・・かくて英語読みは2分された。その二通りの読み方は
④『ゑんぎり志ことば』≪へび セルペント スネーキ≫にそのまま示されている。
⑤『新撰英語実用便』≪蛇 へび スネーキ≫⑥『改正増補英語箋』≪蛇類ヘビル井総名serpent セルペント:蛇ヘビsnakeス子ネーキ ≫とある。
169行目:日本語②③とも「可(か)いる」①「可(か)ひる」。英語読みは②①とも「ふろぐ」③「ふりぐ」
④『ゑんぎり志ことば』≪かいる トアド≫≪ひ記(き)がいる フロック
⑤『新撰英語実用便』には≪蟇かへるフログ≫⑥『改正増補英語箋』には≪蟇 ヒキカエルtoad トード≫≪蛙カワヅfrog フログ

170行目:日本語②③「か」、英語読み③「ねっと」②「ますくいッと」
④『ゑんぎり志ことば』に≪か 子(ネ)ット ミッジ
⑤『新撰英語実用便』≪蚊 か マスクイット≫⑥『改正増補英語箋』では≪蚊 カ gnat ナット


171行目:日本語②③①とも「のみ」、英語読み②「ふりい」③①とも「ふ里(り)う」
④『ゑんぎり志ことば』≪のみ フリー≫⑥『改正増補英語箋』では≪蚤ノミ flea フリー


 172行目:日本語②③①とも「志(し)らみ」、英語読み③①とも「ろうす」、②「ろーす」
④『ゑんぎり志ことば』≪志(し)らみ ロウス≫⑤『新撰英語実用便』≪虱 志(し)らミ ロース≫⑥『改正増補英語箋』≪虱シラミ louse ロース≫英語綴りは確認できたが、この虱の漢字は異様な形をしている由来を詮索したくなる・・・好奇心をそそられる。

173行目:日本語②③「者はい」、英語読み「ふらい」
④『ゑんぎり志ことば』≪者(は)い フライ≫⑤『新撰英語実用便』≪蠅 者(は)いフラ井(イ)≫⑥『改正増補英語箋』≪蠅ハイ flyフライ≫この蠅の字も厄介だ。漢字は難しい。

次回:50本文:174ー

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
    ④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
    ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
 


外国商通ことば48本文:161-165

2011年06月06日 | 文明開化と平仮名英語

 48:本文161-165
挿図にある赤数字、②の場合は上段全189語のうち165番目を示す。③は上段全186語のうち155番目を示す。①は収録語彙が上段全109語のうち95番目を示す。収録語数の少ないなかで、見応えがある。   
;注:①に「かなもの」が欠如しているほかは、配列の順序は入り乱れているものの①②③すべてに収録されている。行数の表示は、従前との関係もありここでは②の161行目から165行目までとする。

161行目:日本語②③いづれも「かなもの」その英語読みはいずれも「ぶろんず」英語綴りは bronze。
⑥『改正増補英語箋』には≪青銅カラカ子(ネ) bronzeブロンヅ≫「青銅をカラカネと読ませている」のは、『新明解国語辞典』によると≪からかね【唐金】「青銅」の意の和語的表現≫。金属はその昔「きがね、しろがね、あかがね、からがね、くろがね」などと呼ばれていたようだ。何か風情があっていい・・・

⑦『和英語林集成』には≪KARA-KANE,カラカ子(ネ),鎕,n. Bronze.≫とある。金偏に唐とは驚いた。金偏でいろいろの金属誕生で漢字の錬金術に目を見張る。



162行目:日本語②③①とも「きん」その英語読みは②「ごーるど」、③①はいずれも「ごうる」で、②の「ど」を呑み込んでいる。耳学問の成果なのかもしれない。
④『ゑんぎり志ことば』≪きがね こがね きん ゴールド≫と詳しい。⑤『新撰英語実用便』≪金きんコールド≫コの濁点が落ちているのか見えない。⑥『改正増補英語箋』では明瞭に出ている。ご覧ください。

163行目:日本語①②③いずれも「ぎん」英語読み①③「志(し)るうる」②「志(し)る者(ば)る」いづれも語尾の「る」が気懸り。

④『ゑんぎり志ことば』≪志(し)ろ可(か)ね ぎん シルウル
⑤『新撰英語実用便』≪銀 ぎん ンルバル≫とあるが、≪シ⇒ン≫と、いつのまにか紛れてしまったのか、摺りの関係か点が消えて見えるから厄介。
⑥『改正増補英語箋』≪銀ギン silver シルヴル≫とある。
 
164行目:日本語②③①とも「あ可(か)が年」でほぼ一致。英語読みは③「こーると」
①「かつぷる」語尾の「る」が気懸り②「こッ者(ぱ)あ」耳学問の成果が表れているようだ。
④『ゑんぎり志ことば』≪あかがね コッペル
⑤『新撰英語実用便』には≪銅 あ可(か)可(が)ね カツパル≫⑥『改正増補英語箋』には≪銅 アカゞネ copper コップル≫いづれも語尾の「る」が気懸り。

165行目:日本語②③①「てつ」、英語読み①「あゐらん」③「あいるん」②「あいろん」このように並べてみると「ら行」で変化していることがわかる。最後が「あいろん」でホッとする。
④『ゑんぎり志ことば』に≪くろがね てつ アイルン
⑤『新撰英語実用便』≪鉄 てつ アイロン≫⑥『改正増補英語箋』では≪鉄 テツ iron アイロン

次回:49本文166ー

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
   ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
   ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
   ⑦『和英語林集成』慶応3年(1867)明治学院大学デジタルアーカイブ、横浜開港資料館D.VIII.7C