文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば106:下段③176-180_183-184

2012年07月16日 | 文明開化と平仮名英語

 106:③下段本文176-180_183-184

 いままで ②『外国商通言葉集』の順を尊重して下段本文を取り上げ、取り敢えず②は前回で終了した。
今回は②『外国商通言葉集』に掲載されてなくて③『外国商通古と者附』の下段食物の部にのみ掲載さている7語について取り上げることに・・・
 
176行目:日本語③≪古(こ)い≫英語読みけれふ≫ はてさて・・・英語綴りは・・・・・・
④『ゑんぎり志ことば』には≪古(こ)い ケルプ③は④の影響を受けている≪≫見間違いかも・・・
⑤『新撰英語実用便』では≪
鯉 こい  カァプ
⑥『改正増補英語箋』には≪鯉魚コイ carp カープ
≫・・・英語綴り・・・carp・・・
 
177行目:日本語③≪たら≫英語読みこつとぴし英語綴り?  
④『ゑんぎり志ことば』ではたら コット/コットヒシ
⑤『新撰英語実用便』では≪
鱈 たら カットフヱーシュ≫⑥『改正増補英語箋』には≪黄顙魚 タラ cod コッド≫この漢字の難しいこと。英語綴りも馴染みのない英名で戸惑うが、机上の和英辞書によれば・・・cod・・・codfish・・・このようにみると『ゑんぎり志ことば』の読みはピッタリだったことに。ここでも、さすが清水卯三郎先生・・・


178行目:日本語③≪う奈(な)ぎ≫英語読み≪いーる 
 ④『ゑんぎり志ことば』≪
うなぎ イール≫ ⑤『新撰英語実用便』≪
鰻 うなぎ イール≫⑥『改正増補英語箋』≪海鰻ウナギ eel イール≫≪八目鰻ヤツメウナギ lamprey ラムプレー

179行目:この箇所はちょうど原資料の折り目にあたり、ご覧のように損傷個所で読みは困難・・・、前回あきらめていたところ、どうやら日本語③≪かいあさり≫英語読み
志(し)へるす≫と読めるではないか・・・というで、ここで、復活することにした。
④『ゑんぎり志ことば』には≪かい はまぐり、かき 阿(あ)さり、のるい シェルス
⑤『新撰英語実用便』≪貝類 可(い)るい セルオ井スタア≫ ⑥『改正増補英語箋』≪介類 カイルイ shell fish シェルフ井シ
従前の例のごとく③と④の読みはかなり近いことからも….上記の読みを検証できる。

ここで③の≪かいあさり≫の読みを復活したい。

180行目:日本語③≪
かき≫英語読みおい春(す)尓(に)のるす≫難しい読みでお手上げ・・・
④『ゑんぎり志ことば』には≪
かき かき可(か)い オイステルス
英語読みがかなり近い・・・
⑥『改正増補英語箋』≪牡蠣カキ oyster ヲイストル≫語尾のルを響かせている気懸り。
③④の英語読みの近いのは・・・
≪④オイスルスオイスニノルス(おいすにのるす)≫
じっと眺めていると≪ニノ≫・・・片仮名のテを誤ってニとノに分解して読んだためにこのようなことになったかもしれない・・・と思うようになった・・・如何であろうか
それというのも③は④の影響を強く受けているから・・・こんなこじ付けをしてみた。
・・・当たらずと雖も遠からずか・・・

183行目:日本語③≪可(か)ま春(す)≫英語読み≪者(ば)いき
④『ゑんぎり志ことば』には≪かま春(す)・・・パイキ
⑤『新撰英語実用便』≪
 可(か)ます パイク
≫ ⑥『改正増補英語箋』には見当たらない。さて英語綴りは・・・pike・・・

184行目:日本語③≪
可(か)尓(に)≫英語読み志(し)ゆるひし
④『ゑんぎり志ことば』には≪かに シェルピシ
⑤『新撰英語実用便』には見当たらない
⑥『改正増補英語箋』「かに」は見当たらないザリカニのみ≪ザリカニ crow-fish コロウフィシ

≫調べた範囲では、どおやら蟹とか海老など甲殻類の総称が・・・shell fish・・・

以上で③の積み残しもひとまず終了とします。
永い間おつきあいいただきありがとうございました。

しばし・・・沈思黙考


挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ④清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
   ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵 
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
  



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