引用文献12で『萬国通商往来』を取り上げた。漢字と平仮名(崩し字)の筆使いと、ページ構成の妙、見ていてまさに文明開化の音が聞こえてくるようだ。その魅力にすっかり取り付かれてしまった。これから全60丁を1回に1ページ(半丁に相当)のペースで読んでみたい。どこまで続くか・・・本文はご覧のように5行で構成、漢字はすべて振り仮名付き、平仮名は崩し字、句読点は「。」
第1丁表
内題:
・萬国通商往来[者(ば)ん古(こ)くつうせうおうらい]、外題には頭書挿画が組み文字のように見えるとのことであるが未確認。
本文:
・我[わが]大八州[於(お)ほやしま]盤(は)。東海[とう可(か)い]之(の)
・ ①表時[者(は)なれぐ尓(に)]。②膏腴[よき志(じ)めん]之(の)③**[ところ]尓(に)し
・て。山尓(に)は金石④*[於(お)ほ]く。海尓(に)
・者(は)⑤魚塩[さんぶ津(つ)]富[と免(め)]利(り)。五穀[古(ご)こく]⑥秀[うるは]
振り仮名による現行の読みを頼りにどうにか意味を辿ることが出来るが、当時の漢字は、現行のものとあまりにもかけ離れている。謎々とか判じ物のようだ。
①表時[者(は)なれぐ尓(に)]この漢字にしてこの振り仮名、開いた口が塞がれないといったところだが・・・[はなれぐに]は、わが大八州は地球上の東海に離れ国として現れると言う意味だろうか。
②膏腴[よき志(じ)めん]この漢字は「こうゆ」と読み、「肥沃の地」を意味し、史記に出てくるという。
③**[ところ]漢字の見当がつかない。識者のご教示を乞う。
④*[於(お)ほく]これも漢字の見当が付かない。識者のご教示を乞う。
⑤魚塩に[さんぶ津(つ)]の振り仮名をつけているところをみると、代表的なものを掲げて、振り仮名で読ませるテクニックとも・・・これは思い過ごしか・・・
⑥秀[うるは]は、普通は麗であろうが、秀麗と関係があるかもしれない。
本文を読み始めたところであるが、大言壮語と筆の勢いに圧倒されるばかり。
<注> 崩し字に悩まされるが、書家の好みの崩し字がそれとなくわかるまで、しばし、崩し字には丁寧にお付き合いしたい。
頭書にある文明と開化については第1丁表-頭書を参照。なお、上部右隅に見える朱印は旧蔵者印。
<挿図:神奈川県立図書館k670.3/2>