文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば64:下段本文30-33

2011年09月26日 | 文明開化と平仮名英語

 64下段本文30-33

③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予想させる。①『外国商通古と者つけ』は下段が全107語。 年代順は③①②の順が予想される。
今までにご覧いただいたように③①はかなり似ている。近い関係にある。しかし、②は全くといっていいほど収録している言葉のレベルが違う。これが同じ編者かと目を疑いたいくらい。ここでは、従前の例に倣って②の順を尊重して30行から33行としたい・・・

30行目:②日本語「た可(か)い」英語読み「者(は)い」英語綴りhigh。③日本語「た可(か)き」英語読み「者(は)い」。①から相当する言葉は見つけ出せなかった。
④『ゑんぎり志ことば』には≪た可(か)き ハイ≫で、平仮名か、片仮名化の違いだけであとは③と同じようだ。
⑤『新撰英語実用便』では≪高イ た可(か)ひ ハイ≫日本語「た可(か)ひ」の「ひ」が気懸り・・・⑥『改正増補英語箋』高タカキ high ハイ
≫カタカナ表記とヒラガナ表記の違いはあるがほぼ同じ。

31行目:②日本語「ひくい」英語読み「ろー」。
③日本語「ひくき」英語読み「ら。う」。
④『ゑんぎり志ことば』には≪ひくき ラ。ウ≫なんと③と④とはかなり近い関係にある事を知らされる。
⑤『新撰英語実用便』では≪低 ひくい ロー≫②と⑤まさに同類だ。⑥『改正増補英語箋』低 ヒクキ low  ロウ

こうしてみると③④の「ら。う」②⑤の「ろー、ロー」

このように文字の間に小さい丸があるのは、④の編者清水卯三郎先生によれば、≪ひろいよみ≫と称して≪らう又はラウ≫とよみ≪ろー又はロー≫とは読まないと教えている。

32行目:②のみ日本語「ち可(か)い」英語読み「尓(に)いあ」③①には収録なし。
⑤『新撰英語実用便』では≪近イ ち可(か)ひ ニイア≫⑥『改正増補英語箋』≪近チカキ near ニール≫。≪・・ル⇔・・ア≫「語尾の・・ル」が格調の高さを示していたのかもしれない。蘭語の影響か・・・

33行目:②のみ日本語「とうい」英語読み「ふ王(わ)ー」、にある小さい文字は分かりづらい、「王(わ)」と読んでみたが?果たしてどうか③①には該当しそうな言葉は見当たらなかった。
⑤『新撰英語実用便』では≪遠イ とうい フヮー≫で②に近い⑥.『改正増補英語箋』では≪遠トヲキ far フアル
比べてみると日本語の語尾の≪・・き⇔・・い≫なんとなく格調の高いもの平易なもの、年代ものもちらついてくる。ニュアンスは大分違うが・・・気懸り

次回  65:下段本文34-37

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ④清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵  
    ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
   ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
  


外国商通ことば63:下段本文26-29

2011年09月19日 | 文明開化と平仮名英語

63下段本文26-29

③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予感させる。①『外国商通古と者つけ』は全107語。 年代順は③①②の順が予想される。
ご覧のように③①はかなり似ている。近い関係にある。しかし、②は全くといっていいほど収録している言葉のレベルが違う。これが同じ編者かと目を疑う。ここでは、従前の例に倣って②の順を尊重して26行から29行としたい・・・

26行目:②日本語「上へ」英語読み「あっぷ」どうやら英語綴りup。③①には②に相当する言葉は見つけ出せない。無理筋でも強引に選択した。③①とも日本語「あ可(が)る」英語読み「ごうあっぷ」
⑥『改正増補英語箋』には見当たらない。⑤『新撰英語実用便』では≪上エ うへ アップ⑤-2『英語手引草 扱言編』でも≪
上エ うへ アップ≫カタカナ表記とヒラガナ表記の違いはあるがほぼ同じ。

27行目:②日本語「下た」英語読み「だうん」。③①とも日本語「くだる」英語読み「ごうだうん」
改めて②と⑤、⑤-2はかなり近い。事を知らされる。
⑤『新撰英語実用便』では≪下タ した ダウン≫⑤-2『英語手引草 扱言編』も全く同じ、敷き写したようだ。②と⑤さらに⑤-2では平仮名と片仮名の違いだけでまさに同類だ。
このようにみていると②では≪あっぷup⇔だうんdown≫③①では≪go up⇔ go down≫どうやら選択の目線が違う。

28行目:②日本語「来る」英語読み「かむ」⑤『新撰英語実用便』では≪来ル くる カム≫⑥『改正増補英語箋』≪来キタル to come ツー コーム≫。中学英語を思い出させてくれる。
③日本語「王(わ)多(た)くしのいへ尓(に)き多(た)れ」、英語読み「かむまひ者(は)うす」英語綴り come my house
「わが店に来たれ」と誘ったのであろう。ずいぶん実践的!①も殆ど同じ、ご覧ください。このようにみると③①は波止場でのやり取りが目に浮かぶようだ。

 29行目:②のみ日本語「きない」英語読み「のう可(か)む」≪
来る ⇔きない≫≪かむcomeのう可(か)む no come≫ まず「来(く)る⇔来(こ)ない」が「来る⇔きない」に驚き。更に≪come⇔ no come≫に驚いた。これが、実践英語か??? 残念なことに③①には該当しそうな言葉は見当たらなかった。

⑤『新撰英語実用便』には≪
不来 こない ノットカム
≫.not come・・・②では≪き奈(な)い のう可(か)む≫no come  であった。
⑥『改正増補英語箋』では≪往ユク to go ツーゴー
こうしてみると②『外国商通言葉集』と⑤『新撰英語実用便』とはかなり近い関係で庶民的。⑥『改正増補英語箋』は振れ込みどうりかなりレベルが違うようだ。

次回  64:下段本文30-33

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
    
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
    ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
   ⑤-2尾嵜冨五郎蔵板『英語手引草 扱言編』(刊年不明)神奈川県立図書館所蔵
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
  


外国商通ことば62:下段本文22-25

2011年09月12日 | 文明開化と平仮名英語

 62下段本文22-25

③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予感させる。しかし、①『外国商通古と者つけ』は全107語。従前の例にならへば 年代順は③①②の順が予想される。
②の順を尊重して22行から25行としたい・・・としたが、ご覧のように③①には全く収録されていない言葉の取捨選択は驚くほどバラバラ・・・どうしたのか「はやい」「おそい」などは商取引にはつきものであろうに・・・特に③と②は収録語数が同じというのに・・・いつの時点かに③に収録されていても②に未収録の時がやってくる。編者の語彙選択の基準がいづれハッキリするであろう。その時が今から待ち遠しい。

22行目:②日本語「者()やい」英語読み「くいつき」何かに食いつきそうで面食らった。が、どうやら英語綴りquickらしい。何回見ても「くいつき」は面白い。当時の読みとしては無理なかったかもしれない。先にふれたように③①とも収録なし。⑤『新撰英語実用便』では≪早イ者()やい クイッキ≫このほうがまだよさそうだ⑥の『改正増補英語箋』では≪速スミヤカナル early ヱールリー≫早い、速いでは同じ「はやい」でも時刻とスピードの違いがある。その違いは、漢字によく表れている。漢字のすごいところ、重宝だ!

23行目:②日本語「おそい」英語読み「すろー」。③①とも見当たらない。理解に苦しむところ。
⑤『新撰英語実用便』では≪遅 おそい スロー≫⑥『改正増補英語箋』では≪遅 オソキ late レート≫とある。このようにしてみると⑤はスピードを⑥は時刻をそれぞれ使い分けされている。しかし、ここでは漢字に違いが表れていない。残念

24行目:②日本語「みぎ」英語読み「らいと」⑤『新撰英語実用便』では≪右 みぎ ライト≫⑥『改正増補英語箋』≪右ミギノrightライト≫。これも中学英語を思い出させてくれる。
25行目:②日本語「飛()たり」英語読み「レフト」⑤『新撰英語実用便』には右はあっても左はない。ここでは、右が最終行に、それで繋がりが消えたのか・・・姿が見えない。やむなく同類の編著⑤-2『英語手引草 扱言編』を見ると、同じ冊子と見間違えるくらい摺られた語彙は見た目には違いがわからない。しかも、上段下段と対比しているからはるかに見やすい。間違いも回避できるのでは。≪左リ ひだり レフト≫.
⑥『改正増補英語箋』では≪左 ヒダリノ left レフト≫眺めていると日本語の表示にわざわざ・・・「右ノ、左ノ」などとしてるのは形容詞を意識してのことかもしれない・・・どこか違和感を感じてならない。

次回  63:下段本文26-

挿図
  ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
  ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
  ⑤-2尾嵜冨五郎蔵板『英語手引草 扱言編』(刊年不明)神奈川県立図書館所蔵
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵


外国商通ことば61:下段本文18-21

2011年09月05日 | 文明開化と平仮名英語

 61下段本文18-21

③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予感させるが、ご覧のように余り関連性は窺えない。①『外国商通古と者つけ』は全107語

 年代順は③①②の順が予想される。 従前の例にならって②の順を尊重して取り上げていきたい。

18行目:②日本語「とる」英語読み「てゑき」には驚いたが英語綴りtake当時の読みとしては無理なかったかもしれない。③①とも収録なし。⑤『新撰英語実用便』では≪取とる テエキ⑥の『改正増補英語箋』では≪取トル to take ツーテーキ≫どうやら同じ調子だ。

19行目:②日本語「やる」英語読み「ぎぶ」。「やる」に驚いたが 確かに give  で違いはなさそうだ。まさに商売に「やりとり」は欠かせない。外国商通を旗印にしているのに③①とも見当たらない。どうしたのか理解に苦しむ。
何故か④『ゑんぎり志ことば』にも見当たらない。・・・探し方が悪いか。
⑤『新撰英語実用便』では≪渡ス 王(わ)多(た)す ギブ≫⑥『改正増補英語箋』では≪與アタフ to give ツーギブ≫とある。

20行目:③②①とも日本語「つよき」英語読み「春(す)とろんぐ」で珍しく足並みがそろっている。④『ゑんぎり志ことば』≪つよき ストロング≫⑤『新撰英語実用便』では≪強イ つよひ ストロング≫⑥『改正増補英語箋』≪強ツヨキ storong ストロング≫。この英語綴りをご覧あれ・・・危うくパスしそう。よく見ると綴り字が違うではないか。storong ⇒ strong 中学英語を思い出して苦笑い。
 
21行目:③②①とも日本語「よ王(わ)き」英語読み③①とも「うゑーき」
②は「ういーき」④『ゑんぎり志ことば』では≪よハき ウヱーキ
⑤『新撰英語実用便』では≪弱イ よ王(わ)き ウイーキ≫⑥『改正増補英語箋』でも≪弱ヨハキ weak ウィーキ

強き弱きで③②①とも足並みがそろった。さて次回はどうなるか。

次回  62:下段本文22-25

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
    ⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
     ⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵