64下段本文30-33
③『外国商通古と者附』の「ことばのぶ」は全129語②『外国商通言葉集』の「言葉つかひ」も全129語、ここまでは同じ内容の言葉を予想させる。①『外国商通古と者つけ』は下段が全107語。 年代順は③①②の順が予想される。
今までにご覧いただいたように③①はかなり似ている。近い関係にある。しかし、②は全くといっていいほど収録している言葉のレベルが違う。これが同じ編者かと目を疑いたいくらい。ここでは、従前の例に倣って②の順を尊重して30行から33行としたい・・・
30行目:②日本語「た可(か)い」英語読み「者(は)い」英語綴りhigh。③日本語「た可(か)き」英語読み「者(は)い」。①から相当する言葉は見つけ出せなかった。
④『ゑんぎり志ことば』には≪た可(か)き ハイ≫で、平仮名か、片仮名化の違いだけであとは③と同じようだ。
⑤『新撰英語実用便』では≪高イ た可(か)ひ ハイ≫日本語「た可(か)ひ」の「ひ」が気懸り・・・⑥『改正増補英語箋』≪高タカキ high ハイ≫カタカナ表記とヒラガナ表記の違いはあるがほぼ同じ。
31行目:②日本語「ひくい」英語読み「ろー」。
③日本語「ひくき」英語読み「ら。う」。
④『ゑんぎり志ことば』には≪ひくき ラ。ウ≫なんと③と④とはかなり近い関係にある事を知らされる。
⑤『新撰英語実用便』では≪低 ひくい ロー≫②と⑤まさに同類だ。⑥『改正増補英語箋』≪低 ヒクキ low ロウ≫
こうしてみると③④の「ら。う」②⑤の「ろー、ロー」。
このように文字の間に小さい丸があるのは、④の編者清水卯三郎先生によれば、≪ひろいよみ≫と称して≪らう又はラウ≫とよみ≪ろー又はロー≫とは読まないと教えている。
32行目:②のみ日本語「ち可(か)い」英語読み「尓(に)いあ」③①には収録なし。
⑤『新撰英語実用便』では≪近イ ち可(か)ひ ニイア≫⑥『改正増補英語箋』≪近チカキ near ニール≫。≪・・ル⇔・・ア≫「語尾の・・ル」が格調の高さを示していたのかもしれない。蘭語の影響か・・・
33行目:②のみ日本語「とうい」英語読み「ふ王(わ)ー」、にある小さい文字は分かりづらい、「王(わ)」と読んでみたが?果たしてどうか③①には該当しそうな言葉は見当たらなかった。
⑤『新撰英語実用便』では≪遠イ とうい フヮー≫で②に近い⑥.『改正増補英語箋』では≪遠トヲキ far フアル≫
比べてみると日本語の語尾の≪・・き⇔・・い≫なんとなく格調の高いもの平易なもの、年代ものもちらついてくる。ニュアンスは大分違うが・・・気懸り
次回 65:下段本文34-37
挿図
①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
④清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵