106:③下段本文176-180_183-184
いままで ②『外国商通言葉集』の順を尊重して下段本文を取り上げ、取り敢えず②は前回で終了した。
今回は②『外国商通言葉集』に掲載されてなくて③『外国商通古と者附』の下段食物の部にのみ掲載さている7語について取り上げることに・・・
176行目:日本語③≪古(こ)い≫英語読み≪けれふ≫ はてさて・・・英語綴りは・・・・・・
④『ゑんぎり志ことば』には≪古(こ)い ケルプ≫③は④の影響を受けている≪ル⇔レ≫見間違いかも・・・
⑤『新撰英語実用便』では≪鯉 こい カァプ≫
⑥『改正増補英語箋』には≪鯉魚コイ carp カープ≫・・・英語綴り・・・carp・・・
177行目:日本語③≪たら≫英語読み≪こつとぴし ≫ 英語綴り?
④『ゑんぎり志ことば』では≪たら コット/コットヒシ≫
⑤『新撰英語実用便』では≪鱈 たら カットフヱーシュ≫⑥『改正増補英語箋』には≪黄顙魚 タラ cod コッド≫この漢字の難しいこと。英語綴りも馴染みのない英名で戸惑うが、机上の和英辞書によれば・・・cod・・・codfish・・・このようにみると『ゑんぎり志ことば』の読みはピッタリだったことに。ここでも、さすが清水卯三郎先生・・・
178行目:日本語③≪う奈(な)ぎ≫英語読み≪いーる≫
④『ゑんぎり志ことば』≪うなぎ イール≫ ⑤『新撰英語実用便』≪鰻 うなぎ イール≫⑥『改正増補英語箋』≪海鰻ウナギ eel イール≫≪八目鰻ヤツメウナギ lamprey ラムプレー≫
179行目:この箇所はちょうど原資料の折り目にあたり、ご覧のように損傷個所で読みは困難・・・、前回あきらめていたところ、どうやら日本語③≪かいあさり≫英語読み≪志(し)へるす≫と読めるではないか・・・というで、ここで、復活することにした。
④『ゑんぎり志ことば』には≪かい はまぐり、かき 阿(あ)さり、のるい シェルス≫
⑤『新撰英語実用便』≪貝類 可(い)るい セルオ井スタア≫ ⑥『改正増補英語箋』≪介類 カイルイ shell fish シェルフ井シ≫
従前の例のごとく③と④の読みはかなり近いことからも….上記の読みを検証できる。
ここで③の≪かいあさり≫の読みを復活したい。
180行目:日本語③≪かき≫英語読み≪おい春(す)尓(に)のるす≫難しい読みでお手上げ・・・
④『ゑんぎり志ことば』には≪かき かき可(か)い オイステルス≫英語読みがかなり近い・・・
⑥『改正増補英語箋』≪牡蠣カキ oyster ヲイストル≫語尾のルを響かせている気懸り。
③④の英語読みの近いのは・・・
≪④オイステルス⇒③オイスニノルス(おいすにのるす)≫じっと眺めていると≪テ⇒ニノ≫・・・片仮名のテを誤ってニとノに分解して読んだためにこのようなことになったかもしれない・・・と思うようになった・・・如何であろうか
それというのも③は④の影響を強く受けているから・・・こんなこじ付けをしてみた。
・・・当たらずと雖も遠からずか・・・
183行目:日本語③≪可(か)ま春(す)≫英語読み≪者(ば)いき≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪かま春(す)・・・パイキ≫
⑤『新撰英語実用便』≪ 可(か)ます パイク≫ ⑥『改正増補英語箋』には見当たらない。さて英語綴りは・・・pike・・・
184行目:日本語③≪可(か)尓(に)≫英語読み≪志(し)ゆるひし≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪かに シェルピシ≫
⑤『新撰英語実用便』には見当たらない
⑥『改正増補英語箋』「かに」は見当たらないザリカニのみ≪ザリカニ crow-fish コロウフィシ
≫調べた範囲では、どおやら蟹とか海老など甲殻類の総称が・・・shell fish・・・
以上で③の積み残しもひとまず終了とします。
永い間おつきあいいただきありがとうございました。
しばし・・・沈思黙考
挿図
①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
④清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
105:下段本文179-185
前例に倣って ②『外国商通言葉集』の順を尊重して179行から185行の最後までを取り上げることに。③においてはご覧のように選択順にかなりの相違がある。該当する言葉は2語を除き見つかるものの②に比べてかなり配列は前後している。①からは1例だけ・・・
179行目:日本語②③≪さめ≫英語読み②≪とるんべいき≫ ③≪そるんべいき≫≪と⇔そ≫ の違い、はてさて・・・英語綴りは・・・・・・
④『ゑんぎり志ことば』≪さめ ソルンベッキ≫
⑤-2『英語手引草 扱言編』では≪鮫 さめ トルンベーキ≫
⑥『改正増補英語箋』には≪鮫サメ thorn beck トルンベッキ≫・・・英語綴り・・・thorn back・・・背と尾に棘(とげ)があることからの命名らしい!面白い!しかしこの英語読みには手古摺った。何故か shark は出てこない。因みにヘボンの『和英語林集成』には shark しか出ていない。
180行目:日本語②③とも≪すゝき≫英語読み②≪へっと多(だ)ッく ≫ ③≪者(は)つとぐっく ≫英語綴り・・・・・・
④『ゑんぎり志ことば』では≪すヾき ハットドック≫
⑤-2『英語手引草 扱言編』では≪鱸 すずき ツトダック≫≪ハ抜け≫。≪ド⇔ダ≫かなり混乱・・・
181行目:日本語②③≪このしろ≫英語読み②≪へるりんぐ≫③≪へろりんぐ≫
④『ゑんぎり志ことば』≪この志(し)ろ ヘルリング≫ ⑤『新撰英語実用便』≪
鰶 このしろ ヘルリング≫⑥『改正増補英語箋』≪鰶コノテロ herring ヘルリン≫≪鰶≫の字の難しいこと・・・お手上げ・・・
182行目:日本語②のみ≪い王(わ)し≫英語読み②≪ひるちゃると≫
④『ゑんぎり志ことば』⑥『改正増補英語箋』には見当たらない。
⑤『新撰英語実用便』≪鰯 いわし ヒルチャルト≫この≪鰕≫の字の難しいこと・・・お手上げ・・・ところで、陸揚げするとすぐに弱って腐りやすい魚であることから「よわし」から変化したというのが漢字の「鰯」の由来とか・・・
ヘボン『和英語林集成』のp.150に出ている「IWASHI イワシ」をご覧ください
183行目:日本語②③①≪くじら≫英語読み②≪うえーる≫③≪うえぐる≫ ①≪うえくる≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪くじら ワーレ≫
⑤『新撰英語実用便』には≪鯨 くじら ウヱール≫
⑥『改正増補英語箋』≪鯨クジラ whale ホウェール≫
184行目:日本語②のみ≪かいるい≫英語読み②≪せるをい春(す)多(た)あ≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪かい はまぐり、かき 阿(あ)さり、・・・シェルス≫
⑤『新撰英語実用便』≪貝類 可(か)いるい セルオ井(イ)スタア≫ ⑥『改正増補英語箋』≪介類 カイルイ shell fish シェルフ井(イ)シ≫
総じて魚の読みは、奥が深い、それだけ生活に密着していたのかも・・・
185行目:日本語②≪かめ≫③≪可(か)めのこ≫英語読み②≪とるといす≫③≪とるちす≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪かめ トルチス≫
⑤『新撰英語実用便』には≪亀 可(か)め トルトイス≫
⑥『改正増補英語箋』≪亀カメ tortoise トルトイス≫≪海亀 ウミカメ Sea turtle シートルトル≫
次回 106回目:③下段本文176-180,183,184・・・③食物の部で最後に残った部分を予定
挿図
①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
⑤-2尾嵜冨五郎蔵板『英語手引草 扱言編』(刊年不明)神奈川県立図書館所蔵
⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵
⑦ヘボン『和英語林集成』慶應3年(1867)明治学院大学図書館デジタルアーカイブ
104:下段本文173-178
②『外国商通言葉集』の下段「食もつ之部」は130語から185語まで、③『外国商通古と者附』の「志よくもつのぶ」も130語から185語まで、①『外国商通古と者つけ』では77語から99語まで・・・ 既に最後のコースの「.食物の部」に入いっていて今回はその9回目・・・
前.例に倣って ②『外国商通言葉集』の順を尊重して173行から178行までを取り上げることに。③においてはご覧のように該当する言葉は見つかるものの②に比べてかなり配列は前後している。①からは3例だけ・・・
173行目:日本語②③①とも≪さ可(か)奈(な)≫英語読みいづれも≪ふいし≫ 英語綴り・・・fish・・・
④『ゑんぎり志ことば』も全く同じ
⑤『新撰英語実用便』では≪魚 う本(ほ) フィシ≫
⑥『改正増補英語箋』には≪海魚ウミノウヲ sea fish シーフ井シ≫及び≪魚ウヲ fish フ井シ≫
174行目:日本語②③①とも≪たい≫英語読み②≪ぶりーむ ≫ 英語綴り・・・bream・・・③①≪ぶりむ≫
④『ゑんぎり志ことば』では≪たい ぶりむ≫
⑤『新撰英語実用便』では≪鯛たい フリーム≫濁点が見えない。≪ブ⇔フ≫
⑥『改正増補英語箋』では≪鯛タイ goldney ゴールドニー≫
175行目:日本語②③≪ひらめ≫①には見当たらない。英語読み②≪ふろうんどる≫③≪ふろうんとる≫
④『ゑんぎり志ことば』≪ひらめ ふろうんとる≫ ⑤『新撰英語実用便』≪鮃 ひらめ フロウンドル≫⑥『改正増補英語箋』≪比目魚 ヒラメ flounder フローンドル≫
176行目:日本語②③≪ゑび≫英語読み②≪くろーふえー志(し)ゆ≫③≪けれん志(し)げん志(し)≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪ゑび けれん志(し)げん志(し)≫とあるところを見ると③と④は同じ読み、・・・さて英語綴・・・・・・ここでも③は④の影響を強く受けているようだ。
⑤『新撰英語実用便』≪鰕 ゑび クローフェーシュ≫この≪鰕≫の字の難しいこと・・・お手上げ・・・
⑥『改正増補英語箋』≪龍鰕クルマエビ shrinp シリヌプ≫≪海鰕イセエビ lobster ロブストル≫
177行目:日本語②≪かれい≫③≪可(か)れい≫英語読み②≪とんぎうせー≫③≪とんぎ可(か)ひし≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪可(か)れい とんぎ可(か)ひし ≫ここでも③と④は同じ読み ⑤『新撰英語実用便』には≪王餘? かれい トンギウセシ≫⑥『改正増補英語箋』≪皆魚 カレーtorbot トルボット≫とは・・・・・・。この読みにはかなり手古摺ったようだ!!
178行目:日本語②③①≪まぐろ≫英語読み②≪本(ほ)るぴす≫③≪本(ほ)る飛(ぴ)す≫①≪本(ほ)るひす≫
④『ゑんぎり志ことば』には≪まぐろ 本(ほ)ル飛(ぴ)す≫
⑤『新撰英語実用便』≪? まぐろ ホルピス≫ ⑥『改正増補英語箋』≪金鎗魚 マクロ tunny チュンニー≫
総じて魚の読みは、奥が深い、それだけ生活に密着していたのかも・・・
次回 105回目:下段本文179-185・・・食物の部の最後・・・の予定
挿図
①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
④志水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
⑤尾嵜冨老『新撰英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵
⑥石橋正方『改正増補英語箋』明治5年(1872)早稲田大学図書館所蔵