難解な見出し語-2
『萬国通商往来』(明治6年出板)の頭注に英語寄[いぎりすのことばよせ](全209語)が掲載されている。当時の往来物に掲載の片仮名英語とはどのようなものか知りたくてやみ雲に解読の真似事をしてみたところ英文字をイメージ出来なくて困惑するかたわら、見出し語の漢字が今までに見たこともなかった難字やら、思いがけない振り仮名付きの当て字でしばしば立往生するはめに・・・ やむなく中央図書館に駆け込んだ。江戸時代を読む当て字の辞典といはれる『魁本大字類苑』(明治22年刊、谷口松軒著)の復刻版(平成6年、杉本つとむ解説、雄山閣出版)を探し出してくださった。まさに当て字の宝庫。当て字満載に驚いた。
ここでは、戸惑った当て字4例のうち残り2例を挿図として掲げてみた。取り敢えず書き写すと以下の通り
3:47o④對話[こむ可(か)い者(ば)なし]をコンウヱルズヱーシュン≪conversation ≫といふ 注:47o④とは第47丁表第4行のこと(以下同様)
對話[こむ可(か)い者(ば)なし]とは、この読みに初めて出会う・・・『魁本大字類苑』 でみると[武類]の[ムカ]に「○面話ムカツテハナス」「○対面ムカヒアフ」などとある。これでface to face が窺えて有り難い。
4:49u⑨糶賣[せりうり]をオークシュン≪auction≫といふ
糶賣[せりうり]初めてお目にかかる文字、これが「競り売りとは」、この読みを『魁本大字類苑』 でみると「世類」の[セリ]に「○糶賣セリウリ、競買」とある。このような辞書がなければとても確かめられない。
<注>
『萬国通商往来』明治6年(1873)、神奈川県立図書館k670.3/2
『魁本大字類苑』(明治22年刊、谷口松軒著)、復刻版(平成6年、杉本つとむ解説、雄山閣出版)