文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

「英語寄(2/21)」(40o)第40丁表

2009年12月14日 | 文明開化と平仮名英語
 英語寄[いぎりすのことばよせ]は、商売に関係する言葉を寄せ集めた商用英語集のようなもの。『萬国通商往来』(明治6年出板)の第39丁裏から第49丁裏まで全21頁にわたって頭注に掲載されている。
 今回は、その第2回目(2/21)、当時の往来物に掲載の英語を知る上で大へん興味深い。皆さんと共に当時の英語を垣間見て、興味を分かち合えれば幸いです。

 頭注は、それぞれ十行にわたり、「通商」つまり商売にかかわる用語を取り上げ、その英語読みを片仮名で表す。つまり片仮名英語を収録している。

表わし方:「(平仮名による振り仮名付きの漢字)・・・を(片仮名英語)・・・≪≫といふ」≪≫に英文字を補足
 ここでは、振り仮名は[ ]で示し、平仮名の崩し字の読みは()で示す。 崩し字には悩みが尽きない。お気づきの点はご教示を願います。以下、数字は行を示す。

金持[可(か)年(ね)もち]をリッチメン≪richman≫といふ
旅客[たびゝと]をトラウヱレル≪traveler≫といふ
通詞[つうじ]をイントルフレトル≪interpreter≫といふ、かなり難解
来客[らいきやく]をゲスト≪guest≫といふ
上乗[うはのり]をソップルカールゴ≪*≫といふカールゴはどうやら解るもののソップルは不明、注参照
主人[あるじ]をマストル≪master≫といふ
手代[て多(だ)い]をエゼント≪agent≫といふ
管店人[志(し)者(は)い尓(に)ん]をソブリンテンデント≪*≫といふ管店人と書いて「支配人」の読みは驚き、英語読みは見当も付かない、注参照
丁稚[でっち]をワレット≪*≫といふ、英語読み不明、『外国商通言葉集』(刊年不明)には「でつち 本(ぽ)るとる」とある。注参照
小使[こつ可(か)ひ]をスヱルウエント≪servant≫といふ、ジット眺めているうちに綴り字が浮かんでくるが、かなり難解

 注:⑤上乗をヘボン先生の『和英語林集成』で見ると、ウハノリ、上乗、supercargo  とあり、サスガ明解。≪*≫に≪supercargo ≫を補充。

注:⑧管店人の読み「支配人」を『和英語林集成』で見るとsuperintendentとある。司とか頭はsovereignにあるところを見ると、sovereintendent でも意識したのだろうか?識者のご教示を仰ぎたい。

注⑨丁稚[でっち]は『和英語林集成』では shop boy で、ワレットの綴りは依然不明。これも識者のご教示を乞う。

<挿図>
『萬国通商往来』明治6年(1873)、神奈川県立図書館k670.3/2
『和英語林集成』慶応3年(1867)、明治学院大学デジタルアーカイブ、横浜開港資料館D.VIII.7C



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