新イタリアの誘惑

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ボッティチェリとフィレンツェ⑤ ルネサンス絵画の精華「ヴィーナスの誕生」と「春(プリマヴェーラ)」

2018-10-08 | ボッティチェリとフィレンツェ
 ボッティチェリが聖母の絵と共に絶頂期に仕上げた華やかな代表作は、言うまでもなく「ヴィーナスの誕生」(1485年)と「春ープリマヴェーラー」(1482年)の2作品だ。

 まずはヴィーナスの誕生から見て行こう。

 中央に立つヴィーナス。夢見るような甘美さとその奥にメランコリーをも併せ持つ女神だ。

 生れ出た貝殻は意外に大きい。

 左に、抱きあいながら浮遊する西風の神ぜフィロスと大地の女神クロリス。ヴィーナスの周囲にはバラの花びらが舞い踊っている。

 右にはマントを広げてヴィーナスを迎え入れる時の神ホーラ。

 線の画家であるボッティチェリが造形した人物像が、洗練の極に達した絵じゃないだろうかと思う。


 そして春(プリマヴェーラ)。

 愛と美の女神ヴィーナス。その頭上にキューピットが飛んでいる。

 キューピットが矢を射ようとするところには三美神が舞っている。

 三美神とは左から愛、貞節、美の3人の神。

 その左端に立つのは伝言神メルクリウスだ。

 右端の西風の神ゼフィロスが捉えようとしている大地の神クロリスから花が零れ落ち、花の神フローラに変身して行く。

 ロレンツォ豪華王の又従兄弟にあたるロレンツィーノの結婚式を祝う目的で描かれた祝婚画とされる何とも華やかで豪華な作品だ。

 ただ、この絵はずっとカステッロのメディチ家別荘に置かれていて、フィレンツェ中心部のウフィツィ美術館に移されたのは1815年になってからだった。つまり、ボッティチェリの最も香り高い代表作2点が実に330年もの間一般の人の目に触れない個人の別荘に‟秘蔵”されていたことになる。
 そのため、ボッティチェリはいわば忘れられていた画家の1人だった。
 
 美術館での公開後、初めて本格的なボッティチェリ研究が始まった。やがてラファエロ前派の画家たちの注目を集め、イギリスの文明批評家ラスキンによって改めて高い評価を受けてようやく、今日ルネサンス芸術を代表する画家の1人として広く認められるようになったわけだ。


 
 

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