
やっぱり『ウルトラマン』が好きなんだなぁ‥‥。そして、特にこの「恐怖の宇宙線」は「怪獣好きの子どもの夢」が詰まっているので、大切な一編です。だからあまり語りたくはありません‥‥。言葉にしてしまうのが勿体ないようで‥‥。でも、1話分が欠けたままでもおかしいので語りますヨ~。たぶんかなり長くなるかも(^^ゞ
●「恐怖の宇宙線」昭和41年10月23日放映 二次元怪獣ガヴァドン(A,B)登場
制作第14話 放映第15話 脚本:佐々木守 監督:実相寺昭雄
いよいよウルトラシリーズに佐々木守さんが参画しました! 『ウルトラマン』で実相寺昭雄監督が演出を担当するエピソードでは、全ての脚本を佐々木氏が手がけられています。
「完全無欠のヒーロー」を他の脚本家諸氏とは異なる視点で「追い詰める」(笑)、氏の独特なシニカルな視点が、『ウルトラマン』というアンソロジーの幅を広げたと言えるでしょう。(暴走気味に感じることもありますが‥‥^^;) 怪獣を「生物」としてストーリーの中心に置く手法が、子ども心をがっちり掴んでくれました。
そして、実相寺昭雄監督も登板します。佐々木氏の脚本を消化し、特異な映像で紡ぎ上げていく氏の演出は、冷たさを感じる硬質感、不思議なSF感を感じさせてくれます。一方で、どの監督にも負けないコミカルさも表現されています。
実相寺氏は「スペシウム光線」で幕を引くのがお好きではなかったようで、氏の手がけられたエピソードでは一度も登場しません。それらをまとめた『ウルトラマン』の映画がありましたが、その映画にも一度もスペシウム光線は登場しなかったのでしょうか。『ウルトラマン』の映画なのに‥‥^^;
ゲスト出演では、主人公の「ムシバ」を演じられた川田勝明さんが登場。川田さんは放映第11話「宇宙から来た暴れん坊」にも出演され、放映第26話「怪獣殿下(前編)」を経て、放映第33話「禁じられた言葉」で再び主人公「サトル」を演じられるほど、『ウルトラマン』の子役として大活躍しています。(『ウルトラセブン』第43話「第四惑星の悪夢」、そして『戦え!マイティジャック』第2話にも出演されています。)
他の子どもたちの中に、『赤影』の「青影」役、『河童の三平』の「三平」役でお馴染みの金子吉延さんの姿も見られます。
また、土管置き場の管理人(?)役に、昼のよろめきドラマで一世を風靡した二枚目の、『怪奇大作戦』の「的矢所長」役でお馴染みの原保美さんが出演されています。大袈裟なつけ髭を付けて、まるで大泉滉さんのような雰囲気に驚きます。役者さんってスゴイですネ。
キャップが電話を受けたあとの、科特隊員全員を収めたシーンでは、早くもどこかから覗いたように左側と下側が黒く影になり、画面の右上だけに寄った映像になっています。ここから不思議な事件への入り口として、不安定な気持ちにさせられます。
宇宙線と太陽光線の影響で、ムシバが土管に描いた「ガヴァドン(A)」が立体化し、そのうえ巨大になりました。どんな作用が起こったかの科学的な根拠などどうでもよくって、こういう不思議な現象があったという「事実」でストーリーを進めていく潔さ。「『空想』科学」って楽しいです(^o^)/
自分の描いた怪獣が現実のものになったら‥‥。この第15話は、多くの子どもがこんな夢想を持てる、素敵なエピソードですネ。ジャングルジムの上で「ガヴァドンA」の全身を確認して大喜びしているムシバの表情がステキです。
そして、怪獣出現の報に出動する科特隊。目だけがアップになり、キャップの取り憑かれたかのような「撃て! 撃て!」の攻撃命令が、子どもたちの夢を壊す対比として効果的に描かれています。イデもアラシもやる気満々。今回からジェットビートルの攻撃の描写はフラッシュ光となり、連射が可能となっています。
ビートルからの攻撃に苦しそうにするガヴァドン。彼は何もせず、ただ居眠りしているだけなのに‥‥。
一旦攻撃が中止され、夕焼けと、夕日に赤く染まった純白の怪獣‥‥。シュールでのどかな映像です。
‥‥と、突然動き出すガヴァドンAに驚き、フジ隊員に抱きつくイデ。フジ隊員は「しっかりしなさいヨ!」とでも言わんばかりの怒り顔ですが、イヤそうな感じではないんですよネ。ん~、やっぱりこの2人は怪しいなぁ~。そういう展開もあり、ということを意図した演出なのでしょうか。
動き出したガヴァドンAは、何処と無く消えてしまいます。呆気にとられる科特隊の面々。「一番星、見ーつけたー」という子どもの声にちょっと違和感を感じます^^; おそらく次のハヤタのセリフを引き立たせるための演出なのでしょう。
「どういうわけなんだ、こりゃあ‥‥。ヤツは星になったのかなぁ‥‥。」というハヤタのセリフは、ラストへの伏線なのでしょうか。このセリフが、このエピソードでの初めてのハヤタのセリフなのですが、ハヤタが積極的に作戦に参加していない感じがして、子どもの夢をギリギリのところで守っていてくれているように感じます(←贔屓目(^^ゞ)。それを受けてのキャップの「怪獣が星に? バカな! そんなバカな‥‥。」というセリフが、怪獣退治の責任を担っている科特隊のキャップとしての立場を感じさせてくれます。今回のキャップは「子どもの敵」に徹した役割を担わされています^^;
この一連のシーンで流れている哀愁を帯びた劇伴の原版は、行方がわからなくなっているそうです。現在コロムビアから発売されている『ウルトラマン生誕40周年記念 ウルトラサウンド殿堂シリーズ(2) ウルトラマン』には、シネテープから起こされた音楽が収録されています。
基地に戻りパリ本部からの連絡を受けるフジは、手前にイスを置いてその間からのショット。その連絡を受けるキャップとアラシは、画面下半分がデスクの影で真っ黒になった、極端に上に寄ったショット。実相寺昭雄監督らしいアングルですネ。
そして、このシーンでのフジ隊員がやたらと綺麗(*^o^*) 桜井浩子さんって、こんなにステキだったんですヨ。
あれ? ハヤタやアラシは「タカシくんたち」って言ってますネ。ガヴァドンを描いたのはムシバなのに‥‥。タカシがリーダー格で、「グループの下っ端のムシバが描いた絵が実体化した」というところがミソなんですネ。
土管置き場に集まり、ムシバを讃える子どもたち。そしてガヴァドンを強化するべく、デザインを加えていきます。
作戦会議(?)で、ガヴァドンは手出しをしない限り眠っているだけかもしれないとの結論を得て、翌日は様子を見ることに。
「明くる日、子ども達は遠足の日でもないのに早起きだった。」という石坂浩二さんのナレーションがステキです。そうなんですヨ、何かある日は自然に早起きになるんです、子どもっていうのは。
心臓の鼓動音とともに土管から膨れ上がってくるガヴァドンBのシーンにワクワク(^o^) ご丁寧に「眼」には電飾が灯っています。
実体化したガヴァドンBが東京のド真ん中で眠っています。その姿をオフィスビルの窓から覗くサラリーマンたち。窓ガラスにガヴァドンが映っている合成が見事です。そして、こういうシーンを入れようとしたアイディアが素晴らしいです。
「ただ眠っているだけで、わが国の経済生活をメチャメチャに打ち壊す」というのが何とも‥‥。どこにも居場所が無いガヴァドンが可哀想‥‥。
「手出しをしなければ寝ているだけ」に続き、「夜のうちに落書きを消せば」というイデの作戦は、かなりイイところを突いている思うのですが‥‥。ご自身の脚本の矛盾点を、佐々木氏は作品内で自分で指摘していらっしゃいます。そして、「科学特捜隊が落書きなんか消しに行けるか!」と、それを否定してしまうアラシ‥‥。弾薬を一発も使わずに事件の解決をはかるイデの提案は、かなり科学的だと思いますヨ‥‥。
「我々は正々堂々と戦うんだ。」と言う今回のキャップはかなり熱い! 冷静沈着にバルタン星人と対峙しようとしたキャップはどこへ‥‥。
再び夜、ガヴァドンが描かれた土管の前に集まる子どもたち。
「オレたちはオマエにちょっぴりガッカリしている。なぜオマエは寝てばかりいるのか。怪獣といえば、オレたちはもうちょっとカッコのイイものだと信じている。子どもは夜、家を出てはいけないと、パパもママも言う。それをこうしてムリをして付き合ってるんだから、オマエももう少し頑張って欲しい。以上。」
というセリフが泣かせるなぁ! これは子どもの心情そのものですヨ。このセリフを聞いた時に、私は「まったくその通りだ」と深く頷きましたヨ。佐々木氏は「怪獣に込める子どもの気持ち」を子どもに取材されたのでしょうかネェ。
翌朝、ガヴァドンBが再び実体化し戦車隊からの攻撃を受けているのを見て、科特隊からの攻撃を阻止しようとするムシバたち。巻き添えになりそうな子どもたちを救おうと、川に入り足をとられるハヤタ。そこで変身! 「Bタイプ ウルトラマン」の雄姿が初登場です。
ウルトラマンとガヴァドンの戦闘に向かって、「帰れーっ! やめろーっ! 殺さないでーっ!」と罵声を飛ばす子どもたち。これまで「子どもたちのヒーロー」として描かれてきたウルトラマンが、「帰れ」と言われるなんて\(◎o◎)/! 佐々木氏はスゴイことをやらかしました。また、この脚本の制作にGOを出した円谷プロ、金城哲夫氏の懐の深さに驚きます。
子どもたちの声を聞き入れてか、ガヴァドンにとどめを刺さずに宇宙へと連れ去るウルトラマン。「やめろーっ! ‥‥行っちまったぁ‥‥。」と言うムシバの表情が切ない‥‥。
その夜、川原に集まっている子どもたちに「泣くな、子どもたち。毎年七月七日の七夕の夜、きっとガヴァドンに逢えるようにしよう。この星空の中で。」と語りかける石坂浩二ナレーター‥‥ではなくてウルトラマン。7月7日が円谷英二氏の誕生日と知ってのセリフなのでしょうか。それとも「再会」と「星空」からの連想だけなのでしょうか。
ウルトラマンの形に星が輝き、ムシバの「七夕の夜、雨が降ったらどうなるんだヨォ。」というセリフに皮肉が効いていますが、ここで笑いがあって、このエピソードに救いがあるようです。そして星になったガヴァドンも浮かび上がります。そしてその後、「ガヴァドン座」の眼から1つの星が流れます。まるで涙のように。このシーンは脚本には無くて、現場でのアイディアだったそうです。ステキな詩的な感性です。円谷プロってスゴイ!
さらにエンディングでは、子どもたちが落書き三昧の公園に立つ科特隊員。「ムラマツ隊長は、この絵を見ながら心が真っ暗になったのであった‥‥。」(^o^)/ 単に「お涙頂戴」で終わらない、シニカルなラストがイイですネ。
●ガヴァドンA

絵の下手なムシバが描きそうなデザインを目指したものです。
着ぐるみは腹側から被るようになっています。
泣き声(?)は「メガヌロン」に似ていますが、音のトーンが低く厚い感じがするので、新たにつくられたものでしょう。ガラスにマジックを擦り付けてつくられたとのことですが、もっと大きな布のような物であるように感じます。
特殊能力は全くありません。宇宙線と太陽光線の作用によって出現するので、日没とともに消えます。
●ガヴァドンB

着ぐるみの背中に小さなドーナツ状のものがたくさん付いていますが、これは洋服のスナップを貼り付けたのだそうです。
特殊能力はありません。
●「恐怖の宇宙線」昭和41年10月23日放映 二次元怪獣ガヴァドン(A,B)登場
制作第14話 放映第15話 脚本:佐々木守 監督:実相寺昭雄
いよいよウルトラシリーズに佐々木守さんが参画しました! 『ウルトラマン』で実相寺昭雄監督が演出を担当するエピソードでは、全ての脚本を佐々木氏が手がけられています。
「完全無欠のヒーロー」を他の脚本家諸氏とは異なる視点で「追い詰める」(笑)、氏の独特なシニカルな視点が、『ウルトラマン』というアンソロジーの幅を広げたと言えるでしょう。(暴走気味に感じることもありますが‥‥^^;) 怪獣を「生物」としてストーリーの中心に置く手法が、子ども心をがっちり掴んでくれました。
そして、実相寺昭雄監督も登板します。佐々木氏の脚本を消化し、特異な映像で紡ぎ上げていく氏の演出は、冷たさを感じる硬質感、不思議なSF感を感じさせてくれます。一方で、どの監督にも負けないコミカルさも表現されています。
実相寺氏は「スペシウム光線」で幕を引くのがお好きではなかったようで、氏の手がけられたエピソードでは一度も登場しません。それらをまとめた『ウルトラマン』の映画がありましたが、その映画にも一度もスペシウム光線は登場しなかったのでしょうか。『ウルトラマン』の映画なのに‥‥^^;
ゲスト出演では、主人公の「ムシバ」を演じられた川田勝明さんが登場。川田さんは放映第11話「宇宙から来た暴れん坊」にも出演され、放映第26話「怪獣殿下(前編)」を経て、放映第33話「禁じられた言葉」で再び主人公「サトル」を演じられるほど、『ウルトラマン』の子役として大活躍しています。(『ウルトラセブン』第43話「第四惑星の悪夢」、そして『戦え!マイティジャック』第2話にも出演されています。)
他の子どもたちの中に、『赤影』の「青影」役、『河童の三平』の「三平」役でお馴染みの金子吉延さんの姿も見られます。
また、土管置き場の管理人(?)役に、昼のよろめきドラマで一世を風靡した二枚目の、『怪奇大作戦』の「的矢所長」役でお馴染みの原保美さんが出演されています。大袈裟なつけ髭を付けて、まるで大泉滉さんのような雰囲気に驚きます。役者さんってスゴイですネ。
キャップが電話を受けたあとの、科特隊員全員を収めたシーンでは、早くもどこかから覗いたように左側と下側が黒く影になり、画面の右上だけに寄った映像になっています。ここから不思議な事件への入り口として、不安定な気持ちにさせられます。
宇宙線と太陽光線の影響で、ムシバが土管に描いた「ガヴァドン(A)」が立体化し、そのうえ巨大になりました。どんな作用が起こったかの科学的な根拠などどうでもよくって、こういう不思議な現象があったという「事実」でストーリーを進めていく潔さ。「『空想』科学」って楽しいです(^o^)/
自分の描いた怪獣が現実のものになったら‥‥。この第15話は、多くの子どもがこんな夢想を持てる、素敵なエピソードですネ。ジャングルジムの上で「ガヴァドンA」の全身を確認して大喜びしているムシバの表情がステキです。
そして、怪獣出現の報に出動する科特隊。目だけがアップになり、キャップの取り憑かれたかのような「撃て! 撃て!」の攻撃命令が、子どもたちの夢を壊す対比として効果的に描かれています。イデもアラシもやる気満々。今回からジェットビートルの攻撃の描写はフラッシュ光となり、連射が可能となっています。
ビートルからの攻撃に苦しそうにするガヴァドン。彼は何もせず、ただ居眠りしているだけなのに‥‥。
一旦攻撃が中止され、夕焼けと、夕日に赤く染まった純白の怪獣‥‥。シュールでのどかな映像です。
‥‥と、突然動き出すガヴァドンAに驚き、フジ隊員に抱きつくイデ。フジ隊員は「しっかりしなさいヨ!」とでも言わんばかりの怒り顔ですが、イヤそうな感じではないんですよネ。ん~、やっぱりこの2人は怪しいなぁ~。そういう展開もあり、ということを意図した演出なのでしょうか。
動き出したガヴァドンAは、何処と無く消えてしまいます。呆気にとられる科特隊の面々。「一番星、見ーつけたー」という子どもの声にちょっと違和感を感じます^^; おそらく次のハヤタのセリフを引き立たせるための演出なのでしょう。
「どういうわけなんだ、こりゃあ‥‥。ヤツは星になったのかなぁ‥‥。」というハヤタのセリフは、ラストへの伏線なのでしょうか。このセリフが、このエピソードでの初めてのハヤタのセリフなのですが、ハヤタが積極的に作戦に参加していない感じがして、子どもの夢をギリギリのところで守っていてくれているように感じます(←贔屓目(^^ゞ)。それを受けてのキャップの「怪獣が星に? バカな! そんなバカな‥‥。」というセリフが、怪獣退治の責任を担っている科特隊のキャップとしての立場を感じさせてくれます。今回のキャップは「子どもの敵」に徹した役割を担わされています^^;
この一連のシーンで流れている哀愁を帯びた劇伴の原版は、行方がわからなくなっているそうです。現在コロムビアから発売されている『ウルトラマン生誕40周年記念 ウルトラサウンド殿堂シリーズ(2) ウルトラマン』には、シネテープから起こされた音楽が収録されています。
基地に戻りパリ本部からの連絡を受けるフジは、手前にイスを置いてその間からのショット。その連絡を受けるキャップとアラシは、画面下半分がデスクの影で真っ黒になった、極端に上に寄ったショット。実相寺昭雄監督らしいアングルですネ。
そして、このシーンでのフジ隊員がやたらと綺麗(*^o^*) 桜井浩子さんって、こんなにステキだったんですヨ。
あれ? ハヤタやアラシは「タカシくんたち」って言ってますネ。ガヴァドンを描いたのはムシバなのに‥‥。タカシがリーダー格で、「グループの下っ端のムシバが描いた絵が実体化した」というところがミソなんですネ。
土管置き場に集まり、ムシバを讃える子どもたち。そしてガヴァドンを強化するべく、デザインを加えていきます。
作戦会議(?)で、ガヴァドンは手出しをしない限り眠っているだけかもしれないとの結論を得て、翌日は様子を見ることに。
「明くる日、子ども達は遠足の日でもないのに早起きだった。」という石坂浩二さんのナレーションがステキです。そうなんですヨ、何かある日は自然に早起きになるんです、子どもっていうのは。
心臓の鼓動音とともに土管から膨れ上がってくるガヴァドンBのシーンにワクワク(^o^) ご丁寧に「眼」には電飾が灯っています。
実体化したガヴァドンBが東京のド真ん中で眠っています。その姿をオフィスビルの窓から覗くサラリーマンたち。窓ガラスにガヴァドンが映っている合成が見事です。そして、こういうシーンを入れようとしたアイディアが素晴らしいです。
「ただ眠っているだけで、わが国の経済生活をメチャメチャに打ち壊す」というのが何とも‥‥。どこにも居場所が無いガヴァドンが可哀想‥‥。
「手出しをしなければ寝ているだけ」に続き、「夜のうちに落書きを消せば」というイデの作戦は、かなりイイところを突いている思うのですが‥‥。ご自身の脚本の矛盾点を、佐々木氏は作品内で自分で指摘していらっしゃいます。そして、「科学特捜隊が落書きなんか消しに行けるか!」と、それを否定してしまうアラシ‥‥。弾薬を一発も使わずに事件の解決をはかるイデの提案は、かなり科学的だと思いますヨ‥‥。
「我々は正々堂々と戦うんだ。」と言う今回のキャップはかなり熱い! 冷静沈着にバルタン星人と対峙しようとしたキャップはどこへ‥‥。
再び夜、ガヴァドンが描かれた土管の前に集まる子どもたち。
「オレたちはオマエにちょっぴりガッカリしている。なぜオマエは寝てばかりいるのか。怪獣といえば、オレたちはもうちょっとカッコのイイものだと信じている。子どもは夜、家を出てはいけないと、パパもママも言う。それをこうしてムリをして付き合ってるんだから、オマエももう少し頑張って欲しい。以上。」
というセリフが泣かせるなぁ! これは子どもの心情そのものですヨ。このセリフを聞いた時に、私は「まったくその通りだ」と深く頷きましたヨ。佐々木氏は「怪獣に込める子どもの気持ち」を子どもに取材されたのでしょうかネェ。
翌朝、ガヴァドンBが再び実体化し戦車隊からの攻撃を受けているのを見て、科特隊からの攻撃を阻止しようとするムシバたち。巻き添えになりそうな子どもたちを救おうと、川に入り足をとられるハヤタ。そこで変身! 「Bタイプ ウルトラマン」の雄姿が初登場です。
ウルトラマンとガヴァドンの戦闘に向かって、「帰れーっ! やめろーっ! 殺さないでーっ!」と罵声を飛ばす子どもたち。これまで「子どもたちのヒーロー」として描かれてきたウルトラマンが、「帰れ」と言われるなんて\(◎o◎)/! 佐々木氏はスゴイことをやらかしました。また、この脚本の制作にGOを出した円谷プロ、金城哲夫氏の懐の深さに驚きます。
子どもたちの声を聞き入れてか、ガヴァドンにとどめを刺さずに宇宙へと連れ去るウルトラマン。「やめろーっ! ‥‥行っちまったぁ‥‥。」と言うムシバの表情が切ない‥‥。
その夜、川原に集まっている子どもたちに「泣くな、子どもたち。毎年七月七日の七夕の夜、きっとガヴァドンに逢えるようにしよう。この星空の中で。」と語りかける石坂浩二ナレーター‥‥ではなくてウルトラマン。7月7日が円谷英二氏の誕生日と知ってのセリフなのでしょうか。それとも「再会」と「星空」からの連想だけなのでしょうか。
ウルトラマンの形に星が輝き、ムシバの「七夕の夜、雨が降ったらどうなるんだヨォ。」というセリフに皮肉が効いていますが、ここで笑いがあって、このエピソードに救いがあるようです。そして星になったガヴァドンも浮かび上がります。そしてその後、「ガヴァドン座」の眼から1つの星が流れます。まるで涙のように。このシーンは脚本には無くて、現場でのアイディアだったそうです。ステキな詩的な感性です。円谷プロってスゴイ!
さらにエンディングでは、子どもたちが落書き三昧の公園に立つ科特隊員。「ムラマツ隊長は、この絵を見ながら心が真っ暗になったのであった‥‥。」(^o^)/ 単に「お涙頂戴」で終わらない、シニカルなラストがイイですネ。
●ガヴァドンA

絵の下手なムシバが描きそうなデザインを目指したものです。
着ぐるみは腹側から被るようになっています。
泣き声(?)は「メガヌロン」に似ていますが、音のトーンが低く厚い感じがするので、新たにつくられたものでしょう。ガラスにマジックを擦り付けてつくられたとのことですが、もっと大きな布のような物であるように感じます。
特殊能力は全くありません。宇宙線と太陽光線の作用によって出現するので、日没とともに消えます。
●ガヴァドンB

着ぐるみの背中に小さなドーナツ状のものがたくさん付いていますが、これは洋服のスナップを貼り付けたのだそうです。
特殊能力はありません。
とってもプリチー。
だって寝てばかりの怪獣だもの。
外斗さん、とても詳しいレビューありがとうございました。
子供たちの昼間だけの夢の怪獣・・・か。
>子供たちの昼間だけの夢の怪獣・・・か。
ステキな表現ですネ。そして「毎年一回逢える夢」へと姿を変えました。
「当時は自分も実相寺監督も自主企画をことごとくボツにされ、何とか「ウルトラマン」というステージで自分を表現したかった。
その勢いがスペシウム光線の未使用、マンの多数変身など、他の監督・脚本家の作品との差別化に繋がったのかもしれないが、自分達はことさらその部分だけを意識、強調したかった訳ではない。あくまでドラマの要求に従っただけ。」
そんな主旨でした。個性溢れる二人のクリエイターが作り上げたウルトラマン世界は、偶然にも光の超人から光線技を奪ってしまったようですね。
そこを「ドラマの要求」と言い切るあたり、やはりただ者ではありません。ひょっとして当時の彼らの勢いなら、マンに別の必殺技を与えていたかもしれませんね(笑)。
本文でも触れたように、「いつもスペシウム光線では面白みが無い。」というような主旨の実相寺氏の記述を、私は何かで読んだ記憶がありまして。新必殺技が生まれる可能性はあったのかもしれませんネ。
この「恐怖の宇宙線」の他に、「無限へのパスポート」「噴煙突破せよ」「地上破壊工作」「怪彗星ツイフオン」など、ストーリーと怪獣デザインで好きなエピソードが目白押しなんです。「グビラ」もデザインは好きです。
そして「バルタン星人」「ザラブ星人」といったように、宇宙人が『ウルトラマン』に登場するようになってきました。
第2クールは思い入れたっぷりに語ることでしょう。
Aの足音は板ガラスにマジックペンを階段の様に書いていく音を録音したものだそうです。
第30話「まぼろしの雪山」が見当たらないようですが…
「まぼろしの雪山」は次に扱う予定なのですが、私自身があまり見ないエビなので(見るのが辛い‥‥)、よっぽど気持ちの整理がつかないと書けません‥‥。どうかもうしばらくお待ちください。