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先日の「LET IT BE」の記事を書くのに1万文字の投稿制限を越えてしまい、推敲するのに何日もかかってしまいました(^^ゞ
さて、最近はBeatlesがマイ・ブームとなっております。“LET IT BE”を採り上げたら、“ABBEY ROAD”について触れずにおくことはできません。というわけで、興味の無い方にはつまらない方向へと突き進んでまいります‥‥。
“GET BACK”が完成することなく、実質的にLennonが脱退しているような状況が続いている中で、McCartneyはBeatlesとしての最後のアルバムを制作したい旨をMartinに伝えます。グループの人間関係がバラバラになっている状況でのアルバム制作の申し出に、Martinはひどく驚き、また完成を危惧したようです。メンバーの身勝手な振る舞いや対立に、EMIスタジオ(アビーロード・スタジオ)のスタッフも辟易としていたのです。
しかし、いざレコーディングが始まってみると、“GET BACK”セッションでの倦怠感はそこには無く、不思議な結束力で制作が進んでいきます。
レコーディングの開始時期は、実は不明瞭です。“GET BACK”のレコーディングが終わって間もない'69年2月22日、独立スタジオのTridentで‘I Want You’のレコーディングが始められました。しかしこの時期はまだ“GET BACK”のリリースに向けてミキシングや編集が行われていましたし、映画に登場する‘Maxwell's Silver Hammer’‘Octopus's Garden’、そして映画には演奏シーンはありませんが、‘She Came In Through The Bathroom Window’などは“GET BACK”のセッションでも採り上げられていたからです。
都市伝説で、「“ABBEY ROAD”の前に“HOT AS SUN”というアルバムのセッションがあったがマスター・テープが盗難に遭い、莫大な身代金(?)を払って取り戻したのに、その輸送途中の空港のX線検査で消失してしまった」というものがあります。「幻のアルバム」と言われていますが、“GET BACK”セッションが1月31日に終わって2月22日には‘I Want You’のレコーディングが始まっていることを考えると、これは「偽情報」ですネ。
アルバム“ABBEY ROAD”の内容は、さらに高度になった曲作りと演奏、B面のメドレーのアイディアなど、日本版LPのタスキにあった「A面の野性味、B面の叙情性‥‥」というコピーが的を射ていました。‘Come Together’‘Something’‘Maxwell's Silver Hammer’‘Oh! Darling’‘Octopus's Garden’‘I Want You’と続く怒涛の楽曲! 凄味のあるLennon、練り上げられたMcCartney、甘く切ないHarrisonに加え、とぼけた味わいのRingoまでが曲作りに参加し、メンバー全員の集大成の趣きがあります。
そしてB面の‘Here Comes The Sun’‘Because’と名曲が続き、大メドレーへ! 単に短い曲が並んでいるだけではなく、McCartneyによって組曲風に仕上げる卓越したアイディアも盛り込まれています。そして‘The End’で聴かせるメンバーそれぞれのソロ合戦! 最後のアルバム(制作が頓挫して後回しになった“LET IT BE”を除く)の最後の楽曲(付け足しの‘Her Majesty’を除く)でメンバーが存在感をアピールするなんて、素晴らしい演出・幕引きです‥‥。
また、このアルバムで特筆される特徴に、開発されたばかりの「シンセサイザーの導入」が挙げられます。これまでにも画期的なレコーディング法や新しい楽器を導入してきたBeatlesですが、彼らの解散後にポップ音楽の中心となるシンセサイザーをいち早く導入していたというのは、彼らの革新性はまだまだ健在だということを示しているでしょう。
アルバム・ジャケットも有名なものです。“Everest”というタイトルに決まりかけ、チベットで写真撮影が行われそうになった時、「それなら、このスタジオの前の道で写真をとって、タイトルを“ABBEY ROAD”にすればイイじゃん。」というMcCartneyのセリフで決まったとか。
このアルバムが発売された直後、裸足のMcCartneyの姿も根拠の一つとして、「McCartney死亡説」なる噂が世界中を駆け巡りました。この噂の根拠は‘Strawberry Fields Forever’をはじめとする“SGT. PEPPER”まで遡ります。(詳しくは私のHPで(^o^)/)
●Come Together
McCartneyのズ太く流麗なベース、Ringoの6連符のタムタムがタイトなドラミング、Harrisonの乾いたギター、そしてLennonの鋭利に研ぎ澄まされたヴォーカル。4人が揃うと、こんなにも素晴らしいグルーヴが生まれることを見せ付けられる1曲です。
Chuck Berryの‘You Can't Catch Me’の盗作問題が浮上しましたが、似ていると言えば似ているという程度で、それは譜割りの問題だけではないでしょうか。
●Something
メンバーのだれもが認めるHarrisonによる名曲です。Aメロも素敵ですが、大サビの転調に高揚感があって、私も大好きな1曲です。
なぜかHarrisonの楽曲ではMcCartneyのベースの名演が多いのですが、ここでもMcCartneyが卓越した演奏を聴かせます。Martinによるストリングスも控えめながら表情豊かで、楽曲の雰囲気を高めています。Ringoは大サビでかなり複雑なパターンを叩いています。この曲にもBilly Prestonが参加しています。
●Maxwell's Silver Hammer
狂気じみた内容を、ほのぼのとしたメロディに乗せるとは‥‥。
McCartneyがリボン・コントローラーでシンセを演奏し、エンディングに当時としては風変わりな音(ミドルではキーボードによるシンセの低音のフレーズ)を加えています。また、Ringoが金床を叩いています。
●Oh! Darling
McCartneyのシャウトが冴えるロッカ・バラード。コーラスも素晴らしい。
ピアノはLennon、ベースがMcCartney、レズリー・スピーカー(オルガン用の回転スピーカー)を通したギターがHarrison。Ringoはサビの前では驚異の12連符(!)を叩いて盛り上げます。
McCartneyはこのヴォーカルを何度も録り直したそうです。しかしLennonに言わせれば、「McCartneyにセンスがあったらオレに歌わせただろう。」ということらしいですが‥‥。Lennonはけっこうお気に入りの楽曲だったようです。
●Octopus's Garden
‘Yellow Submarine’の続編的な楽曲で、Ringoの作曲。ほのぼのとして幸せ一杯の歌です。やはり‘Yellow Submarine’のような手作りの「ブクブク」というSEが挿入されています。
リード・ギターはHarrisonで、安定した演奏です。
●I Want You (She's So Heavy)
シンプルゆえに迫ってくる気迫があります。LennonとHarrisonが何度もギターのリフを重ねてブ厚い音を作っています。
後半はLennonによるシンセのホワイト・ノイズが鳴りまくり、突然終わります。以前は「マスターテープの長さ一杯まで収録されたため」と言われていましたが、これはLennonが意図的にこの長さで切ったそうです。
●Here Comes The Sun
A面最後の‘I Want You’の凄まじさから一転して、B面1曲目は爽やかなアコギで幕開けです。Harrisonがアップルの経営に疲れて、Eric Claptonの家の庭でのんびりしている時に作ったそうです。
イントロの無音階の下降音、ミドルの“Sun, sun, sun, here it comes”の部分のリフ、そして第3ヴァースの口笛のようなオブリガードに、Harrisonによるシンセが導入されています。
Lennonは交通事故のために、この曲のレコーディングには参加していません。
●Because
Lennonが、Yokoの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」に触発され、コード進行を逆にして作った楽曲です。
イントロはMartinによるエレクトリック・ハープシコード。ギターはLennon。アウトロにはHarrisonによるシンセが挿入されています。
Lennon、McCartney、Harrisonの3人によるコーラスは3回レコーディングされ、合計で9部のコーラスとなっています。解散間際のバンドとは思えない絶品のハーモニーです。“ANTHOLOGY 3”には伴奏を消したヴァージョンが収録されていますので、このコーラスをよりじっくりと堪能できます。
このコーラスを聴く限りでは、本当に解散寸前のグループなのでしょうか‥‥。
●You Never Give Me Your Money
いよいよB面大メドレーの始まり!
Lennonの‘Happiness Is A Warm Gun’に衝撃を受けた、俗に「Warm Gun症候群」と揶揄される、McCartneyによる短い断片の展開の楽曲です。この流れには名作‘Band On The Run’も含まれると言われます。しかし、この‘You Never Give Me Your Money’は傑作であることには違いありません!
導入部のピアノの湿り気のある響き、Lennonによるファズをかけたリード・ギターがロマンチックです。ここのコード進行は「Am7 Dm7 G7 Cmaj7 Fmaj7 E7 Am7」というもので、この進行がB面のメドレーの鍵となります。
“But oh that magic feeling”のHarrisonによるギターのリフが美しいです。“Came true today”から“1 2 3 4 5 6 7, all good children go to heaven”への流れも胸が熱くなる展開です。ファズをかけたリード・ギターはLennon。
●Sun King
仮題を‘Here Comes The Sun’と紛らわしい‘Here Comes The Sun King’といいます。
前曲の盛り上がりから一転、静かに厳かな雰囲気で始まります。いきなり転調する最初のコーラスのハーモニーとリード・ギターの響きがロマンチックです。
●Mean Mr. Mustard
またまた一転して下世話な歌に。‘Sun King’とは続けて演奏されてレコーディングされました。
最後の3拍子の「E C7 B7 C7 C♯7」という流れが、次の‘Polythene Pam’の「D A E」というイントロにつながる曲作りは見事!(最初の案では、この次には‘Her Majesty’が続いていたのですが‥‥。)
●Polythene Pam
Lennonによる激しいアコギのカッティングがカッコいい! Lennonの楽曲は3曲続けて人名がタイトルになっているのも面白いです。
Ringoが激しいドラミングを披露しています。リード・ギターはHarrison。
次の‘She Came In Through The Bathroom Window’と続けてレコーディングされました。
●She Came In Through The Bathroom Window
魅力的なリード・ギター(‘Polythene Pam’からの続きなので、もちろんHarrison)が続いた後、半音ずつ下がるところからこの曲に突入します。曲全体でヴォーカルと呼応するリード・ギターのフレーズと音色がカッコいいです。
曲のコード進行が凝っていて、“Didn't anybody tell her”からは同主音のマイナーに転調します。
ここでメドレーが一旦終わります。
●Golden Slumbers
再び切ない楽曲でメドレーの再開。この曲の冒頭は「Am7 Dm G7 C E7 Am Fmaj7 G7 C」というコード進行で、‘You Never Give Me Your Money’を想起させるようになっています。こんな仕掛けが、‘Carry That Weight’にもう一度‘You Never Give Me Your Money’のメロディが現れる以上に一体感をもたらし、組曲としての完成度を増しています。
ストリングスが優しいオブリガードを奏でています。
●Carry That Weight
Lennonが交通事故で参加できなかったのが悔やまれる、ユニゾンのコーラスで始まるメッセージ性の高い楽曲。ここは4人全員で歌って欲しかったです。それにしてもRingoの声が大きい!
中間部に挟まれる‘You Never Give Me Your Money’のメロディの反復に、胸が熱くなります。
●The End
最後のアルバムの最後の歌が‘The End’とは!
まずはRingoのソロ! 他のだれでもない、Ringoらしいソロです。
そしてギター・バトル! 2小節ずつ、McCartney、Harrison、Lennonの順に3回ずつ演奏しています。ハンマリング・オン、プリング・オフを駆使するMcCartney、チョーキングやスライドでフレーズ感たっぷりのHarrison、思い切り歪ませて、低音を中心に人を食ったフレーズのLennon。
それぞれの持ち味が活かされた演奏に、この素晴らしい4人のミュージシャンが解散寸前のグループだとは信じられない一体感を感じます‥‥。
そして最後に“And in the end, the love you take is equal to the love you make”というメッセージを残して終わります‥‥。
●Her Majesty
20秒の空白のあとに、突然大音響で始まるのでいつも驚いてしまいます。元は‘Mean Mr. Mustard’のあとに続いていたので、その最後の音が残ったものです。「20秒の空白」は、切り離した際に頭にリーダー・テープを付けて、マスター・テープの最後に貼り付けてあったからで、偶然の産物です。このいかにも「追加」ぽい雰囲気をMcCartneyが気に入って、そのままレコードになりました。
‘Mean Mr. Mustard’との繋がりも、この‘Her Majesty’よりも‘Polythene Pam’の方がピッタリだと感じられます。偶然がより良い結果に結びつくのもBeatlesらしさでしょう。
演奏も歌もMcCartneyが弾き語りでレコーディングしたものです。
“ABBEY ROAD”は、傑作を生み続けたバンドが、解散間際の最後に生み出した、世紀の最高傑作だと思います。
同時期のセッションで、次のシングルもレコーディングされました。
●The Ballad Of John And Yoko
LennonとMcCartneyの2人だけでレコーディングされました。Lennonがアコギ、2つのリード・ギター、McCartneyがドラムス、ベース、ピアノ、マラカスを担当しました。手早いレコーディングで、ミキシングまでを8時間半で終わらせたそうです。
●Old Brown Shoe
それほど重要な楽曲とも思えませんが、なぜか「青盤」(“1967-1970”)に収録されました。
ベースとギターのユニゾンがカッコいいです。ピアノとベースがMcCartney、リード・ギターがHarrison、Lennonがハモンド・オルガンを担当しています。
モントセラト島救援コンサートより
Golden Slumbers - Carry That Weight - The End
ここでのメンバーはMark Knopfler、Eric Clapton、Phil Collins、そして指揮はGeorge Martin。もちろんヴォーカルはMcCartney。
さて、最近はBeatlesがマイ・ブームとなっております。“LET IT BE”を採り上げたら、“ABBEY ROAD”について触れずにおくことはできません。というわけで、興味の無い方にはつまらない方向へと突き進んでまいります‥‥。
“GET BACK”が完成することなく、実質的にLennonが脱退しているような状況が続いている中で、McCartneyはBeatlesとしての最後のアルバムを制作したい旨をMartinに伝えます。グループの人間関係がバラバラになっている状況でのアルバム制作の申し出に、Martinはひどく驚き、また完成を危惧したようです。メンバーの身勝手な振る舞いや対立に、EMIスタジオ(アビーロード・スタジオ)のスタッフも辟易としていたのです。
しかし、いざレコーディングが始まってみると、“GET BACK”セッションでの倦怠感はそこには無く、不思議な結束力で制作が進んでいきます。
レコーディングの開始時期は、実は不明瞭です。“GET BACK”のレコーディングが終わって間もない'69年2月22日、独立スタジオのTridentで‘I Want You’のレコーディングが始められました。しかしこの時期はまだ“GET BACK”のリリースに向けてミキシングや編集が行われていましたし、映画に登場する‘Maxwell's Silver Hammer’‘Octopus's Garden’、そして映画には演奏シーンはありませんが、‘She Came In Through The Bathroom Window’などは“GET BACK”のセッションでも採り上げられていたからです。
都市伝説で、「“ABBEY ROAD”の前に“HOT AS SUN”というアルバムのセッションがあったがマスター・テープが盗難に遭い、莫大な身代金(?)を払って取り戻したのに、その輸送途中の空港のX線検査で消失してしまった」というものがあります。「幻のアルバム」と言われていますが、“GET BACK”セッションが1月31日に終わって2月22日には‘I Want You’のレコーディングが始まっていることを考えると、これは「偽情報」ですネ。
アルバム“ABBEY ROAD”の内容は、さらに高度になった曲作りと演奏、B面のメドレーのアイディアなど、日本版LPのタスキにあった「A面の野性味、B面の叙情性‥‥」というコピーが的を射ていました。‘Come Together’‘Something’‘Maxwell's Silver Hammer’‘Oh! Darling’‘Octopus's Garden’‘I Want You’と続く怒涛の楽曲! 凄味のあるLennon、練り上げられたMcCartney、甘く切ないHarrisonに加え、とぼけた味わいのRingoまでが曲作りに参加し、メンバー全員の集大成の趣きがあります。
そしてB面の‘Here Comes The Sun’‘Because’と名曲が続き、大メドレーへ! 単に短い曲が並んでいるだけではなく、McCartneyによって組曲風に仕上げる卓越したアイディアも盛り込まれています。そして‘The End’で聴かせるメンバーそれぞれのソロ合戦! 最後のアルバム(制作が頓挫して後回しになった“LET IT BE”を除く)の最後の楽曲(付け足しの‘Her Majesty’を除く)でメンバーが存在感をアピールするなんて、素晴らしい演出・幕引きです‥‥。
また、このアルバムで特筆される特徴に、開発されたばかりの「シンセサイザーの導入」が挙げられます。これまでにも画期的なレコーディング法や新しい楽器を導入してきたBeatlesですが、彼らの解散後にポップ音楽の中心となるシンセサイザーをいち早く導入していたというのは、彼らの革新性はまだまだ健在だということを示しているでしょう。
アルバム・ジャケットも有名なものです。“Everest”というタイトルに決まりかけ、チベットで写真撮影が行われそうになった時、「それなら、このスタジオの前の道で写真をとって、タイトルを“ABBEY ROAD”にすればイイじゃん。」というMcCartneyのセリフで決まったとか。
このアルバムが発売された直後、裸足のMcCartneyの姿も根拠の一つとして、「McCartney死亡説」なる噂が世界中を駆け巡りました。この噂の根拠は‘Strawberry Fields Forever’をはじめとする“SGT. PEPPER”まで遡ります。(詳しくは私のHPで(^o^)/)
●Come Together
McCartneyのズ太く流麗なベース、Ringoの6連符のタムタムがタイトなドラミング、Harrisonの乾いたギター、そしてLennonの鋭利に研ぎ澄まされたヴォーカル。4人が揃うと、こんなにも素晴らしいグルーヴが生まれることを見せ付けられる1曲です。
Chuck Berryの‘You Can't Catch Me’の盗作問題が浮上しましたが、似ていると言えば似ているという程度で、それは譜割りの問題だけではないでしょうか。
●Something
メンバーのだれもが認めるHarrisonによる名曲です。Aメロも素敵ですが、大サビの転調に高揚感があって、私も大好きな1曲です。
なぜかHarrisonの楽曲ではMcCartneyのベースの名演が多いのですが、ここでもMcCartneyが卓越した演奏を聴かせます。Martinによるストリングスも控えめながら表情豊かで、楽曲の雰囲気を高めています。Ringoは大サビでかなり複雑なパターンを叩いています。この曲にもBilly Prestonが参加しています。
●Maxwell's Silver Hammer
狂気じみた内容を、ほのぼのとしたメロディに乗せるとは‥‥。
McCartneyがリボン・コントローラーでシンセを演奏し、エンディングに当時としては風変わりな音(ミドルではキーボードによるシンセの低音のフレーズ)を加えています。また、Ringoが金床を叩いています。
●Oh! Darling
McCartneyのシャウトが冴えるロッカ・バラード。コーラスも素晴らしい。
ピアノはLennon、ベースがMcCartney、レズリー・スピーカー(オルガン用の回転スピーカー)を通したギターがHarrison。Ringoはサビの前では驚異の12連符(!)を叩いて盛り上げます。
McCartneyはこのヴォーカルを何度も録り直したそうです。しかしLennonに言わせれば、「McCartneyにセンスがあったらオレに歌わせただろう。」ということらしいですが‥‥。Lennonはけっこうお気に入りの楽曲だったようです。
●Octopus's Garden
‘Yellow Submarine’の続編的な楽曲で、Ringoの作曲。ほのぼのとして幸せ一杯の歌です。やはり‘Yellow Submarine’のような手作りの「ブクブク」というSEが挿入されています。
リード・ギターはHarrisonで、安定した演奏です。
●I Want You (She's So Heavy)
シンプルゆえに迫ってくる気迫があります。LennonとHarrisonが何度もギターのリフを重ねてブ厚い音を作っています。
後半はLennonによるシンセのホワイト・ノイズが鳴りまくり、突然終わります。以前は「マスターテープの長さ一杯まで収録されたため」と言われていましたが、これはLennonが意図的にこの長さで切ったそうです。
●Here Comes The Sun
A面最後の‘I Want You’の凄まじさから一転して、B面1曲目は爽やかなアコギで幕開けです。Harrisonがアップルの経営に疲れて、Eric Claptonの家の庭でのんびりしている時に作ったそうです。
イントロの無音階の下降音、ミドルの“Sun, sun, sun, here it comes”の部分のリフ、そして第3ヴァースの口笛のようなオブリガードに、Harrisonによるシンセが導入されています。
Lennonは交通事故のために、この曲のレコーディングには参加していません。
●Because
Lennonが、Yokoの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」に触発され、コード進行を逆にして作った楽曲です。
イントロはMartinによるエレクトリック・ハープシコード。ギターはLennon。アウトロにはHarrisonによるシンセが挿入されています。
Lennon、McCartney、Harrisonの3人によるコーラスは3回レコーディングされ、合計で9部のコーラスとなっています。解散間際のバンドとは思えない絶品のハーモニーです。“ANTHOLOGY 3”には伴奏を消したヴァージョンが収録されていますので、このコーラスをよりじっくりと堪能できます。
このコーラスを聴く限りでは、本当に解散寸前のグループなのでしょうか‥‥。
●You Never Give Me Your Money
いよいよB面大メドレーの始まり!
Lennonの‘Happiness Is A Warm Gun’に衝撃を受けた、俗に「Warm Gun症候群」と揶揄される、McCartneyによる短い断片の展開の楽曲です。この流れには名作‘Band On The Run’も含まれると言われます。しかし、この‘You Never Give Me Your Money’は傑作であることには違いありません!
導入部のピアノの湿り気のある響き、Lennonによるファズをかけたリード・ギターがロマンチックです。ここのコード進行は「Am7 Dm7 G7 Cmaj7 Fmaj7 E7 Am7」というもので、この進行がB面のメドレーの鍵となります。
“But oh that magic feeling”のHarrisonによるギターのリフが美しいです。“Came true today”から“1 2 3 4 5 6 7, all good children go to heaven”への流れも胸が熱くなる展開です。ファズをかけたリード・ギターはLennon。
●Sun King
仮題を‘Here Comes The Sun’と紛らわしい‘Here Comes The Sun King’といいます。
前曲の盛り上がりから一転、静かに厳かな雰囲気で始まります。いきなり転調する最初のコーラスのハーモニーとリード・ギターの響きがロマンチックです。
●Mean Mr. Mustard
またまた一転して下世話な歌に。‘Sun King’とは続けて演奏されてレコーディングされました。
最後の3拍子の「E C7 B7 C7 C♯7」という流れが、次の‘Polythene Pam’の「D A E」というイントロにつながる曲作りは見事!(最初の案では、この次には‘Her Majesty’が続いていたのですが‥‥。)
●Polythene Pam
Lennonによる激しいアコギのカッティングがカッコいい! Lennonの楽曲は3曲続けて人名がタイトルになっているのも面白いです。
Ringoが激しいドラミングを披露しています。リード・ギターはHarrison。
次の‘She Came In Through The Bathroom Window’と続けてレコーディングされました。
●She Came In Through The Bathroom Window
魅力的なリード・ギター(‘Polythene Pam’からの続きなので、もちろんHarrison)が続いた後、半音ずつ下がるところからこの曲に突入します。曲全体でヴォーカルと呼応するリード・ギターのフレーズと音色がカッコいいです。
曲のコード進行が凝っていて、“Didn't anybody tell her”からは同主音のマイナーに転調します。
ここでメドレーが一旦終わります。
●Golden Slumbers
再び切ない楽曲でメドレーの再開。この曲の冒頭は「Am7 Dm G7 C E7 Am Fmaj7 G7 C」というコード進行で、‘You Never Give Me Your Money’を想起させるようになっています。こんな仕掛けが、‘Carry That Weight’にもう一度‘You Never Give Me Your Money’のメロディが現れる以上に一体感をもたらし、組曲としての完成度を増しています。
ストリングスが優しいオブリガードを奏でています。
●Carry That Weight
Lennonが交通事故で参加できなかったのが悔やまれる、ユニゾンのコーラスで始まるメッセージ性の高い楽曲。ここは4人全員で歌って欲しかったです。それにしてもRingoの声が大きい!
中間部に挟まれる‘You Never Give Me Your Money’のメロディの反復に、胸が熱くなります。
●The End
最後のアルバムの最後の歌が‘The End’とは!
まずはRingoのソロ! 他のだれでもない、Ringoらしいソロです。
そしてギター・バトル! 2小節ずつ、McCartney、Harrison、Lennonの順に3回ずつ演奏しています。ハンマリング・オン、プリング・オフを駆使するMcCartney、チョーキングやスライドでフレーズ感たっぷりのHarrison、思い切り歪ませて、低音を中心に人を食ったフレーズのLennon。
それぞれの持ち味が活かされた演奏に、この素晴らしい4人のミュージシャンが解散寸前のグループだとは信じられない一体感を感じます‥‥。
そして最後に“And in the end, the love you take is equal to the love you make”というメッセージを残して終わります‥‥。
●Her Majesty
20秒の空白のあとに、突然大音響で始まるのでいつも驚いてしまいます。元は‘Mean Mr. Mustard’のあとに続いていたので、その最後の音が残ったものです。「20秒の空白」は、切り離した際に頭にリーダー・テープを付けて、マスター・テープの最後に貼り付けてあったからで、偶然の産物です。このいかにも「追加」ぽい雰囲気をMcCartneyが気に入って、そのままレコードになりました。
‘Mean Mr. Mustard’との繋がりも、この‘Her Majesty’よりも‘Polythene Pam’の方がピッタリだと感じられます。偶然がより良い結果に結びつくのもBeatlesらしさでしょう。
演奏も歌もMcCartneyが弾き語りでレコーディングしたものです。
“ABBEY ROAD”は、傑作を生み続けたバンドが、解散間際の最後に生み出した、世紀の最高傑作だと思います。
同時期のセッションで、次のシングルもレコーディングされました。
●The Ballad Of John And Yoko
LennonとMcCartneyの2人だけでレコーディングされました。Lennonがアコギ、2つのリード・ギター、McCartneyがドラムス、ベース、ピアノ、マラカスを担当しました。手早いレコーディングで、ミキシングまでを8時間半で終わらせたそうです。
●Old Brown Shoe
それほど重要な楽曲とも思えませんが、なぜか「青盤」(“1967-1970”)に収録されました。
ベースとギターのユニゾンがカッコいいです。ピアノとベースがMcCartney、リード・ギターがHarrison、Lennonがハモンド・オルガンを担当しています。
モントセラト島救援コンサートより
Golden Slumbers - Carry That Weight - The End
ここでのメンバーはMark Knopfler、Eric Clapton、Phil Collins、そして指揮はGeorge Martin。もちろんヴォーカルはMcCartney。
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