横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

「地震解析ラボ」地震予知の的中率はわずか3%

2012年04月05日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)
最近、電磁波を用いた地震予知研究がメディアなどで取り上げられています。代表的なものとして、電気通信大学の早川正士名誉教授らを中心とする「地震解析ラボ」、北海道大学地震火山研究観測センターの森谷武男博士による研究などがあります。

このうち「地震解析ラボ」は、テレビや週刊誌などの各種メディアに繰り返し取り上げられ、的中率が6割から7割であると主張しています。しかし、これはあくまで自己申告であり、第三者による検証結果ではなく、信用できません。しかも発生日時、震央、地震の規模のそれぞれについて、どの程度の誤差を許容しての数字であるかはっきりせず、したがって数字自体に意味がありません。

そこで、当ブログでは、公開されている「地震解析ラボ」の予測実績と、実際に発生した地震とを比較し、地震観測ラボによる地震予測の的中率を調べた結果をまとめました。

2011年7月~12月の地震観測ラボによる地震予測一覧

○:的中(発生予想日±4日、マグニチュード±0.5、震央が発生予測円内)
△:誤差許容(発生予想日±7日、マグニチュード±1.0、震央が発生予測円から100km内)
()内は該当期間に実際に発生した地震

発生予想日 予測地と予測規模
7月10日 岐阜 M5.0前後 →ハズレ
7月12日 北関東 M5.0前後 (△7/15茨城南部M5.5)
7月15日 大阪 M5前半 →ハズレ
7月14日 岩手宮城 M5.0前後 (○7/13宮城沖M5.1)
7月16日 大阪 M5後半 →ハズレ
7月16日 十勝沖 M5.0前後 →ハズレ
7月21日 豊後水道 M5.0前後 →ハズレ
7月25日 岩手宮城 M5後半 (△7/23宮城沖M6.5)
7月27日 豊後水道 M5前半 →ハズレ
7月28日 関東北西 M5前半 →ハズレ
8月 1日 奈良 M5前半 →ハズレ
8月 3日 静岡東部 M5.0前後 (△8/1駿河湾M6.1)
8月 3日 愛知 M5前半 →ハズレ
8月11日 伊豆諸島 M5後半 →ハズレ
8月11日 えりも沖 M5前半 →ハズレ
8月11日 千葉東方沖 M5後半 →ハズレ
8月13日 南紀 M5前半 →ハズレ
8月18日 滋賀 M5前半 →ハズレ
8月18日 宮城 M6以上 (△8/19福島沖M6.8)
8月23日 静岡南沖 M5前半 →ハズレ
8月23日 奄美付近 M5後半 →ハズレ
8月24日 群馬 M5前半 →ハズレ
8月26日 津軽海峡 M5.0前後 →ハズレ
8月26日 四国東部 M5後半 →ハズレ
8月28日 茨城沖 M5後半 (△8/27福島沖M4.8)
8月26日 九州東沖 M5前半 →ハズレ
9月 2日 兵庫付近 M6以上 →ハズレ
9月 8日 北海道南部 M5.0前後 (○9/7浦河沖M5.1)
9月12日 奄美付近 M5.0前後 →ハズレ
9月15日 南紀 M5前半 →ハズレ
9月20日 茨城南部 M5後半 (△9/21茨城北部M5.3)
9月25日 遠州灘 M5後半 →ハズレ
9月26日 若狭湾 M5前半 →ハズレ
9月26日 青森東方沖 M6以上 →ハズレ
9月26日 和歌山付近 M5前半 →ハズレ
9月27日 択捉付近 M5後半 →ハズレ
10月 1日 茨城南部 M5後半 →ハズレ
10月11日 紀伊半島 M5後半 →ハズレ
10月11日 福島沖 M5前半 (△10/10福島沖M5.6)
10月17日 日向灘 M5後半 →ハズレ
10月16日 遠州灘 M5後半 →ハズレ
10月17日 茨城南部 M5後半 →ハズレ
10月20日 長野 M5.0前後 →ハズレ
10月23日 岩手宮城 M6以上 →ハズレ
10月26日 福島茨城 M5前半 →ハズレ
11月 2日 国後・択捉 M5前半 →ハズレ
11月 7日 茨城北部 M5.0前後 (○11/4茨城沖M4.8)
11月 9日 千葉南東沖 M5前半 →ハズレ
11月13日 奄美 M5前半 (△11/2トカラ列島近海M4.2)
11月13日 岐阜 M5.0前後 →ハズレ
11月16日 茨城北部 M5後半 (○11/20茨城北部M5.5)
11月21日 秋田 M5前半 →ハズレ
11月27日 青森秋田 M5後半 →ハズレ
12月 1日 伊豆諸島 M5後半 →ハズレ
12月 5日 奄美 M5.0前後 (△12/11奄美近海M5.4)
12月 6日 国後・択捉 M5前半 →ハズレ
12月10日 遠州灘 M5.0前後 →ハズレ
12月10日 宮城・福島 M6以上 →ハズレ
12月14日 岐阜 M5.0前後 (○12/14岐阜県内M5.2)
12月19日 宮城沖 M5後半 (△12/20岩手沖M5.0)
12月21日 十勝沖 M5前半 →ハズレ
12月26日 兵庫 M5前半 →ハズレ
12月27日 豊後水道 M5前半 →ハズレ
12月28日 茨城県 M5.0前後 →ハズレ
1月 1日 石川県 M5.0前後 →ハズレ
1月 3日 鳥取県 M5.0前後 →ハズレ
1月 3日 三陸沖 M5後半 →ハズレ

的中は67件中5件のみ、的中率は7.4%となります。かなり甘い誤差を許容しても、的中は15件のみです。しかも、的中とされた予測は、ほとんどが広義の東北地方太平洋沖地震の余震域における地震で、ほぼ毎週のようにM5クラスの地震が起きていた領域に対するものであり、わかりやすく言えば「マグレ当たり」に過ぎません。

したがって、実質的な彼らの予測的中率は、この余震域を除く地域に対してされた地震予測を対象に検証すべきだと考えられます。該当する予測は29件ありますが、そのうち的中はわずか1件のみです。的中率は、たったの3.4%です。

彼らはほぼ毎週、1週間の期間を設定して予測を行っています。半年間で67件ということは、日本国内のどこか2~3箇所で、常に地震予測が出ていることなります。これだけ予測を乱発すれば、マグレで1件くらい的中しても全く不思議ではありません。

このように、地震解析ラボの予測結果には、有意な予測実績をひとつも読み取ることができません。彼らの地震予測能力は、ゼロであると言って良いでしょう。


地震の予兆として、地震発生の1週間も前から電磁波が観測可能なほど乱れるなどということは、科学的にあり得ません。誘発要因があれば、その要因を受けてから即日にでも、地震は発生するのです。東北地方太平洋沖地震のときにも、当日の3月11日に東北・関東沖で多数の誘発地震(余震)がありましたし、震源から離れた長野県栄村でも震度6の誘発地震が起きて被害が発生しました。4日後にも、静岡県東部で震度6の誘発地震が起きたことは、記憶されている方も多いでしょう。つまり、地震というものは、1週間も前に律義にお知らせを知らせてくれるほど、甘いものではないのです。

そもそも、たとえば海底が震源である場合、どのようなプロセスで上空の電離層が乱れるのでしょうか? 電磁波は海水中を進むことはできません。猛烈な電位を持つ雷さえ、海に落ちても海面近傍以外は極めて平穏です。このような電気的に不透明な海の底から、上空の電離層まで電磁気的な影響が伝わるという仮定自体が、いささか非科学的であると思います。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 地震解析ラボの地震予測「カ... | トップ | 【要注意】 「地震解析ラボ」... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
参考までに (ふくちゃん)
2012-04-22 00:07:08
面白い内容ですね。
2011年のデータは、ちょっと検証には不向きかもしれないですね。2010年以前の方が良いかもしれません。

これとは違いますが、私もこの手の検証をやったことがあります。もし時間があれば、見てみてください。
http://zishinmimi.web.fc2.com/verification.html

いずれにしても、いろいろな人の視点で見ることは良いことだと思います。

地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)」カテゴリの最新記事