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電子基準点のデータから、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」などで地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。
本サイトでは以前より、村井氏は測量学が専門だと言ってもGPSは全くの専門外であり、データの取り扱いや発言は出鱈目であって、地震予測も実は全然当たっておらず、全く信用できないと指摘しています。ですが、週刊ポスト、週刊現代、週刊朝日、フジテレビ…といった各週刊誌やテレビ局が、なぜか彼を絶賛して祀り上げることを一向にやめないので、繰り返し批判を続けています。
今回は、村井俊治氏らの言っていることが、明らかに支離滅裂であり信用できないものであることを説明します。
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村井俊治氏らは、JESEAのサイトにおいて、彼らの地震予測を以下のように説明しています。
それでは、2000年~2007年に起きたマグニチュード6以上の地震を、以下にプロットしてみましょう。
(下図では、規模の大きいほうから100件のみを表示しています)

(気象庁のサイトより作成。規模の大きい100件をプロット)
…ご覧のとおり、彼らがいう「2000年~2007年に起きたマグニチュード6以上の地震162件」には、日本から離れた数多くの地震、しかも非常に震源が深い地震が、幾つも含まれているのです。
これらの地震には、ロシアのウラジオストク付近の地下を震源とする幾つかの地震が含まれています。いずれも、地下500kmよりも深い位置で発生した、太平洋プレートのもぐり込み先の地震発生限界付近の地震です。ほかにも、オホーツク海を震源とする深さ496kmの地震や、ロシアの沿海地方の深さ487kmの地震などがあります。こんな遠くて深い地震の前にも、日本の地表に設置された電子基準点で異常があったと、彼らは言っているのです。あまりにも荒唐無稽です。
逆に、遠くて浅い震源での地震の前に、日本の地表にある電子基準点で異常が起こるというのも、到底信じられません。サハリンでの2つの地震は、それぞれ深さが0kmと1kmと、ほとんど地表付近での地震です。フィリピン付近の地震も浅い海底で起きています。このような地震の前に、日本の地表にある電子基準点で前兆異常が起こるというのは、さすがに無理があります。
これらの遠方の数々の地震の前にも全て、電子基準点に異常があったと村井氏(JESEA)は主張しているのです。これを信じろと言う方が、どうかしています。信じろというなら、全データを公開すべきでしょう(※村井氏らは、ただ「すべての地震に前兆現象が見られました」と主張するだけで、証拠となる具体的なデータを全く公開していません)。
■
また、今週発売された『週刊朝日』で、村井俊治氏は以下のように発言しています。
ところが、上記したJESEAのサイトでは、ハッキリ以下のように書いてあるのです。
…162個もの地震を検証した結果として「ほぼ1ヶ月以内で、数日のこともある」と言ったにもかかわらず、今年の週刊誌の取材に対しては「5ヶ月くらいはかかる」と、主張がコロっと変わってしまっています。どちらかが大嘘なのか、過去の研究結果を忘れてしまっているのか、いずれにしても支離滅裂だと言わざるを得ません。
おそらく、昨年の長野での地震をはじめとして、何ヶ月間も予測どおりに地震が起きなかったことが相次いだため、自身の都合の良いように主張を変えたのだと思われます。ここまでくると、なりふり構わぬ迷走ぶりで、彼らの研究自体がグチャグチャになっていると言わざるを得ません。いずれにしても、村井氏の発言には一貫性が全くありません。
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(※3/12追記)
さらに、村井俊治氏は2015年3月11日付のtwitterで、以下のように発言しています(赤下線は本サイトによる付記)。

…震災から4年も経って、これを「びっくりする発見」だと言うなんて、想像を絶する科学的知識の欠如です。少なくとも、地震や地球科学のことに興味を持ち少しでも勉強していれば、小学生でも既に知っているはずの知識を、村井氏は知らなかったというのです。
最近、累積歪みなどというデータを持ち出して、「東北地方の太平洋側が隆起していて、日本海側が沈降している」と、さも自分の発見のように騒いでいるようですが、これも大地震後の余効変動として地震直後から知られている観測結果にすぎません。というより、過去のプレート境界地震の経験から、このような余効変動は震災前に既に周知でした。このような人物を信奉しておられる方が大勢いるという現状は、信じられないというか、茫然とするほかありません。
■
正直申し上げて、村井俊治氏の信頼性に欠く数々の言動、発言の支離滅裂さなどは、いささか異常なものを感じます。彼ひとりであれば「少し異常な人物ですね」で済むのですが、彼のまわりに数人居るらしいとりまき(JESEAのメンバーと思われます)も、同調ないし助長して異常な研究やサービスを止めないというのは、非常に大きな問題だと言えます。
とりわけ、村井俊治氏ご自身はGPSは全くの専門外で、素人以下の知識しかないのに、「測量学の権威」と称した「東大名誉教授」の肩書で、多くの皆様やメディアが彼らの研究のおかしさに気付けないでいるという現状に、非常に大きな問題点というか悪質さを感じます。
まずは、発言をコロコロ変えるような非科学的な態度をやめ、ご自身の研究を客観的にとらえる真摯な科学的姿勢を、彼らにはぜひ期待します。
なお、彼らの予測のデタラメさや、実際には予測がまったく当たっていない(のに村井氏自身や週刊誌が的中と主張している)点については、すでに繰り返し指摘しています。ぜひ併せてご参照ください。
村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(3)
村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(2)
村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(1)
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電子基準点のデータから、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」などで地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。
本サイトでは以前より、村井氏は測量学が専門だと言ってもGPSは全くの専門外であり、データの取り扱いや発言は出鱈目であって、地震予測も実は全然当たっておらず、全く信用できないと指摘しています。ですが、週刊ポスト、週刊現代、週刊朝日、フジテレビ…といった各週刊誌やテレビ局が、なぜか彼を絶賛して祀り上げることを一向にやめないので、繰り返し批判を続けています。
今回は、村井俊治氏らの言っていることが、明らかに支離滅裂であり信用できないものであることを説明します。
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村井俊治氏らは、JESEAのサイトにおいて、彼らの地震予測を以下のように説明しています。
「国土地理院は1994年以降、地殻変動を観測する目的でGNSSを用いた
電子基準点を全国約1300か所に配備しました。
(中略)
JESEAはこの電子基準点データを利用して地震予測を行います。
(中略)
村井名誉教授等は2000年~2007年に起きたマグニチュード6以上の地震162個に対して、
地震の前に何らかの前兆現象が起きていたか否かをチェックしました。
結果、すべての地震に前兆現象が見られました。数日前から数ヶ月前くらいの
範囲で前兆現象が認められました。」
(JESEAの地震予測について)
電子基準点を全国約1300か所に配備しました。
(中略)
JESEAはこの電子基準点データを利用して地震予測を行います。
(中略)
村井名誉教授等は2000年~2007年に起きたマグニチュード6以上の地震162個に対して、
地震の前に何らかの前兆現象が起きていたか否かをチェックしました。
結果、すべての地震に前兆現象が見られました。数日前から数ヶ月前くらいの
範囲で前兆現象が認められました。」
(JESEAの地震予測について)
それでは、2000年~2007年に起きたマグニチュード6以上の地震を、以下にプロットしてみましょう。
(下図では、規模の大きいほうから100件のみを表示しています)

(気象庁のサイトより作成。規模の大きい100件をプロット)
…ご覧のとおり、彼らがいう「2000年~2007年に起きたマグニチュード6以上の地震162件」には、日本から離れた数多くの地震、しかも非常に震源が深い地震が、幾つも含まれているのです。
これらの地震には、ロシアのウラジオストク付近の地下を震源とする幾つかの地震が含まれています。いずれも、地下500kmよりも深い位置で発生した、太平洋プレートのもぐり込み先の地震発生限界付近の地震です。ほかにも、オホーツク海を震源とする深さ496kmの地震や、ロシアの沿海地方の深さ487kmの地震などがあります。こんな遠くて深い地震の前にも、日本の地表に設置された電子基準点で異常があったと、彼らは言っているのです。あまりにも荒唐無稽です。
逆に、遠くて浅い震源での地震の前に、日本の地表にある電子基準点で異常が起こるというのも、到底信じられません。サハリンでの2つの地震は、それぞれ深さが0kmと1kmと、ほとんど地表付近での地震です。フィリピン付近の地震も浅い海底で起きています。このような地震の前に、日本の地表にある電子基準点で前兆異常が起こるというのは、さすがに無理があります。
これらの遠方の数々の地震の前にも全て、電子基準点に異常があったと村井氏(JESEA)は主張しているのです。これを信じろと言う方が、どうかしています。信じろというなら、全データを公開すべきでしょう(※村井氏らは、ただ「すべての地震に前兆現象が見られました」と主張するだけで、証拠となる具体的なデータを全く公開していません)。
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また、今週発売された『週刊朝日』で、村井俊治氏は以下のように発言しています。
「(電子基準点の異常があってから)地震発生までは、およそ5カ月くらいかかるので(後略)」
(exciteニュース<週刊朝日>)
(exciteニュース<週刊朝日>)
ところが、上記したJESEAのサイトでは、ハッキリ以下のように書いてあるのです。
すべての地震に前兆現象が見られました。
数日前から数ヶ月前くらいの範囲で前兆現象が認められました。
(中略)
過去の解析例では、ほぼ1ヶ月以内ぐらいの範囲で地震が起きています。
(JESEAの地震予測について)
数日前から数ヶ月前くらいの範囲で前兆現象が認められました。
(中略)
過去の解析例では、ほぼ1ヶ月以内ぐらいの範囲で地震が起きています。
(JESEAの地震予測について)
…162個もの地震を検証した結果として「ほぼ1ヶ月以内で、数日のこともある」と言ったにもかかわらず、今年の週刊誌の取材に対しては「5ヶ月くらいはかかる」と、主張がコロっと変わってしまっています。どちらかが大嘘なのか、過去の研究結果を忘れてしまっているのか、いずれにしても支離滅裂だと言わざるを得ません。
おそらく、昨年の長野での地震をはじめとして、何ヶ月間も予測どおりに地震が起きなかったことが相次いだため、自身の都合の良いように主張を変えたのだと思われます。ここまでくると、なりふり構わぬ迷走ぶりで、彼らの研究自体がグチャグチャになっていると言わざるを得ません。いずれにしても、村井氏の発言には一貫性が全くありません。
■
(※3/12追記)
さらに、村井俊治氏は2015年3月11日付のtwitterで、以下のように発言しています(赤下線は本サイトによる付記)。

…震災から4年も経って、これを「びっくりする発見」だと言うなんて、想像を絶する科学的知識の欠如です。少なくとも、地震や地球科学のことに興味を持ち少しでも勉強していれば、小学生でも既に知っているはずの知識を、村井氏は知らなかったというのです。
最近、累積歪みなどというデータを持ち出して、「東北地方の太平洋側が隆起していて、日本海側が沈降している」と、さも自分の発見のように騒いでいるようですが、これも大地震後の余効変動として地震直後から知られている観測結果にすぎません。というより、過去のプレート境界地震の経験から、このような余効変動は震災前に既に周知でした。このような人物を信奉しておられる方が大勢いるという現状は、信じられないというか、茫然とするほかありません。
■
正直申し上げて、村井俊治氏の信頼性に欠く数々の言動、発言の支離滅裂さなどは、いささか異常なものを感じます。彼ひとりであれば「少し異常な人物ですね」で済むのですが、彼のまわりに数人居るらしいとりまき(JESEAのメンバーと思われます)も、同調ないし助長して異常な研究やサービスを止めないというのは、非常に大きな問題だと言えます。
とりわけ、村井俊治氏ご自身はGPSは全くの専門外で、素人以下の知識しかないのに、「測量学の権威」と称した「東大名誉教授」の肩書で、多くの皆様やメディアが彼らの研究のおかしさに気付けないでいるという現状に、非常に大きな問題点というか悪質さを感じます。
まずは、発言をコロコロ変えるような非科学的な態度をやめ、ご自身の研究を客観的にとらえる真摯な科学的姿勢を、彼らにはぜひ期待します。
なお、彼らの予測のデタラメさや、実際には予測がまったく当たっていない(のに村井氏自身や週刊誌が的中と主張している)点については、すでに繰り返し指摘しています。ぜひ併せてご参照ください。
村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(3)
村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(2)
村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(1)
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私は週刊誌を真面目に読んだことありません。ネタ程度の認識でいます。
これが前にコメントをされていた超素人様の言う「地球という惑星の日本列島辺りで2015年に地震が起きたのですから、先生の予知は大当たりしたのです」レベルのお話しならネタとしておもしろがれるのですけどね。
残念ながらそうではないようで、悩ましいところですね。
あと私は週刊誌については、もう一点皮肉な見方をしています。
今は村井氏をもてはやして儲けに利用していますが、もし風向きが180度変わる日が来たら、途端に「詐欺師!」といった感じで罵声を浴びせて、今度は今と逆のネタで売上に利用するのだろうなと。昨年のSTAP細胞問題を見ているとそう言う気がします。
いつも誠に有難うございます。
もちろんネタ程度(またはそれ未満)の価値しかない人物ではありますが、村井氏が週刊誌やテレビなどで露出されるたび、検索などで当ブログを訪れてくださる方がいるようですので、注意喚起もかねて適宜批判などを続けるつもりでいます。
いかにも「科学的な研究です」という風情で、名誉教授という肩書も前面に出して自己正当化をする厄介な方なので、騙される方がまだ増えるのではないかという危惧が捨てきれませんので・・・。
3月8日夜9時にフジテレビ系のMr.サンデーに村井氏が出演するようです。
どうせ「ここ数年間で起きた震度5弱以上の地震は全て予知できた」とか言うのでしょう。
あんな嘘・出鱈目・誤謬・詭弁だらけの理論は到底信じられるものではないのですが、
TVを見て、でたらめだと分からない人が信者になってしまうのではないかと心配しています。
コメントと情報ありがとうございます。
テレビで「地震予測を披露する」のは勝手ですが、地殻がボコボコ動いているといった「非科学的な嘘」だけはやめて欲しいものです。
また、天下のフジテレビさんなのですから、メディアの挟持として、きちんとした分析もせずに「地震予測を的中させている」といった無責任な紹介だけは、絶対にしないで欲しいと思います。
ご指摘ありがとうございます。仰る通りだと思われます。
いずれにしても、正確に閾値をM=6.0にとっているか否かは論旨と関係がないので、文章を少し変更しました。
皆様には余計なお手数や混乱をお招きし、申し訳ございませんでした。
東京大学という名前をふりかざして、これだけあやしい「予知」を売っている人に対しては、やはり、学会なり、東京大学の地震学者なりが、きちんと反証すべきでしょうね。
無視・黙殺したい気もち、かかわりたくないという心情はわかりますが、学会や地震学者には、似非情報を似非だといい、「根拠がない」としめす社会的責任があるようにおもいます。なにもしないからこそ、いざ巨大地震が起きると、「膨大な予算をつかってなにをしているんだ?!」という非難も出るのではないかと。「地震予知の検証」といった科研のプロジェクトがあってもいいくらいです(笑)。
そういう意味で、このページはとても存在意義があると申しますか、すくなくとも、真偽を見極めようとする人たちにとって、欠かせないページになりつつあるとおもいます。
有難いコメント、誠に恐縮です。
ご指摘のとおりだと思います。実は、本ブログの内容を書くにあたって、電子基準点のデータについて国土地理院に問い合わせたことも少しあります。そのなかで彼らの態度としては、村井氏らのデータの取り扱いがデタラメであることを十分認識していながら、基本的に「データをどう使うかは利用者の勝手」という立場で、あまり関わりたくないようでした。
私だけでなく、JESEAのメルマガ等でお金を払った実害がある方が国土地理院に訴えかけていけば、何かアクションがあるかも知れませんが…。
むしろ、「商品広告に謳われたこの宣伝には科学的な実証はありません」といった、消費者庁の動きを期待すべきなのかも知れません。
間違った知識が広まるという意味では、暗然とした気持ちにはなりますが・・・。
こういう似非科学問題の厄介なところは、専門機関が反応すると逆に市民権を得てしまうことがあることです。
本当は専門家が全否定して終了して欲しいのですが、正統派の学説と似非科学が同列に並べられて議論出来てしまうと言う環境は、取り扱いに細心の注意が必要なんですよね。
最近ひょんな事から、「エイズ否認主義」説を見てそう思いました。
ただいまの所、エイズ否認主義説とは異なり、村井氏には彼を支持する地震学者や火山学者がいないのが救いです(むこうは、ノーベル賞受賞者などが支持したため、今でも誤った説を信じる人が多くて、アメリカやイギリスの厚生組織は苦労しているようですが)。