2018年9月6日の3:08頃、胆振地方中東部で大きな地震が発生しました(北海道胆振東部地震)。規模はM6.7で、厚真町で震度7を観測しています。
話題の有料地震予知サービスは、この地震を予測できていたのでしょうか。以下に見てみましょう。
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電子基準点の動きなどから地震予測をする、村井俊治・東大名誉教授ら地震科学探査機構(JESEA)の『週刊MEGA地震予測』では、この地震の直前、以下のような予測を発表していました。
…日本中に出した11個もの予測円のひとつで、ギリギリのところで地震が起きた、というだけだとしか言いようがありません。完全な予測失敗とは言えないかもしれませんが、「地震の発生する場所を事前に言い当てた」とは、到底言えるような精度ではないと思います。特に、胆振東部を含む北海道南部~青森に出していた「要注意」よりも警戒度が高い「要警戒」のエリアが6か所もあるのですから、予測成功とはとても言えないでしょう。
そもそも、『週刊MEGA地震予測』は、このときだけでなく、ほぼ常に、日本中をこのような予測円だらけにしています。ですので、発生時期の予測もできたとは全く言えません。
いずれにしても、『週刊MEGA地震予測』は、このように「常に日本中を危険だと言っている」というだけの予測は、もうやめたほうが良いのではないでしょうか。一部の週刊誌などでは、「北海道の地震を予測した」と既に宣伝されているようですが、「実は北海道以外にもたくさんの予測を出していた」という事実に気を付けてください。
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電波観測など複合的な手法で地震予測をしている、『地震解析ラボ』という有料地震予測はどうだったでしょうか。地震直前の予測は、以下のようなものでした。
…胆振地方中東部の規模はM6.7ですので、「M6以上」という予測がない時点で、予測失敗です。『週刊MEGA地震予測』と同様、こちらも日本中を予測円が覆っています。そして、このときだけでなく、常にこのような予測を出しっ放しです。予測失敗(見逃し)が怖いのでしょうが、このような地震予測は全く役に立ちませんので、サービスや研究の見直しをお願いしたいところです。
なお、『予知するアンテナ』という有料地震予測もありますが、こちらも原則として『地震解析ラボ』と同じ予測内容を発表しているようです。
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「地震活動の静穏化が大地震の前兆だ」とする、長尾年恭・東海大教授らDuMAの『地下天気図』による地震予測を検証してみましょう。
長尾教授らは、胆振東部地震の翌週に、以下のようなコメントを発表しています。
(※DuMAホームページより)
…つまり、『地下天気図』は、胆振東部地震をまったく予測できなかったということです。
この周辺は前年2017年にM5.1の地震が発生するなど、むしろ地震活動は活発化していたと思われます。「地震活動の静穏化」が前兆となることもあるかもしれませんが、それだけで地震が予測できるかのような彼らの理論は、そもそも無理があるのではないでしょうか。
内山氏は、地電流、低周波音、グーテンベルグ・リヒター則を用いて地震を予知するそうです。
早速、検証してみました。
検証結果は、自ブログで公開していますが、簡単に紹介します。
鹿児島で観測した地電流の異常で熊本地震を予知したとしていますが、地電流の異常は、活発に活動していた桜島の火山灰の上に雨が降ったためと思われます。
奈良県十津川村付近の低周波音で、2016年4月の三重県沖の地震(M6.5)を予知したとしていますが、当時の十津川村では2011年の水害の復興工事が行われており、トンネル工事や架橋工事に伴う低周波音を捉えたと考えられます。
グーテンベルグ・リヒター則については、yahoo知恵袋で否定されていました。
しかも、サービス開始は、前述の地震より後の2016年7月以降のようです。
つまり、衆目の中での予知成功ではありません。
で、サービス開始後の実力はどうかと言うと、胆振東部地震は成功したようですが、大阪府北部の地震は外しています。
地震の頻度が高い北海道でマグレ当たりして、頻度が低い大阪府では失敗したとみるべきでしょう。
高い成功率を標榜していますが、無感地震を含めて予知率を稼いでいます。
私が調べた網羅率は50%程度のようです。
まあ、地震予知に求められる条件を満たさない、あの方法で予知できるはずがありません。
ところで、掲載されている9/5のMEGA地震予測の図ですが、以下に掲載されている物とかなり異なっています。
https://www.news-postseven.com/archives/20180818_735472.html
こちらでは今回の地震を当てたように見えますが、発生時期、地域も幅広いし、よりレベルが高い地域もありますので「予知」としてはアテになりませんが。
掲載されている図は「公開情報に基づく推測」となっていますがブログ主様にて作成されたのでしょうか?
予測失敗する確率はどれほどのものなのでしょうか(笑)
コメントありがとうございます。
「推定」としたのは、単に非公開情報をそのままの形で公開するわけにはいかないからで、実際の内容は確認しています。公開情報から推定できるものと実際の内容はほぼ変わりません。
週刊ポストに記載されている図はAI地震予測で、要するに通常のメルマガの予測に加えて、別に出しているものです。こうやって複数の予測を出して、当たったほうを後出しで示すわけです。これも彼らの手口のひとつです。
①震度4以上は大雑把すぎる。
②災害が想定される震度6以上を明示すべき。
でないと予測の意味なし。
③そもそも、震度ではなく地震の規模を条件とすべき。地震はその規模ありきで、震度はその派生にすぎない。(概ね震源からの距離、地盤の状態により観測点ごとに異なる)
と考えます。
しかし有料メルマガとは異なる情報を「AI地震予測」と称して出して当たった方を使う、とはやり方が姑息すぎますね。
メルマガを購読している人って週刊ポストに掲載された図をどう見ておられるのでしょうね。
熊本地震の時も、発生確率こそ低く見積もられていましたが、地震が起きないとは言っていません。
大阪北部の地震や、胆振東部地震では、死者が発生した場所は比較的リスクが高いとされている場所でした。
多くの有料地震予知は、広大なエリアを警戒対象にしておきながら、熊本地震や大阪北部の地震の予知に失敗していることを思えば、地震ハザードマップの方がはるかに精緻で実用的です。