最近、GPSデータに基づいて地震を予測する学者として、テレビや週刊誌に頻繁に露出している、東大名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)。彼は、9月16日に発生した茨城県南部を震源とするM5.6の地震についても、「予測していた」と主張しているようです。
たとえば、9月17日付の、彼自身のtwitterにおいて、
昨日昼過ぎに茨城県南部を震源とする震度5弱の地震がありました。(中略) 週刊ポストでは栃木県を含む北関東は要注意と言及しました
と主張しています。また、その週刊ポスト誌も、この地震について、
この地震の発生を事前に「的中」させていた人物がいる。(中略) 発売中の週刊ポスト(9月19・26日号)では、村井氏の監修のもとに全国版「異常変動マップ」を掲載しているが、北関東は「警戒ゾーン」となっている
(NEWSポストセブン http://www.news-postseven.com/archives/20140916_276951.html)
と記事を出し、さも村井俊治氏の予測が当たったかのように喧伝しています。
…ですが、よく調べてみますと、彼らの主張は誇張、ないしはウソです。実際には、村井俊治氏は、この茨城県南部の地震を、全く予測できていなかったようです。
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当該号の週刊ポスト9月19・26日号に掲載された、村井俊治氏の地震予測(「異常変動全国MAP」)の一部を、以下に引用します。
予測した4つのエリアのうち1つに、「飛騨・甲信越・北関東警戒ゾーン」という領域があります。長野県北部を中心とし、たしかに栃木県の西側にかすっています。ですが、よく見ますと、9月16日に地震が発生した茨城県は、全県が全くの領域外なのです。
つまり、実際に村井俊治氏が予測していたのは、あくまで主に信越地方を念頭に置いた領域であって、北関東の西側を含んではいるものの、茨城県を含む東関東とは全く別の領域です。これで、「北関東」と言ったから当たった、などと主張するのは、さすがに無理があります。太平洋側にこれだけ予測を出していて、予測エリア外に地震が起きたのですから、むしろ見事にハズレたと言うべきだと思います。
そもそも、これだけの広大なエリアに、かなり長い時間的な誤差(記事では半年間)を許容して予測を出しているのですから、もし仮に、このうちひとつで地震が起きたとしても、「下手な鉄砲」としか言いようがありません。
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これまで本サイトにおいては、村井俊治氏について、特許明細書の不備や、GPSデータの扱いにおける不審点を、指摘してきました。
ですが、何よりも、「南海トラフ巨大地震がくる」と大々的に主張しながら「南海トラフとは言ってない」と前言を翻したり、広大な予測円の外で起きた地震を「予測していた」と言い張ったり、こうした態度こそが、彼の信用を低くしていると思います。
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コメント、誠にありがとうございます。
まず、村井氏ご本人が、ツィッターで、「栃木県を含む北関東」に警告を出していたと明言しています。ですので、週刊ポスト誌の図は正確だったのでしょう。
そもそも、本当は「茨城県」に警告を出していたのに、茨城県を全く含まない図を週刊ポスト誌に掲載されたのだとするなら、なぜ村井氏は、週刊ポスト誌に抗議や訂正をしなかったのでしょうか。理解に苦しみます。
また、メルマガでは「茨城県」と言い、週刊誌では「栃木県」と言っていたのなら、どちらで地震が発生しても、あとから「当たった」と言えるわけです。それこそ、下手な鉄砲になってしまっています。
もし、異なる媒体で異なる予測を出していたという事実が本当であるなら、ますます村井氏が信用できなくなったと言わざるを得ません。
あの9月16日の震源が茨城県南部の地震ですが、最大震度5弱を記録したのは栃木県佐野市(さのし)、下野市(しもつけし)、群馬県前橋市(まえばしし)、埼玉県熊谷市(くまがやし)など15の市区町村で震度5弱を観測しました。ところが震源地の茨城県内では最大でも震度は震度4でした。横浜地球物理学研究所さまは、一番揺れたのが、栃木、群馬、埼玉など北関東の県だった事実は無視して、震源地の茨城県南部(震度4)がポストの図に入っていないから、まるで北関東の栃木、群馬、埼玉では地震はおこらなかった、北関東で地震というのは嘘だ、あるいはもっといえば地震は茨城でしか起きなかった、とさえ主張されているように、私は感じます。 間違っていたらごめんなさい。 メルマガをごらんになって主張されているのか、それとも、村井氏のツイッターとポストの記事だけを見て主張されているのか、私はそこが1番知りたいなと思いました。よろしかったら教えてください。失礼いたしました
再びのコメント、誠に有難うございます。
まず、いちばん揺れたのが群馬県だったという事実は、まったく弁護の理由になりませんので、ご注意ください。
なぜなら、村井氏は、GPSデータをもとにして、「地震が発生するであろうエリア」を予測しているからです。「地震でいちばん揺れるエリア」を予測しているわけではありません。
当該地震が起きたのは、あくまで茨城県です。群馬県がいちばん揺れた理由は、単に地盤が軟らかいために地震波が反射/増幅/共振等を起こしたからです(気象庁見解でもこのように示されています)。
なお、我々はメルマガそのものはみていません。村井氏は、ツイッターにて週刊ポスト誌に発表した内容をもとに、「自分は予測を的中させた」と主張しています。本記事では、この主張を否定しているのみです。
繰り返しますが、週刊誌に発表した予測と、メルマガの予測とが異なっているのなら、それこそますます信用度が下がると思います。有料でメルマガを購読しているユーザは、抗議しても良いのではないでしょうか?
メルマガはご覧になっていないとのこと、お答えいただきありがとうございました。
>なぜなら、村井氏は、GPSデータをもとにして、「地震が発生するであろうエリア」を予測しているからです。「地震でいちばん揺れるエリア」を予測しているわけではありません
とのことですが、メルマガにはこう明記してあるのをご存知でしょうか?
私が一部を抜粋しても間違って伝わるだけかと思いますが、メルマガには
「 JESEAの地震予測は震源やマグニチュードを予測するものではありません。
震度5以上の場所を予測することに重点を置いています。」
と書かれています。
私のように個人が自分の住む地域に揺れる前兆があるのか、という関心で
メルマガを購読する場合、震源地の予測より、ゆれる地域の予測が知りたいです。ですので、JESEAのメルマガを、今後も私は購読したいと思いました。
尚、JESEAのサイトにも
「本情報は、決して震源の位置およびマグニチュードを予測するものではないことをご理解ください。」
と何箇所かに書いてありました。
横浜地球物理学研究所さまのブログを拝見して、JESEAの予測は、震源地の予測でなく、揺れる地域の予測なのだなあと知ることができました。
ありがとうございました。
コメントありがとうございました。
「本情報は、決して震源の位置およびマグニチュードを予測するものではないことをご理解ください。」
という記載は、「震源がわかっても、あえて震源ではなく、最も揺れる場所だけを発表している」、という意味ではないでしょう。なぜなら、そんなことを予測するのは不可能だからです。
極めて正確な震源の位置や、震源地付近の地盤だけでなく、正確な断層の走向や傾斜、どの時間でどれだけ断層がズレるか、等までが分からないと、震源からみてどの向きが一番揺れるかなんて、わからないのです(このあたりについては、地震学を勉強してください)
まさか、村井氏がそこまで予測して、「茨城で地震が起こるが、ずれる断層の向き等から判断して、茨城をあえて予測円からはずして、地盤も緩い群馬・栃木にだけ予測円を発表したのだ」・・・とまで、お思いになっていないですよね??
そもそも、村井氏の予測円にすっぽり入っている長野よりも新潟よりも、震源地の茨城は揺れましたよ? なぜ茨城を、予測円から外したのですか??
・・・これほどまでに好意的に解釈してくれる方がいるから、こんなサービスでもお金を払うひとがあとを絶たないのですね。それがわかったという意味で、非常に貴重なご意見をうかがうことができました。ありがとうございました。
1.日本各地で要警戒
2.いつ地震が起きるかはわからない(数か月先まで要警戒)
3.どれくらいの規模の地震かはわからない
といった特徴があるとおもうのですが、こういうものも予知の呼べるのでしょうか? 「30年以内に70%の確率」といった予測と大差ない気がするのですが。
村井氏の予知は、東大名誉教授という肩書(分野は地震に関係しませんが)もあってか、一部週刊誌等がやたらにとりあげているようですが、私には、その実効性が理解できません。
コメント、誠に有難うございます。
誤解があるようですので弁解致しますが、当該コメントは、まさか「・・・」などと村井氏が判断したなどと、(質問者さまが)思われていないですよね、と確認したという文脈です。幣所の意見や見解とは、全く関係ありません。
なお、茨城県南部での地震で大きく揺れたのは、群馬・栃木の山岳部ではなく、利根川流域の堆積層からなる平野部の前橋市などです。
私は恐らく「ありったけの愛」さんと同じような経緯で村井氏に関心を持ち、色々ニュースをみてみましたが、彼の指摘する範囲があまりにも広く、地震の予測とは言い難いと考えて、メルマガ購入をやめたと言う経緯がありまして、真逆の判断が興味深いなと思います。
こういういい加減なニュースがこれ以上でないで欲しいものですね。