横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

「電子数による地震予知」を疑う理由

2022年09月28日 | 地震予知研究(その他)
 
近年、「大地震の発生直前に上空の電離層で異常が起こり、上空電子数(TEC)が増える」と主張する研究があり、テレビなどメディアでも紹介されています。代表的なものには、日置幸介・北海道大教授や、梅野健・京都大教授による研究があります。

「夢の地震予知が実現か」と一部では期待されているこの研究ですが、個人的には私は非常に懐疑的にみています。その理由を、以下に幾つか挙げてみます。


 (1) 地震と関係がない場所でも電子数増大が起きている

梅野教授らは、東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震や、熊本地震の直前に、上空の電子数が異常に増えたと主張しています。たとえば下の図は、東北地方太平洋沖地震の発生4分前の上空電子数を示した図です(地上の各観測点と、斜め上空の或る衛星と、の間の空域の電子数を示しているので、日本列島がずれたようなプロットになっています)。

  
  (http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/7/17114.htmlより。矢印は筆者による)


たしかに東北沖で電子数の増大(紫矢印)が起きているように見えますが、よくみると、ほかにも鳥取沖や日向灘といった震源とは全く関係ない場所にも、強い増大が起きている緑矢印)ことが分かります。

東北での大地震の4分前に、東北のみならず鳥取沖や九州沖でも異常が起きているのなら、6分前や8分前や10分前や・・・にも、日本のあちこちで異常が起きていたのではないかと想像できます。しかし、なぜかそのことは触れられません。なお、梅野教授は「2016年熊本地震の本震40分前に九州で異常があった」とも主張していますが、そのときの動画をみても、ほぼ同時刻に九州だけでなく北陸地方にも異常が出ていたことが見てとれます。

都合の悪い事実を隠蔽しているわけではないのでしょうが、震源近くの異常値だけを強調し、地震とは関係なさそうな場所でも異常値を示していることを黙殺するというのは、この種の研究としてはいささか不誠実だと思います。

※追記 2021年に、この梅野教授らの主張に疑義を呈する研究結果が出ましたので、追記しておきます。結論としては、梅野教授らが地震の前兆として観測したという電子数の変動は、地震のない平常時にも頻繁に観測されるものであり、有意な異常とは言えない、というものです。)


 (2) 電子数の増大が本当に「異常」かどうか疑わしい(※)

日置教授は、チリ地震や東北地方太平洋沖地震といった大地震の直前に、電子数が正常値より増えていたとして、以下のような観測結果を示しています。この図で日置教授は、それぞれの大地震の直前に、電子数の観測値(赤矢印)が、正常値(青矢印)より増え、地震の発生後に急激に戻ったと主張します。

  
  (地震予知総合研究振興会「地震ジャーナル」53号, 2012年より。赤青矢印は筆者による)


しかし、ここで大切なことは、電子数は季節変化も時刻変化もし、さらには日によって大きく変動のしかたも変わる、不安定なものであるということです。つまり、青矢印で示した電子数の「正常値」を表す曲線が、正しく仮定されたものであるかが分からないのです。

この点については、鴨川仁・東京学芸大准教授らが、日置教授が示す電子数異常は、単に正常値の計算方法が不適切であるための見かけの現象であり、日置教授の計算方法による正常値を使うと、地震当日だけでなく前後3日を見ても、同時刻には電子数が異常増大していることになってしまうと指摘しています(鴨川ら2013)。

  
  (http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jgra.50118/fullより)


鴨川准教授らはあわせて、大地震当日に、地震発生直後に電子数が急激に低下しているのは、地震の発生に伴って前兆が消えたからではなく、単に津波の発生による音響波が上空に届いた影響であろうとしています。

・日置教授が地震当日のデータしか出していない(※下記参照)
・地震の前兆で漸進的に増えた電子数が、地震後に「急激に」減るというのは、感覚的に受け入れられない(逆に津波の発生で音響波が上空に届いた影響というのは非常に受け入れやすい)
・日置教授が報告している、地震直前に電子数が増え地震後に急減する事例が、津波が発生した海溝型大地震に限られている事実を、津波発生による音響波で説明できる

・・・といった点からみても、鴨川准教授らの主張にはおおいに分があると思います。

※追記: いまや日置教授は上記のデータではなく例えばこちらのデータで議論しているとご指摘を頂きましたので、ご留意下さい。地震の前の電子数が、正常値よりも大幅に増大していたとする主張を事実上取り下げて、変動のグラフが折れ曲がっている、と見せ方を変えるものです。

  
  (http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/2015JA021353/fullよりFig.6)

ただし、そもそもこのような「後でごっそり取り下げて別の主張に変えなければいけないようなデータを提示して何年も地震前兆と主張していた」ということ自体も、疑う理由となり得ます(前の論文は取り下げて主張を撤回するべきではないでしょうか)。たとえば、「折れ曲がり」は「正常値からの増大」とは限らないので、異常増大したとの主張が事実上極めて大幅にトーンダウンしています。それに、今後また同じようにデータの見せ方が総取替されるのではないかなどの疑念も抱かせるものです。

また、新しいデータの見せ方でも今のところ地震と異常との相関を疑義なく納得できず(① Fig.6では、特定の観測点-衛星の組み合わせによる観測値を示しておられるが、震源上空をカバーする他の組み合わせ、震源上空をカバーしない他の組み合わせ、について考察が足りないため相関が議論できない、② Fig.6だけを見ても地震と関係ない折れ曲がりが多くみられる、③ 折れ曲がりだけでなく極大や極小などの特徴点も考え合わせれば無数に異常があったと言えてしまう、④「折れ曲がりは地震と関係なく10時間に1回はある」という記載もある)、上記の津波の議論、および以下の(3)(4)についての感想は変わらないので、上記はそのまま残しておきます)


※追記2 2020年に、日置教授らの主張に疑義を呈する研究結果が発表されていますので、追記しておきます。内容を要約しますと、上述の私の疑問①~④に関するもので、視野に入る別の衛星による観測値も考慮すると、日置教授が主張するような「異常」の頻度は(地震と関係なく)もっと高くなり、大地震の前に異常があったというのは偶然(換言すれば都合の良いデータを示した衛星を選んだことによりそう見えただけ)と言えそうだ、というものです。)


 (3) 研究結果の間に矛盾がある

そもそも「地震の前兆として電子数が増える」と言われ始めたきっかけとなった、古い研究結果が幾つかあります。しかしそこでは、電子数が異常を示すのは、地震発生の数日前だとされているのです。

  
  (「内陸地震に先行する電離圏変動:GPSによる検証」菅原守氏(北大)2010年より)


この図では、2008年の四川大地震(Mw7.9)の3日前に電子数の異常がみられたことを報告しています。これに対し、日置教授や梅野教授らの主張は、地震発生の直前の数十分から数十秒のオーダーという直前のタイミングで異常が起きるというものです。この不一致は、いささか納得できません。

さらに言えば、上に示した日置教授の電子数遷移のグラフと、梅野教授が示した異常のデータも、そもそも整合していません。日置教授のグラフによれば、電子数は地震発生前40分前から異常に上昇し、高い値を長時間保ち続けますが、梅野教授が示したデータでは、電子数が異常増大を示すのは地震の4分前、それもほんの一瞬のことです。


 (4) 上空の電子数が増える原因が考えられない

これを言ってはミもフタもないのですが、数キロから数十キロという深い地下や海底で地震が発生する前に、高い高い上空の電離層で異常が発生して電子数が増えるということ自体が、はっきり言って少々荒唐無稽に思えます。そのようなことを説明できる物理モデルがあるとは、残念ながら思えません。

特に、海底での大地震の前に震源で発生した異常が、厚い厚い海水をどう伝わって、電磁気的な異常として上空に到達するのか・・・と考えてみると、ほぼそんなことはありそうにないと思います(たとえば、電波が海中ではすぐ減衰して使えないことは有名ですし、雷が海に落ちても海面下の魚たちは全く無傷です)。

もし仮に、地震の直前に、はるか上空まで到達するような電磁気的な異常が起きるのであれば、我々が暮らしている地表や海面ではもっと大きな電磁気的な異常が起きるのではないかと思うのですが、そのような観測データはないように思います。

また、特に日置教授の示したデータについて言えば、どの事例をみても見事に共通して、地震の前兆としての電子数増大が、地震の約40分前に始まっています。つまり、電子数が増えはじめた瞬間に、これから起きる地震が大地震となることが予め決まっており、しかも地震が起きるのは40分後であることも決まっている、ということになります。地震が起きる場所も、深さも、規模もまちまちなのに、電子数の異常が始まるのは40分ほど前にだいたいそろうというのは、極めて不自然に思います。むしろ、電子数の正常曲線を不適切にとっているために、観測値が正常曲線から逸脱するタイミングがそろっているのではないか、と疑わせるものに感じます。(←※正常曲線との比較による議論は取り下げられているようですので、この記載も取り下げます)


 (5) 地震を予測した実績がない

日置教授や梅野教授の主張はいずれも、地震が発生した後になって、「実は地震の前に異常が起きていた」と言っているだけであって、発生する前に地震を予測をした実績は全くありません。仮に以上に示した(1)~(4)をクリアしたとしても、事前に地震を予測できなくては、まだまだ話にならないと言うべきでしょう。


 ■

・・・以上のようなことから、私は「地震の前に上空の電子数が増える」という研究には、いまのところ極めて懐疑的です(というか、実は個人的には全く信じてません)。しかしながら、ぜひこれから客観的なデータを積み上がっていって、議論が進み決着がついて欲しいと期待しています。

※追記: 以上はあくまで「電子数異常が地震の前兆だという研究を、私が疑う理由」です。「この研究は間違っている!」となどと偉そうに指摘するものではありませんし、そのつもりもありません。個々の論点について具体的なご指摘は歓迎します(具体的な指摘を欠くコメントには返答しないかもしれません)。ご意見に応じて、上記の内容を書き換えることがあり得ますことをご了承下さい(履歴は残すつもりです))
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「亥年は大災害がよく起きる年」は本当か?

2019年12月06日 | 地震予知研究(その他)
 
今年2019年ももうすぐ終わりますが、今年の干支は亥でした。ところで、亥年は大地震などの災害が良く起きるという説があるそうです。たとえば「FNNプライム」では、次のように言及されています。

 「イノシシ年は災害の年などと言われる。過去には1923年に関東大震災が発生。
  1995年には阪神・淡路大震災。2007年に、新潟県中越沖地震が起きるなど、
  大地震が発生している

  https://www.fnn.jp/posts/00049297HDK/201912052033_livenewsit_HDK


実際のところは、どうなのでしょう。簡単に調べてみました。


 ■

まず、比較的詳細な記録が残る明治以降について、大災害が発生した年の干支を、犠牲者数順に見てみます。カッコ内は、死者・不明者数を四捨五入したものです。


 関東大震災(10万5千):

 明治三陸地震(2万2千): 申

 東日本大震災(2万1千): 卯

 濃尾地震(7千): 卯

 阪神淡路大震災(6千):

 伊勢湾台風(5千):

 福井地震(4千): 子

 枕崎台風(4千): 酉

 昭和三陸地震(3千): 酉

 北丹後地震(3千): 卯



…たしかに、関東大震災、阪神淡路大震災、伊勢湾台風による被害が、亥年に発生しています。しかしながら、亥年だけにそれほど偏っているわけでもありません。

実は、12面体のサイコロを10回振ったとき、その全てで違う目が出る確率は、わずか0.3%です。同じ目が出てしまう確率のほうが、圧倒的に高いのです。つまり、ある干支に大きな災害が数回重なってしまうことは、確率的に言ってごくごく当たり前のことで、単なる偶然であると言えましょう。


 ■

ついでに、明治より前の主な大災害の発生年も見てみますと、以下のとおりとなります。


 安政江戸地震(1万?): 卯

 善光寺地震(9千): 未

 島原大変肥後迷惑(1万5千): 子

 慶長地震(1万?): 巳

 八重山地震(1万2千): 卯

 宝永地震(1~2万?):

 明応地震(数万?): 午

 永仁関東地震(2万3千?): 巳



…このなかでは亥年は宝永地震だけで、他の大災害は他の干支の年に起きています。亥年が特段、大災害が集中する年には、やはり全く見えませんね。

 
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有料地震予測は山形県沖の地震を予測していたか

2019年06月20日 | 地震予知研究(その他)
 
2019年6月18日の22:22頃、山形県沖で大きな地震が発生しました。規模はM6.7で、新潟県村上市で震度6強を観測しています。

話題の有料地震予知サービスは、この地震を予測できていたのでしょうか。以下に見てみましょう。


 ■

電子基準点の動きなどから地震予測をする、村井俊治・東大名誉教授ら地震科学探査機構(JESEA)の『週刊MEGA地震予測』では、この地震の直前、以下のような予測を発表していました(山形県沖の震源位置を青で描き込みました)。

  

…相変わらずの予測の乱発ぶりで、日本中に10個もの予測円を発表していたのですが、その予測円の間を縫うように地震が起きてしまいました。見事な予測失敗です。

なお、この村井氏らの『週刊MEGA地震予測』は、以下に列挙しますとおり、これまでも大きな地震を全く予測できていません。もうそろそろ「地震を予測できる」とする看板を下ろすべきではないでしょうか。

2018年北海道胆振東部地震のとき
https://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/ef8ad67ad8577667a0dc388c1b39c03c

2018年の大阪府北部の地震のとき
https://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/a7bd3d581af7ae1395fba63c840a0263

2018年の島根県西部の地震のとき
https://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/9b1cf496b580fe25024167287d069361

2016年熊本地震のとき
https://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/a525982aff0851971b3774b45b7f2ce6


 ■

電波観測など複合的な手法で地震予測をしている、『地震解析ラボ』という有料地震予測はどうだったでしょうか。地震直前の予測は、以下のようなものでした(震源位置を赤×で描き込みました)。

  


…ご覧のように、カスリもしていません。言い訳不可能な予測失敗です。この『地震解析ラボ』も、これまでに大きな地震を予測的中させた試しが無いように思います。このような予測能力で有料サービスを継続するというのは、あまり褒められたものではない気がしますが、どうでしょうか。



 ■

「地震活動の静穏化が大地震の前兆だ」とする、長尾年恭・東海大教授らDuMAの『地下天気図』による地震予測を検証してみましょう。長尾教授らは、今回の山形県/新潟県の県境沖を震源とする地震の前に、以下のようなコメントをホームページで発表しています。


  
  (DuMAホームページより)


…このように、北信越に出していた警戒を取り下げたあとで、今回の地震が起きてしまっています。したがって、こちらも完全なる予測失敗と言えるでしょう。この『地下天気図』、大きな地震を事前に言い当てた実績がまったく見出さないのですが、こうして予測失敗を重ねながらも未だ「この方法では地震予測はできないのでは…」と気づかないというのは、率直に言って不思議でなりません。

 
 
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「大地震の直前にラドン濃度が上昇する」は本当か

2018年12月26日 | 地震予知研究(その他)
 
かなり前から、「大地震の直前にはラドンが増える」という言説があります。最近では、2018年12月25日に発売された『日経サイエンス』2019年2月号に、「大気中ラドンが示す地下の異変」と題された記事が載り、

 「(近年報告されている地震前の電離層異常は)ラドンと電荷が震源域周辺で生じたためだと考えられる」
 「地震に先行して起きた地殻変動によって生じた可能性が高い」
 「ラドン濃度の変動が地震に先行して起きることが内外の研究で明らかになった」


…などと、大地震の直前に大気中のラドンが増えることがほとんど確実であるかのように書いています。ですが、実際のところはどうなのでしょうか? この『日経サイエンス』の記事の内容をもとに、調べてみましょう。


 ■

この『日経サイエンス』2019年2月号には、ラドンと地震との相関を示すデータとして、下のグラフが紹介されています。札幌(上段)と福島(下段)で観測された、2000年以降の大気中のラドン濃度だと言います。

  
  (『日経サイエンス』2019年2月号より)


…一見すると、グラフの変動と、実際に発生した地震や火山噴火と相関があるように見えるかも知れません。しかし、以下に説明しますとおり、よく見てみるとそれはかなり無理のある主張であることがわかります。


 ■

まず、下段の福島のグラフを見てください。このグラフを見ると、2003年~2007年(下の図で白丸を描き込みました)にはラドン濃度の異常もなく、大きな地震の発生も無かったかのように見えます。

ところが実際には、この期間、福島周辺ではM6.5以上の地震が4回も起きているのです(2003年5月宮城沖M7.1、2003年10月同M6.8、2005年8月同M7.2、2005年12月同M6.6)。なのに、このグラフには記載されていません。つまり、ラドンの異常がなかったにもかかわらず起きた地震が、意図的に隠蔽されているのです。

  
  (『日経サイエンス』2019年2月号の図に白丸描き込み)


さらに、このグラフを見ると、たしかに2011年3月11日の東日本大震災の直前に、福島で大気中のラドン濃度が上昇したようにも見えます。ところが、福島の周辺の宮城や栃木の観測点では、実はそのような観測データが得られていないのです(下図)。つまり、東日本大震災の直前にラドン濃度が上昇した福島のグラフだけを選んで紹介し、都合の悪い他の地点のデータを隠蔽しているのです。

  
  (「地震に先行する大気中ラドン濃度変動に関する観測」(東北大)平成25年度報告より)


さらに、上段の札幌のデータも良く見てみますと、ラドン濃度の異常は、地震や噴火の前ではなく、2000年の有珠山噴火の「後」や、2003年の十勝沖地震の「後」に観測されていることが分かります。「ラドン濃度の変動が地震に先行して起きる」と言っている本文の主張と矛盾しています。


 ■

最近ではラドン濃度の観測を行う計測点が増え、多くの地点で常時観測が行われるようになったにもかかわらず、大地震を事前に言い当てた実績はまるでありません。むしろ、上記した宮城や栃木のデータのように、地震の前にラドンが増えていないことが分かってきているように思います。結論を出すのは早計であるにしろ、ラドン濃度が地震に先行して上昇することがほぼ確実であるかのような日経サイエンス誌の記事にも、大きな疑問を感じざるを得ません。

 
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「バヌアツの法則」は本当か?

2018年12月05日 | 地震予知研究(その他)
 
南太平洋のバヌアツで大きな地震が起きると、直後に日本でも大地震が起きるという、「バヌアツの法則」と名付けられた言説があります。

バヌアツでM7を超えるような地震が起きるたびに、ネットユーザが、「これまでのバヌアツの法則から言って次は日本で地震が起きる」などと、恐怖を感じたり、恐怖感を煽ったりするケースがよく見られます。

この「バヌアツの法則」は本当なのでしょうか。以下に検証してみましょう。


 ■

バヌアツは非常に地震が多いところで、2000年以降だけでも、M7を超える大きな地震が以下のとおり起きています(データはUSGSより)。




それでは、これらの地震の後に、日本で大きな地震が発生していたのか、以下に並べてみます(日本での地震は被害の大きさを中心にリストアップしました)。



…いかがでしょうか。特に相関があるようには思えません。むしろここ数年は、日本で被害地震が起きた後に、バヌアツで大きな地震が起きているように見えます。たとえば、

 ・2003/9/26の十勝沖地震M8.0の後、2003/12/27にバヌアツでM7.2
 ・2007/7/16の中越沖地震M6.8の後、2007/8/1にバツアツでM7.2
 ・2011/3/11の東北地方太平洋沖地震M9.0の後、2011/8/20にバヌアツでM7.2
 ・2015/5/30の小笠原諸島西方沖のM8.1の後、2015/10/20にバヌアツでM7.1
 ・2016/4/16の熊本地震M7.3の直後、2016/4/28にバヌアツでM7.0

「バヌアツの法則」どころか、むしろバヌアツの人が「日本の法則」を怖がっているかもしれません(冗談です)。


 ■

このように、「バヌアツの法則」なんてものは、存在しないと言って良いでしょう。バヌアツでの地震の有無に関係なく、日本では地震に対して日頃から備えておきましょう。

 

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