本番を数日後に控えて、あゆみがまた、稽古を休んだ。
「昨日は、電話ありましたか?」
翌日、稽古へ行って、事務室に尋ねた。
「あの後、電話ありましたよ。風邪ですって…」
風邪?……また?
あゆみは何を隠してるんだろう…。
昨日、稽古の後、何度か自宅に電話していて、彼女は出なかった。
一度出て、プツン…と切れたのも、何かしらの意味があるんじゃないか…?
「つらそうでしたか?」
「うん、いつもの彼女じゃなかったよ。」
「今日は、『来る』って、言ってましたか?」
「さぁ…そこまでは…。本番前だし、少し無理してでも来るんじゃない?」
「今なら電話出ますかね?ちょっと電話貸してください」
電話をしてみた。
…出ない…。
体調が回復して、稽古に来るつもりなのかも知れない。
ーーしかし、その日、あゆみは来なかった。
風邪なら、自宅に居るはずなのに、電話に出ない…。電話にも出られない状態?
しかも、その日は、電話連絡も無かった…。
いよいよマズイ…。
演出は、あゆみの代役を立てた…が、今度の代役は「本役のつもりで」と、付け加えた。演出も何かしらを感じているようだ…。
自宅に着いてから、再びあゆみの自宅に電話してみたが、出ない…。
いったい、何があったんだろう…。
もしかして、有名劇団でも、同じことしていた?
だから、辞めることになったの?
なんだか、闇が深そうな予感がした。