加古川本蔵とはいかなる人物か。知っている人はその筋の相当のツウである。その筋とは,なに筋か? なに筋と聞かれても、御堂筋や堺筋とは違って、これは芝居である。12月14日は赤穂の浪士が討ち入りの日で、それにちなんで仮名手本忠臣蔵に登場するこんな人物を思い出した。忠臣蔵は知っていても、そんな人物までも知らない人が多い。知っていても、カコガワモトクラとかモトゾウと言うなら知らないも同然で、正しくは「カコガワホンゾウ」である。結局、忠臣蔵といえば先ず討ち入りであるが、殿中松の廊下の刃傷の場面、高師直、大星由良之助、塩冶判官、お軽・勘平、戸無瀬、お石など。お軽・勘平のラブロマンス、祇園一力茶屋や判官腹切り、と。さもありなんで、さてその、言うところの加古川本蔵なる人物、仮にこの人物がいなかったとしたら、おそらくは忠臣蔵なるドラマは成り立っていない。それほど重要な登場人物である。今年の10月11月の2ヶ月間、東京・浅草寺境内の仮設小屋で公演をした平成中村座の「仮名手本忠臣蔵」の通し公演では、仁左衛門が加古川本蔵の役を演じている。あの殿中松の廊下で、高師直に刃傷に及んだ塩冶判官を脇から抱きとめて制したのが他ならぬ加古川本蔵である。また、討ち入りに先駆けて由良助に師直邸の図面を手渡したのも加古川本蔵である。
解釈はいろいろあろうが、この加古川本蔵なる人物、作者自身ではないかと想像する。桃井若狭助の家老として登場するが、人の心の隅々まで見抜き、先の先まで見通しがきき、巧みに世渡りの術を心得た老練の人物であるが、策を弄して策に溺れる。善人でもあり悪人でもある。
加古川本蔵 桃井若狭助の家老
戸無瀬 本蔵の後妻
小波 本蔵の先妻の子
大星由良助 塩冶判官の家老
お石 由良助の妻
力弥 子息
力弥と小波は許嫁
(歌舞伎と文楽とで名称が異なることがあるが)この登場人物の織りなす葛藤が、9段目山崎閑居の場で、ここで本蔵の人間性や行動のすべてが描き出されている。お石は子息・力弥と小波との許嫁を解消すると息巻く。理由は、松の廊下で判官が師直を討ち漏らしたのは本蔵の所為だ、と。本蔵は、判官が師直を討てばお家断絶の罪になり、その罪は大星由良助にも、そのために娘・小波の許嫁力弥にまでも及ぶと言うのが本心であったようで、戸無瀬とお石の女の饒舌の争い最中虚無僧姿であらわれて力弥の槍に突かれて死ぬ。
実はこの加古川本蔵、殿中松の廊下の前に、高師直と争う若狭助に対し、権力をわが物にして横暴極まりない師直を、ばっさりとやれ、これこの通りと、庭の松の枝を切り落として、若狭助をけしかける。ところがその裏で師直へ賄賂を贈って機嫌をとりたてる。それが後に判官の殿中松の廊下の刃傷において、判官を抱きとめて、その結果師直を助けることになる。
劇の展開上はなくてはならない役柄でありながら、その存在が目立たない。そんな描き方は作劇術としても圧巻である。しかもいまの世の中にも、どこかそこらあたりにいそうで、見かけそうな、そんな人物がおおよそ300年位も前の時代によく描けたものだと感心する次第である。
解釈はいろいろあろうが、この加古川本蔵なる人物、作者自身ではないかと想像する。桃井若狭助の家老として登場するが、人の心の隅々まで見抜き、先の先まで見通しがきき、巧みに世渡りの術を心得た老練の人物であるが、策を弄して策に溺れる。善人でもあり悪人でもある。
加古川本蔵 桃井若狭助の家老
戸無瀬 本蔵の後妻
小波 本蔵の先妻の子
大星由良助 塩冶判官の家老
お石 由良助の妻
力弥 子息
力弥と小波は許嫁
(歌舞伎と文楽とで名称が異なることがあるが)この登場人物の織りなす葛藤が、9段目山崎閑居の場で、ここで本蔵の人間性や行動のすべてが描き出されている。お石は子息・力弥と小波との許嫁を解消すると息巻く。理由は、松の廊下で判官が師直を討ち漏らしたのは本蔵の所為だ、と。本蔵は、判官が師直を討てばお家断絶の罪になり、その罪は大星由良助にも、そのために娘・小波の許嫁力弥にまでも及ぶと言うのが本心であったようで、戸無瀬とお石の女の饒舌の争い最中虚無僧姿であらわれて力弥の槍に突かれて死ぬ。
実はこの加古川本蔵、殿中松の廊下の前に、高師直と争う若狭助に対し、権力をわが物にして横暴極まりない師直を、ばっさりとやれ、これこの通りと、庭の松の枝を切り落として、若狭助をけしかける。ところがその裏で師直へ賄賂を贈って機嫌をとりたてる。それが後に判官の殿中松の廊下の刃傷において、判官を抱きとめて、その結果師直を助けることになる。
劇の展開上はなくてはならない役柄でありながら、その存在が目立たない。そんな描き方は作劇術としても圧巻である。しかもいまの世の中にも、どこかそこらあたりにいそうで、見かけそうな、そんな人物がおおよそ300年位も前の時代によく描けたものだと感心する次第である。
加古川家は、存在しています。
私は、戸籍謄本にて確認しています。
あなたはとても素晴らしい眼の持ち主です。
「加古川本蔵」という人物像を、見事に理解されている
あなたに、ありがとうございます。
ありがとうございます。