風通庵-直言

ヨモヤマ話

夏は来ぬ

2010-07-22 09:45:33 | Weblog
 「みどりの風を入れましょう」と、夏は電車の窓を開けて外からの冷風で車内の熱気を和らげる、そんな知恵も今は昔。36度を超える灼熱地獄でも、電車内は寒気さえ感じるほどの冷房。地下街とて同様で、冷暖に即座に対応できる体温の自動調整こそが、夏の健康維持に大切。

 吾輩、夏は好きである。なんとなく生きている感じの毎日である。わが祖母が健在の砌よく言っていたのは、「分限者の奥さんは夏より冬を好む」と。なぜか? それはそのはずで、冬は火鉢の火で温まり、部屋中暖かいが、夏は自然の風が頼りである。エアコンはもとより扇風機もない時代で、人間の生活が常に自然との葛藤であった。いかに自然と戦うか、自然に従順かの二者択一であった。
 
 いまは自然の営みを無視しての生活で、それが常態化して、その挙句に、自然災害である。

 夏の暑さとの戦いは昔も変わらなかったようで、徒然草の「家の作りやうは、夏をむねとすべし----」と、産経新聞<産経抄>(7,22、)が、タイムリーに取り上げてくれた。続けて「------冬は,いかなる所住まる。暑き比わろき住居は、堪え難き事なり。」と、さすがにズバリ言い当てての妙。先の、わが祖母の言とどこかは相通ずる。

 ところで、例の、あの、マンションとか言う建物が、意外なところに立てられて、ナントカカトカの宣伝文句で売り出しているが、高層住宅なら、嘗ての公団住宅の例に見る全棟が東西に長く、南受けである。従って住まいの条件としては最高である。これが不動産屋の宣伝文句に操られて、迂闊に南北に建ったマンションなんかに入ると、朝日が差し込み夕日が差し込んで、昼間は南受けの柔らかい日差しが望めない。こんなマンションこそ、徒然草の吉田兼好に先見の明があったような。日本の風土から言って、昼間は南からの日差し、柔らかい太陽の光を浴びてこそ最高の住環境と言える。
 僅かのお金の不足から、安い方のマンションを買ったはいいが、住むほどに住環境の悪さに気がつくだろう。

 戦前の農家の茅葺の建物は、南向きに「田の字型」で立てられ、屋根は分厚く茅が覆っていた。客間、表の間、奥の間に茶の間で、最低限度の家族の生活空間が満たされていた。わが国の風土には自然に従順で最高である。

 便利さから自然に逆らっても、いつかは仕返しがあろう。温室効果ガス25%削減は、果たしてどうなる事やら。エコもエゴもあったものか。

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