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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

赤ワインで煮込んだ和牛頬肉のパイ包み焼き

2007年03月13日 | メインディッシュ

本日は、赤ワインにピッタリのメインデッシュの一皿をご紹介します。

赤ワインで煮込んだ和牛頬肉のパイ包み焼きです。

グリンツィングでは定番として、和牛頬肉の赤ワイン煮込み カオール風味をお出ししていますが、今回は少しアレンジした形にしてみました。

作り方は、和牛の頬肉を一晩、塩と胡椒、コニャックでマリネしてから、たっぷりの赤ワイン(カオール)と香味野菜と共に、低温のオーブンでじっくりと柔らかくなるまで煮込みます。

煮込んだ頬肉と煮汁を煮詰めて仕上げたソース、数種類のキノコのソテーを合わせて冷やし固めてから、折り込みパイで包み込み、高温のオーブンで焼き上げます。

煮込んだお肉をパイ包み焼きにする料理は珍しいと思います。

最初は、ソースと別にする事で頬肉がパサついてしまわないか心配でしたが、ほぐした頬肉にソースをしっかりと絡めてから冷やし固める事で、ジューシーな仕上がりに出来ました。

そして、食感の違うキノコを入れる事で、最後まで飽きずに食べていただけると思います。

オーブンから出した焼きたてのパイにナイフを入れると、熱々の湯気と共に赤ワインの芳醇な香りが立ち上がります。

パイ生地の香ばしい粉の香りと濃厚なバターの香り、そこにソースと頬肉の赤ワインの香りが加わることで、とてもフランス料理らしくワインに合う一皿になります。

付け合せは、口休めとしてサッパリしたサラダにしてみました。

いつものオーソドックスな一皿も、少し目線を変えるとまた違った美味しさの表現が出来る事に気づく場合があります。

今回の一皿もその様な料理です。

そのままで十分に美味しい料理や、良質な素材でシンプルに調理する事がベストな場合などは、どこまでアレンジしたり手を加えるべきか悩む事も有りますが、たまには違う角度から物事を見てみる事も大切なのかもしれません。

自分だけの狭い価値観にとらわれずに、もっと大きな視野で考えることが出来れば色々な発見や感動が出来るはずです。

急には難しい事ですが、少しずつ努力していきたいと思います。

 

 


仔羊背肉の瞬間燻製 季節野菜添え

2007年03月02日 | メインディッシュ

本日は、ボリュームたっぷりのメインデッシュをご紹介します。

仔羊背肉の瞬間燻製 季節野菜添えです。

オーストラリア産の仔羊の背肉の部位を、骨付きの塊で調理しています。

通常はオーブンでローストする事が多いのですが、今回のメニューでは温かい燻製にしてみました。

下味に塩をしてから、香りの強い桜のチップとザラメ砂糖で、3分程の軽い燻製にかけます。

そこではまだ仔羊に火は通っていませんので、その後に低温のオーブンに入れてロゼ(バラ色)に焼き上げます。

ザラメ砂糖を入れることで飴色に色づき、香りにも甘さが加わります。

脂身の部分も燻製をかける事で美味しくなりますので、今回はいつもよりもあえて多めに残しています。

あまり上品ではありませんが、手づかみで骨の脇の部分も食べていただけたら嬉しいです。

ソースは、仔羊の骨とくず肉にニンニクを炒めてから煮出した、肉汁のソースです。

付け合せは、今の時期に美味しい野菜をフライパンでソテーした物を添えています。

今回は、アスパラガスや芽キャベツ、小玉葱等を使いました。

仔羊と言いますと、独特の匂いと癖があるように思われる方も多いのですが、良質な物は全く癖もありません、匂いと言うよりも良い香りがします。

特に今回の様に燻製にかけますと、仔羊の個性的な味と燻製香が、とても良く調和して本当に美味しくなります。

今まで仔羊が苦手だった方にも、是非食べていただきたい一皿です。

料理を作っていれば調子の良い時も有れば悪い時も有ります。

仕事だけでなく、体調だったり人間関係が上手くいかない時も少なくありません。

しかし、その事に無理をしたり我慢するのではなく、理解して受け入れる事によってのみ前に進めるのだと思います。

このシンプルで気取らない一皿を作ると、無理をして迷っている自分が忘れかけていた、大切な素直さを思い出します。

 

 

 


シャラン産鴨のロースト 赤ワインソース フォワグラ添え

2007年02月15日 | メインディッシュ

本日は、メインデッシュの一皿をご紹介します。

シャラン産鴨のロースト 赤ワインソース フォワグラ添えです。

フランス料理で鴨と言えば、シャラン産と言われるほど有名な食材です。

飼育の物ですが、窒息させて肉に血を回す為、血の香りが濃くて、とても味わい深いですし、ジビエ(野生の物)に比べると、脂がのっているのでコクが有り、食感も柔らかくて本当に美味しい鴨です。

一般的には、皮をカリッと焼いてから薄切りに仕立てる料理が多いのですが、今回は赤ワインソースとの相性を味わっていただきたい為に、あえて皮を外してローストしています。

カットも、横に二枚に切る少し変わったやり方です。

綺麗にロゼ(バラ色)に焼けた断面を見ていただきたいですし、厚切りの肉をしっかりと味わってもらいたくてこの様にしています。

贅沢ですが、鴨のフォワグラを添えてより濃厚な一皿になりました。

付け合わせは、旬の牛蒡をピューレにした物と、油でカリカリに揚げた物を添えています。

ピューレとチップの二種類にする事で、食感の違いや形の面白さが出せたと思います。

濃厚な赤ワインソースに、血の味の鴨肉と土の香りのする牛蒡を合わせて食べると、自然と上質な赤ワインが欲しくなる気がします。

さて、まだまだ寒い日が続いていますが、春の面影を感じる事も多くなってきました。

今も春からの新しいメニューを考えている所です。

今回の鴨の一皿の様に、落ち着いた冬を感じる物から、春野菜や香草などを沢山使った、華やかで初々しい皿に変わっていきます。

それぞれの季節と共に変わっていく料理に出会える事を、誰よりも自分自身が一番楽しみにしています。

 

 

 


真鱈のポワレ 蕪のスープ仕立て

2007年02月03日 | メインディッシュ

本日は、旬のお魚料理をご紹介します。

真鱈のポワレ 蕪のスープ仕立てです。

寒い冬の時期になりますと、真鱈を使う機会が多くなります。

鱈の皮は独特の風味がありますのではずし、身の部分をオリーブオイルでじっくりとポワレ(フライパン焼き)にしています。

鱈はお刺身など生では食べられませんが、火を通すと柔らかく繊細な味わいになり、とても美味しいです。

そこで、同じく冬が旬の蕪を組み合わせてみました。

寒くなるにつれて、蕪も甘さが出てきて美味しくなってきます。

そんな蕪を、優しい味わいのスープにして味わっていただきます。

作り方は、ざく切りにした蕪をオリーブオイルで軽く炒めてから、鶏のブイヨンで柔らかく煮込んだ後にミキサーにかけて、ポタージュの様にしています。

旨みやコクもも十分にありますので、クリームや牛乳、バターは必要ないと思います。

その代わりに、香りの良いエキストラバージンオリーブオイルを仕上げにかけています。

淡白な味の真鱈に、穏やかな味の蕪のスープを合わせますと、とても滋味深く美味しいです。

そして更に、蕪の葉の部分をサッとソテーして添えますと、青々しい香りとシャキシャキとした食感が加わり、最後まで飽きずに楽しんでいただけます。

鱈と蕪のとてもシンプルな料理ですが、今回この一皿を考えるにあたっての訳がありました。

理由を言いますと、最近、オリジナリティを意識するあまり、複雑でいたずらに手間のかかる料理が多くなっていました。

その結果、食材のロスが増え、自分達にもお客様にも分かり難い物になります。

今思えば、二人の料理人で作る料理としては、少し無理があったように思います。

「もっと美味しい料理を」と言う気持ちは変わりませんが、方法としてグリンツィングらしくなかったのかもしれません。

まだまだ試行錯誤の段階ですが、自分の中でこの一皿が、シンプルで美味しく合理的な料理のスタイルのきっかけになればと思っています。

 

 

 

 


蝦夷鹿とフォワグラのキャベツ包み ポワヴラードソース

2007年01月14日 | メインディッシュ

本日は、どこか懐かしい味のするメインデッシュの一皿をご紹介します。

蝦夷鹿とフォワグラのキャベツ包み ポワヴラードソースです。

料理名を見ますと、ジビエの鹿肉と高級食材のフォワグラを使い、ソースはジビエ料理の定番のポワヴラードソース(コショウ風味のソース)をかけていますので、とてもフランス料理的なのですが、一口食べてみますとどこか懐かしいロールキャベツのような感じがします。

作り方は、蝦夷鹿でも少し硬い部位と豚ノド肉を塩とスパイス、コニャックでマリネしてミンチにした物に、卵やレバー、生クリームを加えて練り合わせます。

練り合わせた鹿肉で、焼いたフォワグラを包みこみ、その周りをさらに湯でたチリメンキャベツで包みます。

ここまでを準備しておき、注文が入りましたら蒸し器で15分程蒸します。

ソースは、鹿の骨やくず肉、香味野菜を炒めた所に、赤ワインビネガー、コニャック、赤ワインを加えて煮詰めてから子牛のダシを加えて1時間程煮ます。

十分に味と香りが出ましたら漉して更に煮詰めていき、豚の血、生クリーム、バター、黒コショウを加えて仕上げます。

お皿にキャベツ包みをのせてから、ポワヴラードソースをかけます。

最後に黒トリュフをのせて完成です。

作り方としては正統的なフランス料理なのですが、日本人にも食べやすくて分かりやすい一皿です。

挽肉を使いますとどこか洋食の様で、フランス料理を食べなれない方にも喜んでいただける事が多いです。

ローストや煮込みとも違う、蒸すという調理法も、より食べやすく優しいソフトな味わいにしてくれます。

自分としては、そこまで食べやすさを意識して作った料理ではなかったのですが、結果として食べやすく、お客様に喜んでいただける形になりました。

料理に一番大切な事は、愛情であったり優しさであると、いつも思っています。

しかし、ついつい自分の都合や好みに気を取られて、お客様や周りが見えなくなることがあります。

この一皿を試食した時に、とても懐かしく優しい味がしました。

自分以上に、この料理は優しかったのです。

フランス料理はいつも、本当に大切な事を教えてくれます。