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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

鶉の五穀米詰めロースト カレー風味のソース

2007年05月21日 | メインディッシュ

本日はメインデッシュの一皿をご紹介します。

鶉の五穀米詰めロースト カレー風味のソースです。

鶉に詰め物をする仕立て方は、フランス料理ではとてもポピュラーです。

特に白身で淡白な味わいの鶉には、今回の様に香りを付けたお米等がボリューム感も出てピッタリだと思います。

グリンツィングでは、香り高く健康的にも優れた五穀米を中に詰めています。

種類は、白米に加えて黒米、赤米、蕎麦の実、アワ、キビです。

自分でブレンドしていますが、それぞれの食感や味わいが混ざり合ってとても美味しいです。

お米やご飯と聞くとフランス料理よりも和食の感じがしますが、水で炊いた白米とは違い、バターやブイヨンの旨みとコクをたっぷりと吸い込み、素材の香りも際立った一つの野菜料理のイメージで作っています。

鶉もフランス アンジュ産の良質でフレッシュな物を使っています。

肉厚で柔らかくとても美味しい食材で、冷凍の物や他の国の物とは同じ鶉でも味わいが全く違います。

個人的に鶉や鴨、鳩等のお肉は、やはりフランス産が一番美味しいと思います。

そしてソースは、スパイシーで食欲をそそる香りのカレー風味にしてみました。

ニンニクとエシャロット、カレー粉をバターで炒めたところに、白ワインビネガーと白ポルト酒を加えて煮詰め、そこに鶉のダシを合わせて更に煮詰めてから、バターとパセリの微塵切りを入れて仕上げています。

カレーの中でもチキンカレーが美味しい事から、同じ鶏系の鶉もきっと相性が良いと思い、この組み合わせにしています。

付け合せも色々な野菜を試してみましたが、特別な癖が無くて旨みの濃いほうれん草に落ち着きました。

既に詰め物にご飯を入れていますので、その他の付け合せはいらない位ですが、ほうれん草のソテーが間に入る事で軽いアクセントが付き、とても良い一皿になりました。

一人で鶉を一羽丸ごと食べる事の出来る満足感や達成感は、フランス料理ならではの美味しさです。

せっかくの美味しい料理ですので一口だけとは言わずに、美味しいワインと共に、ゆっくりと沢山味わっていただきたいと思っています。

 


和牛頬肉の赤ワイン煮込み 南仏風

2007年05月10日 | メインディッシュ

本日は、メインデッシュの一皿をご紹介します。

和牛頬肉の赤ワイン煮込み 南仏風です。

グリンツィングの定番料理として、和牛頬肉の赤ワイン煮込みをメニューに載せていますが、今回のメニューでは温かい季節に合わせて仕立て方を少し変えてみました。

今まではカオールの赤ワインをたっぷりと使い、濃厚でコクのある煮込み料理に、牛肉と相性の良い人参のピューレを添えていました。

イメージや作り方は、赤ワイン煮込みの王道のブルゴーニュ風を意識していましたが、今回はトマトやオレンジ、バジル、オリーブ等を加えた南仏風にしています。

ブルゴーニュ風に比べて味わいも穏やかですし、柑橘類やハーブ等の香りも華やかで、今の時期にピッタリです。

付け合せには旬の季節野菜を添えていますので、見た目にも賑やかです。

オリーブオイルでソテーした野菜の香ばしさが、柔らかく煮込んだお肉の味を引き立ててくれます。

頬肉を煮込んでいくと、最初はバラバラの味や香りだった赤ワインや香味野菜、トマト、オレンジ、バジル、スパイス等が徐々に馴染み合い、最終的にはバランスの取れた一つの味わいのソースになる過程は、少し大げさかも知れませんがいつも感動します。

どの様な味とは言葉では言い難いのですが、一言で言いますと南仏の味と香りがします。

いつも料理を考える時には、フランスの地方や文化、生活等を意識しています。

よい食材に的確な調理をしていても、それだけでは美味しい料理であって、美味しいフランス料理にはならない気がします。

ここはフランスではなく日本ですし、美味しさに国境は無いのかもしれませんが、だからこそ地に足が着いた料理を作っていく事の大切さを考えさせられます。

 

 

 

 


金目鯛のウロコ焼き ホワイトアスパラガスのスープ仕立て

2007年04月30日 | メインディッシュ

本日は、お魚料理の一皿をご紹介します。

金目鯛のウロコ焼き ホワイトアスパラガスのスープ仕立てです。

金目鯛の鱗を取らずに小麦粉を付けた後、多めのオリーブオイルを使って揚げるようにカリカリに焼き上げています。

他のお魚では、甘鯛をウロコ付きで焼いたり揚げたりしますが、金目鯛では珍しいと思います。

薄い鱗がチップの様にカリカリになり、食感も楽しくとても美味しくなりました。

もともと金目鯛は、味わいが濃くて個人的に好きな食材でしたが、ウロコ付け焼きにすると更に美味しくなることは本当に嬉しい発見で、この方法はとても気に入っています。

ソースも白ワインソースやぺルノー酒のソース等、色々と合わせていますが、今回は旬のホワイトアスパラガスを、スープ仕立てにして合わせてみました。

優しく繊細な身質の日本のお魚には、お肉料理の様なしっかりとした濃いソースよりも、もっと穏やかで軽い味わいのソースの方が相性が良いと思います。

そんな時に旬の野菜をスープにしますと、お魚の味を邪魔しない美味しいソースになります。

仕上げにハンドミキサーで泡立ててカプチーノ仕立てにすると、より香り高く舌触りも軽くなって美味しいです。

野菜によってスープの作り方は変わりますが、ホワイトアスパラガスで作る時は特に、その香りを意識しています。

美味しくしたいと思いますと、ついつい色々な物を加えたり、しなくてもよい作業をしてしまうことがありますが、一番大切な事はその食材の何が美味しいのかを伝える事だと思います。

余計なことをする事で、本来の美味しさが無くなってしまっては、本末転倒ではないでしょうか。

それは良質で新鮮な食材に成れば成るほど大事な気がします。

甘く程よい苦味があり、春の香りのするホワイトアスパラガスをホワイトアスパラガスらしく味わってもらえなくては意味が有りません。

しかし、言葉ではこの様に偉そうな事を言えても、実際に料理として形にする事はとても難しいと毎日痛感しています。

 

料理以外でも、何が本当で、何が正しいか分かり難い今の世の中ですが、自分のかかわるフランス料理を通して、少しでも何かが見えてきたら嬉しいです。

 

 

 


小鯛のゴマ付け焼き レモンバターソース

2007年04月10日 | メインディッシュ

本日は、香り高いお魚料理の一皿をご紹介します。

小鯛のゴマ付け焼き レモンバターソースです。

旬の小鯛に、香草入りの海老と帆立貝のムースを乗せて白ゴマをまぶし、フライパンで香ばしく焼き上げました。

小鯛はそのままですと淡白でボリュームの少ないお魚ですが、この様に仕立てる事でメインデッシュらしい食べ応えと、味わいにメリハリが付いてとても美味しくなりました。

優しい味の鯛と帆立貝や海老、香草の相性も良く、それぞれが自然に交わります。

ソースは、ノイリー酒とエシャロットを煮詰めてから鯛のだし汁を加えて更に煮詰めて、生クリームとバター、レモン汁で仕上げています。

途中で少しのサフランを入れる事で、レモンソースらしい鮮やか色になります。

ベースのしっかりとしたソースですが、レモンの酸味と香りの効いた爽やかな味わいです。

上品で美味しい鯛には、この様なシンプルなソースが似合う気がします。

付け合わせは春らしく、色鮮やかな野菜達で小鯛を取り囲んでみました。

お魚と交互に食べる事で、味わいにもリズムが出て、より楽しめると思います。

シンプルに皮付きのお魚をパリッと焼いた料理も美味しいですが、たまには少し変わった仕立て方の一皿も試していただけたら、とても嬉しいです。

 

 


骨付き仔羊のロースト ナバラン風煮込みのカネロニを添えて

2007年03月17日 | メインディッシュ

本日は、先日変わりました春のメニューからの一皿をご紹介します。

骨付き仔羊のロースト ナバラン風煮込みのカネロニを添えてです。

冬の濃厚なソースをあわせた皿や、煮込み料理を中心にしたメニューから、軽く香りの良い肉汁のソースで、シンプルに焼いたお肉を食べていただく料理に変わっていきます。

そこで今回は、春の食材の仔羊をこの時期らしく調理してみました。

柔らかく脂ののった骨付きの背肉をシンプルにローストした物に、味わいの濃い肩肉をトマトと白ワイン、香味野菜と共にじっくりと煮込んだナバラン風の煮込みを、パスタ生地で包みパルメザンチーズをかけてオーブンで焼いたカネロニを添えています。

同時に背肉のローストと肩肉の煮込みの2種類の料理を味わえる、お得な一皿です。

ソースは仔羊の骨とスジから煮出した肉汁に、香草の微塵切りと上質なオリーブオイルを加えた物です。

付け合せは春らしく緑の鮮やかな空豆と、香りの良いフランス産の春のキノコ ジロールをソテーして添えています。

綺麗なロゼ(バラ色)にローストされた仔羊の断面は、見ているだけで食欲をそそります。

味わいも、青々しい香草の香りと香ばしく焼けた仔羊の脂の香りの相性が良く、ボリュームたっぷりですがサッパリと食べていただけると思います。

 

2種類の料理を盛り合わせるためには、それなりに手間も時間もかかります。

ソースを仕込み、肩肉を煮込み、パスタ生地を作り、背肉を焼き、野菜を準備する等、この他にもこの一皿を作るためには色々な作業があります。

もちろんこの一皿だけでなく、他にも沢山の種類の料理を準備し、作らなくてはいけません。

正直に言いますと、もっと簡単な物や手間のかからない料理で良いのではないかと思う時もあります。

しかしそう思うたびに、それで何がお客様に伝わるのだろう?と悩みます。

そして結局は、手間を惜しまずに作ることでしか、美味しさや感動は伝わらないことに気づきます。

自分達が大変な分だけ、お客様に喜んでもらいたいのです。