東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

シャラン産鴨のコンフィ カスレ仕立て

2006年10月31日 | メインディッシュ

本日は、寒い時期に食べたい熱々の一皿をご紹介します。

シャラン産鴨のコンフィ カスレ仕立てです。

グリンツィングの定番 鴨のコンフィですが、秋から冬の寒い時期には、熱々のカスレにしてお出ししています。

カスレとはフランスの南部 ラングドック地方の郷土料理ですが、カステルノダリ、カルカッソンヌ、トゥールーズの3つのスタイルが有ります。それぞれに入る食材が違うのですが、基本的には白いんげん豆と豚肉または仔羊肉、そしてソーセージ、鴨のコンフィなどを使った煮込み料理です。

とてもボリュームがあり、素朴な地方料理です。 

グリンツィングでは、フランス シャラン産の香りの良い鴨腿肉をコンフィにしてから、玉葱、トマト、豚足や仔羊肩肉と共に、鶏のブイヨンを加えてじっくりと煮込んだ白いんげん豆と組み合わせています。

カスレと言うには、少しこじんまりとしていますが、郷土料理の気取らない美味しさは感じていただけると思います。

綺麗なお皿の上に綺麗に盛り付けられた料理も、それはそれで良いと思いますが、見た目には地味ですが、お肉やソース、付け合わせの野菜が一体となり、鍋や陶器の中でグツグツと美味しそうな料理も、特別な良さが有ります。

美味しそうに見える料理には、本当に人を幸せな気持ちにする力が有ると思います。

寒い日に、少しでも温かくて美味しい料理を食べて喜んでいただきたい。そんな気持ちで作っている一皿です。

 


牛ばら肉の赤ワイン煮込み ブルゴーニュ風

2006年10月28日 | 賄い料理

本日は、今の季節にピッタリの賄い料理をご紹介します。

牛ばら肉の赤ワイン煮込み ブルゴーニュ風です。

フランス ブルゴーニュ地方の郷土料理として、エスカルゴ料理などと共に大変有名な一皿です。

フランス修行中に、ブルゴーニュのビストロでもよく作っていましたので、とても懐かしくその頃を思い出しました。

今回はオーナーのご好意で、同じブルゴーニュ地方の赤ワイン ジュヴレイ・シャンベルタンを飲みながらの食事になりました。

本当に良い相性で、とても感激しました。

グリンツィングでは、和牛頬肉の赤ワイン煮込み カオール風味を一年を通してお出ししていますが、同じ牛肉の赤ワイン煮込みでも今回は、味も濃く歯ごたえもしっかりとしたオーストラリア産のばら肉を使い、フランスの地方料理そのままの素朴なイメージで仕立てています。

料理名だけ聞くと同じようなお皿を想像しますが、レストランの料理と家庭料理、ビストロ料理とは、それぞれ別の料理になります。しかしそれぞれに良さが有り、求める人がいます。

先程は別の料理とは言いましたが、そのベースやオリジナルは家庭料理、地方料理から来ている物でありますので、形や作り方、味わいなどが違っていても、結局は同じ物になると思います。

今回の様に賄い料理で、現地そのままの地方料理を作る事の意味は、オリジナルを学ぶ事でとても大切な調理の基本や、フランス人の生活や郷土を感じてよりフランス料理の理解を深め、今の自分の料理に繋げるためでも有ります。

単純に美味しい料理を作る事や食べる事に、どれだけの事を学ばなければいけないのかと、毎日怖くなります。きっと尽きる事の無い問題ですが、つくづく奥の深い世界だと考えさせられます。

 

 

 

 

 

 

 

 


仔鳩のココット焼き ジロール茸添え

2006年10月24日 | メインディッシュ

本日は、撮影の為に作りましたメインデッシュをご紹介します。

仔鳩のココット焼き ジロール茸添えです。

毎年、秋になりますと仔鳩、鴨、鶉、ジビエなどの個性的な食材を調理する機会が多くなってきます。

仔鳩も大好きな食材ですので、季節限定の特別料理としてよく使います。

鳩と言いますと、日本では食材としてあまり一般的ではありませんが、フランスでは高級食材として大変人気が有ります。

今回はココット鍋を使い、しっとりと軟らかく蒸し焼きにしてみました。

見ていただけると分かりますが、一羽を丸ごと頭付きでお出ししています。頭を食べる事に抵抗が有る方も多いと思いますが、付いている脳みそがとても美味しいので、是非とも味わっていただきたいです。

いつもは焼き上がりましたら、一度お客様に見ていただいてからお皿に盛り付けています。

その時は、香ばしく焼かれた仔鳩と焦がしバター、ニンニク、タイム、そして蓋をする前に加えるコニャックの香りが客席に広がり、大変喜んで頂けます。

ソースは、仔鳩のガラとニンニク、ジロール茸を炒めて、コニャック、白ワイン、フォンドヴォーで煮出した後漉してから、少し煮詰めてバターを加えて仕上げています。

付け合わせには、フランス産のジロール茸をソテーした物と、別皿で内臓のカナッペを添えてみました。

とてもシンプルな組み合わせと調理法ですが、軟らかくて、穏やかな血の香りのする仔鳩の美味しさを、ストレートに味わうことが出来ると思います。

秋の香りのする一皿を、美味しいワインと共に楽しむ。一人でも多くの方に味わっていただきたい幸せです。

 

 

 

 

 

 


仔羊背肉の香草パン粉焼き

2006年10月21日 | メインディッシュ

本日は、大好きな仔羊を使った一皿をご紹介します。

仔羊背肉の香草パン粉焼きです。

仔羊料理の定番ですが、パセリとニンニクの香り、マスタードの酸味、パン粉のカリッとした食感が本当に仔羊に良く合い、とても美味しい一皿です。

ソースは、シンプルな仔羊の肉汁に良質のオリーブオイルを加えた物で、付け合わせには、大振りにカットした野菜のソテーを添えています。

お肉の仔羊とソースの肉汁、付け合わせの季節野菜と、とても分かりやすい組み合わせになっています。

メニューを考える際、ついつい自分の都合で、変わった組み合わせの料理や、奇をてらった調理法の皿に行ってしまう時があります。

しかし、最近になって思うのは、この一皿は誰のために作っているのだろうか?と言う事です。単純な答えですが、お店を信用して来て下さるお客様の為なのです。

自分の自己満足のためでなく、お客様の「美味しかった」の一言が、一番大切ではないのでしょうか。

料理以外の分野でも、奇抜な物や新しいスタイルに注目が集まりますが、オリジナルをアレンジしただけの物は、結局はオリジナルを超えることは出来ないと思います。

昔から受け継がれている伝統料理や地方料理、決して古ければ良いと言うことでは有りませんが、本当の美味しさは、急に現れる物ではない気がします。

今回は初心に帰る意味も込めて、仔羊料理の基本的なこの一皿を、メニューに入れてみました。

 

 

 


秋鯖のマリネ ムスカデ風味

2006年10月19日 | 前菜

本日は、日本のフランス料理ではめずらしい食材を使った前菜を、ご紹介します。

秋鯖のマリネ ムスカデ風味です。

日本では鯖と言いますと、お寿司屋さんで食べるしめ鯖や、定食屋さんの味噌煮などのイメージが有り、フランス料理とは結びつき難い食材ですが、フランスではビストロや家庭料理の定番として良く使われています。

そこで今回は、フランス料理の中でも最もポピュラーな鯖料理の白ワイン風味のマリネに仕立ててみました。

残念ながらこの料理を、現地では食べることが出来ませんでしたが、フランスで購入した料理書などを調べて、日本人の方にも喜んでいただける形に考えてみました。

新鮮な鯖とムスカデ(ロワール地方の白ワイン)の酸味の相性がしめ鯖に近くて、とても馴染み易い味になりました。

鯖自体も日によって、関鯖や松葉産の上等な物を選んでいます。一般的に安いイメージが有りますが、1匹¥3、000以上の鯖も有りますので、立派な高級魚です。

そのくらいの物になると、味に癖も無く、食感も素晴らしくて、流石と言うような感じです。

さて作り方は、鯖を3枚に下ろして、あら塩をまぶします。30分位したら水で洗い落としておき、人参、オニオン、セロリにムスカデ(白ワイン)、水、白ワイン酢、レモンスライス、ブーケガルニ、スパイスを20分程煮出した物にゼラチンを加えて、熱くした状態で鯖の上からかけます。

そのまま常温で冷まし、冷蔵庫に入れてマリネします。オーダーが入りましたら、鯖をカットして盛り付け、野菜と煮汁のゼリーをかけてから、良質なオリーブオイルとエストラゴン、白コショウを添えて完成です。

作ってから一晩経った次の日が、味も馴染み美味しいと思います。

今日、あるお客様から、鯖のマリネが美味しかったと言っていただき、とても感激されていました。

見た目にも地味で、鯖と言う庶民的な食材を使ったこの一皿で、お客様に感動を与えることが出来た事が、料理人として何よりも嬉しかったです。