本日は、前菜の一皿をご紹介します。
ホワイトアスパラガスのグラティネ オランデーズソースです。
春と言えば真っ先に思い浮かぶ食材の一つが、ホワイトアスパラガスです。
グリンツィングにも3月から、フランス・ボルドー産の素晴らしいホワイトアスパラガスが届いています。
国産のホワイトアスパラガスも優しく繊細な美味しさが有りますが、フランス産は大きさ味わい共に素晴らしく、甘味と苦味のバランスは、味見をする度にうっとりとしてしまいます。
今、グリンツィングでは、数に限りの有るフランス産と良質な香川県産の物を使っています。
今回の写真は香川県産で、太さではフランス産に負けますが、穂先の美味しいところを4本付けていますので、十分に堪能して頂けると思います。
一年中食べる事の出来る野菜が多い中、時期の短いホワイトアスパラガスは、季節を味わう贅沢を感じさせてくれます。
今回は、そんなホワイトアスパラガスをオーソドックスなオランデーズソースと共に、シンプルに仕立ててみました。
オランデーズソースは、最初にエシャロットの微塵切りに白ワイン、白ワインビネガー、白胡椒を軽く煮詰めてから漉して、卵黄とミネラルウオーター、ゲランド産の塩と一緒に、湯煎にかけて加熱しながら空気を入れるようにかき立てていきます。
濃度が付いたところで、澄ましたエシレバターを少しずつ加え、最後に漉して完成です。
分かりやすく例えると温かいマヨネーズソースですが、空気を含ませていますので口当たりはとても軽いです。
茹でた野菜に温かいマヨネーズは、それだけでも美味しい組み合わせですが、今回は更にグラティネ(ソース等で表面を覆い焼き色を付ける)する事で、香ばしさと食感の変化を付けています。
そして、ホワイトアスパラガスの茹で方にも一工夫あります。
茹でてすぐにお皿に盛り付けるのではなく、最初に岩塩を加えた水に剥いたアスパラガスの皮を入れて10分程煮出してダシを作り、そこにアスパラガスを入れて茹でます。
火が通ったら容器に移し替えて、その煮汁と共に浸けておきます。
何でも茹で上げが美味しそうな気がしますが、煮汁から風味と塩分の戻ったホワイトアスパラガスは、ただ茹でただけの物よりも更に美味しいのです。
いつも思うのですが、食材が上質になるほどに、料理はシンプルになっていきます。
だからこそ、お客様一人一人の感性で味わっていただけたら嬉しいです。
「初心」
この時期になりますと、新入生や新入社員の話がいろいろな所で話題になります。
先日も外で食事をしていると、どこからかそんな話が聞こえてきました。
話を聞きながら、自分自身の新入社員の時を思い出し、少し懐かしい気持ちになりました。
正式には社員ではなくて契約社員でしたが、新潟の高校を卒業して東京の調理師学校に入学、そして同時に、夜はレストランで働く事になりました。
高校時代も簡単なアルバイトはしたことがありましたが、本気で働くという経験はこの時が初めてでした。
今はフランス料理のシェフをしていますが、その時は自分が何料理を作りたいかも分からず、ただ何となく決められたお店に入ってしまった事を憶えています。
その紹介していただいたお店は、一階と二階に分かれていて、二階ではフランス料理を、自分の働く一階ではもっとカジュアルな料理を出していました。
最初の入って数日は、調理場の洗い物と掃除や雑用をしていましたが、ある日から簡単な前菜の担当になりました。
それまで料理を作った経験がほとんどなく、ましてや西洋料理を食べた事はほとんどありませんでしたので、見る物も聞く事もすべてが初めてで、本当に出来るのかとても心配でした。
そこでシェフが、前菜を教えてくれました。
カットしたパパイヤにスライスした生ハムをのせる一皿です。
よくある一皿ではありますが、その時は憶える事に必死でしたので、そういう料理かと真剣に聞いていました。
そして、最後の仕上げにシェフが、ピュッと線を描くように木苺の真っ赤なソースをその白い皿にかけたのです。
「磯部分かったか?お前もやってみろ」
パパイヤと生ハムを盛り付け、そして最後に緊張しながらシェフと同じ様に木苺のソースをかけました。
その時、自分の作った一皿を見て思ったのです。
「フランス料理って綺麗だな」
それからは、フランス料理の魅力にとりつかれて今までやってきました。
今思えばあの赤いソースが、自分とフランス料理との最初の出会いでした。
今も営業中には、毎日沢山の料理を作り、最後にソースをかけています。
あの時のたどたどしくソースをかけていた自分から、14年後の今は少しは上手になったのでしょうか。
しかし、その気持ちは、昔も今も変わりません。
更新楽しみに待っています!!
メニューも新しくなりましたので、近日中には新しい記事を書きたいと思っています。
ブログを楽しみにしていただき、本当にありがとうございます。