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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

山鳩のロースト その内臓のソース

2006年12月28日 | メインディッシュ

本日は、ジビエ料理を食べたいと言うお客様の為に作りました一皿をご紹介します。

山鳩のロースト その内臓のソースです。

フランス産の野生の山鳩は、飼育の物に比べ脂分は少ないですが、その分血の香りも濃く、身質も繊細でとても軟らかくて、本当に美味しい食材です。

今回は一羽丸ごとの山鳩を、たっぷりのバターと共に低温のオーブンを使い、綺麗なロゼ(バラ色)にローストしています。

せっかくの要望でしたので、たっぷりの量を味わっていただきました。

付け合せにはフランス産のマロンのピューレを添えて、風味の強いソースとバランスをとっています。

内臓を付けたまま数日間熟成させた山鳩も、ジビエらしい野生的な風味がでてきて美味しいと思いますが、この一皿はフランスから届いたばかりの新鮮な状態の物を使い、その内臓をソースに加えて仕上げています。

新鮮な内臓だからこそ出来る仕立て方です。

内臓入りのソースと聞くといかにも癖の有る物のようですが、その独特の味わいがソースに加わると、普通のソースとは一味違った素晴らしい味わいに変わります。

このソースのベースは、山鳩の骨を炒めた後にコニャックと赤ワインを入れて煮詰めた所に、ジビエのダシを加えて煮出します。更に豚の血、生クリーム、バター、黒コショウを加えています。

ここまででも十分に濃厚で美味しいですが、そこに軽くソテーして微塵切りにした山鳩の内臓を入れますので、とても手間のかかる贅沢なソースになります。

作り方としてはとても古典的な物ですが、山鳩の骨からダシを取りその内臓で仕上げるこのソースを、今の自分には一番自然な形に感じます。

メインの食材を同じ食材の風味のソースで食べる。

このようなクラシックでしっかりとしたソースを作ると、あらためてフランス料理の素晴らしさと奥の深さに嬉しくなります。

最近になって気づき始めましたが、「新しい物や自分らしい創作は、しっかりとした基礎や基本の上に成り立つ」と言う事です。

自分らしさとは急に気づく物ではなく、毎日の小さな積み重ねによって見えてくる物ではないのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


骨付き猪肉のパン包み焼き 

2006年12月13日 | メインディッシュ

本日は、国産のジビエの一皿をご紹介します。

骨付き猪肉のパン包み焼きです。

グリンツィングでは、京都 丹波産の雌の猪を使っています。

フランス料理でジビエと言いますと、ヨーロッパ産、フランス産の青首鴨や森鳩、山鶉、野ウサギなどの、いかにも特別な食材のイメージが有りますが、最近は国産のジビエも多く使われています。

丹波産の猪の他にも、北海道の蝦夷鹿、新潟の真鴨など沢山の種類と産地があります。

フランス産のジビエに比べますと輸送に時間が掛からないため、とても新鮮な状態でお店に届きます。

その様に状態が良いので、野生と言っても獣臭さはほとんど無く、味わいも穏やかな物が多いです。

毎年グリンツィングでは、半頭分の猪や鹿を仕入れています。

11月には仔鹿、12月には猪が届きました。

 

半頭を仕入れる事で、肩肉、背肉、バラ肉、腿肉等の色々な部位を使う事が出来るので、料理人として勉強になります。

そして、どの様に仕立てるかを考える時間も、仕事の楽しさの一つです。

今回は、骨付きの背肉の部位を使ってパン包み焼きにしてみました。

脂がのり味わいもしっかりとした背肉を、ライ麦粉を使ったパン生地で包んで蒸し焼きにすると、ライ麦の素朴な香りを付けながらしっとりと軟らかく焼き上げる事が出来ます。

ソースは猪の骨とスジから作った肉汁に、タイムで香りを付けています。そして付け合わせには、数種類の茸を添えています。

茸を一緒に盛ることで、猪がいる山をイメージしてみました。

良質で味わい深いお肉ですので、その味が分かりやすい様にシンプルに仕立てています。

野生の動物ですから同じ猪でも、毎回大きさや肉質、味わいが違います。

まだまだその違いを楽しむレベルには達していませんが、少しずつ経験を重ねることで自分らしいジビエ料理が出来たら嬉しいです。

 

 

 


蝦夷鹿のシヴェ

2006年12月09日 | メインディッシュ

本日は、ワイルドな煮込み料理の一皿をご紹介します。

蝦夷鹿のシヴェです。

シヴェとはジビエの煮込み料理ですが、最後にソースを血でつないで仕上げた物を言います。

血が入らない煮込みは、シヴェではなくラグー(煮込み)になります。

今回は北海道産の蝦夷鹿の肩肉を、たっぷりの赤ワインと香味野菜で煮込んでいます。

仕立て方は洗練された一皿と言うよりは、野性味を感じる男らしい味わいを意識しています。

シンプルにマッシュポテトを敷いた上に、大きい塊の鹿肉と小玉葱とベーコン、マッシュルームを添えたブルゴーニュ風にしてみました。

一見、茶色のみの地味な色合いですが、その静かさが無骨な冬の大地を感じさせます。

作り方は、血でソースをつなぐ意外は牛肉の赤ワイン煮込みと近いやり方ですが、ポイントとしてはあまり煮込み過ぎない事が大切です。脂の少ない肉ですので煮込み過ぎるとぱさついてしまいます。あとは、鹿と相性の良いネズの実と黒コショウのスパイスを効かせています。

赤ワインの風味を優先する洗練した味わいの牛頬肉の煮込みに対して、鹿肉のシヴェはジビエの野生の香りと赤ワイン、香味野菜、血の混ざり合った複合的でクラシカルな味わいの一皿です。

せっかくの自然の味ですので、その野性味を感じることが出来るように意識しています。

ジビエだけでなくすべての食材に言える事ですが、いくら美味しくてもその食材の味や香りがしなければ意味が無いですし、本当の美味しさでは無いと思います。

鹿は鹿らしく、仔羊は仔羊らしく、海老は海老らしくと、それぞれの味わいが大切です。

自分にとっての食材に対して出来る感謝の気持ちは、それぞれの個性を大切にする事だと思っています。

人間も同じではないでしょうか?

自分らしいとは何かと、いつも考えています。

 

 

 

 

 


蝦夷鹿腿肉のロースト ポワヴラードソース

2006年11月29日 | メインディッシュ

本日は、旬のジビエ料理の一皿をご紹介します。

蝦夷鹿腿肉のロースト ポワヴラードソースです。

毎年、北海道産の蝦夷鹿を本日の特別料理としてお出ししています。

今年もジビエの季節になりましたので、蝦夷鹿の腿肉を取り寄せてみました。

一般的には、フィレ肉やロース肉を使うレストランが多いのですが、グリンツィングでは腿肉や肩肉を好んで使っています。

仕入れ値としてフィレ肉やロース肉はとても高いのですが、腿肉や肩肉はそこまで高くありませんので、リーズナブルな料金で食べていただけます。

味わいの面でも、フィレ肉やロース肉は勿論軟らかく美味しいのですが、腿肉と肩肉にもそれぞれの良い個性が有り、調理法によっては本当に美味しく出来る面白い食材です。

個人的にはローストして食べる部位として腿肉が、味も濃くて程よい噛みごたえも有るので一番好きです。

赤ワインともピッタリの相性です。

その様な訳で今回は、腿肉の塊をシンプルなローストにしています。

脂の少ない部位ですので、たっぷりのバターと共に低温のオーブンでゆっくりと火を通す事で、軟らかくジューシーに焼き上がります。

ソースはその時の気分や食材の状態でそのつど変わりますが、今回は鹿肉の定番的なソースのポワヴラードソース(胡椒風味のソース)を添えてみました。

刺激的な胡椒の香りとコニャックや赤ワインのアルコールの香り、鹿の骨から出るコクと仕上げに加えた豚血の独特の風味が、渾然一体となってとても滋味深い味になっています。

付け合わせには、香ばしい茸のソテーと根セロリと林檎のピューレを添えて鹿肉の味を引き立てています。

とても昔から有る組み合わせと調理法ですが、今も作るたびに新しい発見とすべてを理解できない難しさを感じます。

簡単に解る事では有りませんが、少しずつでも前に進める様に努力していきたいと思っています。

 

 

 

 

 


ホロホロ鶏とフォワグラのパイ包み焼き トリュフソース

2006年11月22日 | メインディッシュ

本日は、正統派のフランス料理の一皿をご紹介します。

ホロホロ鶏とフォワグラのパイ包み焼き トリュフソースです。

寒い時期になると、香ばしく焼かれたバターの香り豊かなパイ料理が食べたくなります。

今回は、ホロホロ鶏の腿肉と豚のノド肉をミンチにして鶏のレバーでつないだ物に、ソテーした鴨のフォワグラを詰めパイ生地で包んでいます。

今までにも鴨やウズラなどで作ってきましたが、少し変わった所でホロホロ鶏に挑戦してみました。

鴨などの赤身の肉に比べると若干淡白に感じますが、鶏肉よりも力強く、ウズラには無いコクが有ります。淡白な所は中のフォワグラで補っていますので、風味豊かなとても食べ応えの有るパイ包み焼きになりました。

合わせているソースは、ヒマラヤ産トリュフを使ったぺリゴール風ソースです。

本来ならフランス産のトリュフを使いたいのですが、値段がとても高いためグリンツィングの4200円のコースではとても使えません。今回はあえてレベルの落ちるヒマラヤ産のトリュフを使う必要が有るのか悩みましたが、フランス産のトリュフジュースや、たっぷりのコニャック、ポルト酒、マデラ酒等のお酒を使うことで近い物にする事ができました。

ヒマラヤ産のトリュフは、生のままサラダ等に使うには香りも弱く少し泥臭さを感じる事も有りますが、みじん切りにしてソースの中で加熱するとトリュフらしい香りも出てきます。

付け合わせには、根セロリと林檎のピューレを添えています。家禽のホロホロ鶏ですが、秋らしくジビエ料理の雰囲気を意識してみました。少し癖のある根セロリの香りと、林檎の甘味がとても相性が良いのです。

パイ包みにしたフランス産の家禽とフォワグラをトリュフのソースで食べる。まさに王道の組み合わせです。

世間には、健康を意識した必要以上に軽い料理や、素材重視の行き過ぎたソースの無いフランス料理、料理をアートとして表現しようとする理解し難い皿、色々なフランス料理が有ります。

シェフそれぞれの信念が有ると思いますので、自分には良い悪いは言えませんが、自分自身も本当のフランス料理とは何かを、考え直したいと思っています。