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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

鶉の五穀米詰めロースト マデラ酒ソース

2008年10月14日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

鶉の五穀米詰めロースト マデラ酒ソースです。

食欲の秋になりますと、食材もぐっとフランス料理らしい物に変わってきました。

香り高いキノコをはじめとして、鹿や真鴨等のジビエもその一つです。

これからの季節、それらの食材を前にして気合が入る料理人は、自分だけではないと思います。

そこで今回は、本格的なジビエの一皿の前に、同じくこの時期に脂ののっています鶉の一皿で、秋の味覚を楽しんでいただきたいと考えました。

フランス ドンブ産の良質な鶉を使用していますが、その中でも特に大き目のサイズを業者さんにお願いしています。

鶉は、骨も多くて食べづらい印象がありますが、今回は骨を全部取り除き、中に数種類の茸と共に炊いた五穀米を詰めています。

今までも、秋の定番として鶉の五穀米詰めは作っていましたが、以前は腿肉の骨を残して鶉の形を保った方法でした。

変えた結果として食べやすくなっただけでなく、見た目にもよりシンプルでモダンな感じになったと思います。

そして、ソースですが、鶉と相性の良いマデラ酒をベースにした少し甘めの味になっています。

作り方は、エシャロットの微塵切りをバターで炒めた所にシェリー酒ビネガーを加えて煮詰め、マデラ酒を入れて同じく煮詰めてからフォンドヴォーと鶉のジュ(肉汁)を加えて少し煮詰めて漉します。

最後に、漉したソースのベースにバターを溶かしこみ、塩と白コショウ、コニャックで味を調えて完成です。

エシャロットの香りにお酒の風味、ダシのコクと旨みにバターのまろやかさ、それらの要素のバランスが、このソースの味の決め手です。

そして今回は、特別にもう一皿ご紹介します。

同じくドンブ産の鶉を一羽丸ごとローストした料理です。

胸肉や腿肉の他にも、ソテーした鶉のレバーと心臓、砂肝に頭まで盛り付けていますので、鶉をすべて食べつくす仕立て方になっています。

鶉だけですと少し淡白な味わいですので、鴨のフォワグラも添えていますし、ソテーしたアンディーブとジロール茸も、鶉を引き立ててくれる名脇役です。

前の一皿(鶉の五穀米詰めロースト)に比べて食べやすさの点や内臓などの味わいの部分から、より食べ慣れた方好みの一皿だと思います。

どちらが良いとは言えませんが、同じ食材でもいろいろな表現が出来る所が、料理の奥深さであり楽しさではないのでしょうか。

今年の秋も、美味しいワインと料理をグリンツィングで楽しんでください。

 

「創る」

先日、新潟の実家からコシヒカリの新米がお店に届きました。

実家は、兼業農家としてお米を作っています。

毎年、新米の時期になるのが楽しみで、家族の作ったその味わいは、美味しさとして計れるものではなく、喜びや尊さといった方が良いのかもしれません。

自分は、両親と祖父に祖母が、今までにどれだけの手間と気持ちを込めて作ってきたかを知っています。

作る(創る)という事では、お米もフランス料理も同じかもしれません。

シェフという立場になり、物を作る事の大変さと難しさをつくづく感じています。

自分の良い所も悪い所も、手間をかけた所も気を抜いた所も、そのすべてが味や見た目に出てくるのです。

グリンツィングで毎日作る皿の上には、きっとその時の自分自身がのっているのだと思います。

経験も浅く不器用な自分の皿の上には、まだまだ自慢出来るような自分はいないのかもしれません。

 

しかし、大切な家族の創った美味しいお米を食べると、今日も頑張れるのです。

 

自分の料理は、もっともっと美味しくなる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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