東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

チョコレートのフィアンティーヌ 木苺のシャーベット添え

2007年02月26日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

チョコレートのフィアンティーヌ 木苺のシャーベット添えです。

シンプルな盛り付けが多いグリンツィングですが、もうすぐ春と言う事で少し華やかな盛り付けにしてみました。

カリカリに焼いたチョコレートのフィアンティーヌ(薄く焼いた生地)に、フランス ヴァローナ社のチョコレートを使ったチョコレートムースを挟んでいます。

フィアンティーヌのアクセントとしてカカオを乗せて焼くことで、香ばしさとほろ苦さをプラスしています。

甘く濃厚なチョコレートムースと一緒に食べると、ちょうど良く飽きずに食べていただけると思います。

付け合わせには甘酸っぱい木苺のシャーベットと、イチゴ、木苺、赤スグリ、ブルーベリーを添えています。

チョコレートと赤いフルーツの組み合わせは、個人的に好きで良く使います。

チョコレートの甘味と苦味に赤いフルーツの酸味が調和して、上品で大人らしい味わいになります。

盛り付けもチョコレートソースを使い、モダンな雰囲気を意識してみました。

料理に必要な条件として、味が美味しい事が一番大切だと思っています。

衛生的で安全な食材を使うなど、大切な事は他にも沢山有りますが、その一つとして見た目の華やかさや綺麗さなども、とても重要な事だと思います。

特にレストランで提供するフランス料理は、ただ空腹を満たす物では無いだけにその意味合いも大きいはずです。

きっとお客様も舌の上で味わうだけでなく、その香りや目で見える色や形を通して美味しさを感じておられると思います。

前菜やメインデッシュでは、その素材感を感じてもらうためにシンプルな盛り付けになることは必然的ですが、デザートではまた違った喜びを表現できればと意識しています。

少し大げさかもしれませんが、何かの事情で食べる事が出来ない人にも喜んでいただきたいのです。

人間みんなが元気なわけではなく、色々な病気や障害を持たれている人も沢山おられます。

そのために好きな物も食べる事が出来なかったり、制限されたりする場合もあると思います。

その様な方にも、目で味わっていただきたいのです。

もし味わいだけの料理でしたら、どの様に感じればよいのでしょうか?

完全には無理かもしれませんが、人間に与えられる幸せは平等であって欲しいのです。

 

 


季節のフルーツのタルト

2007年02月18日 | デザート

本日は、お客様の誕生日用に特別に作りました一皿をご紹介します。

季節のフルーツのタルトです。

レストランのグリンツィングで、この様に大きいタルトやケーキを作る仕事は少ないのですが、「お持ち帰りの出来るバースディケーキをお願いします。」とのお客様の要望で、今回はご用意する事になりました。

いつもは、その場で食べていただく皿盛りのデザートばかり作っていますので、今回はとても新鮮な気持ちで楽しんで作る事が出来ました。

お持ち帰りが出来るケーキやタルトは、レストランのデザートとは違いお菓子屋さんの分野ですので、レストランで働く自分にはあまり高度な技術が必要な物は作れませんが、シンプルで美味しく、少しでも作りたてに近い物が出来ればと、この沢山のフルーツを乗せたタルトにしました。

下の生地にはサクサクの折り込みパイを使い、そこに香りが良く味も濃厚なアーモンドクリームを入れて香ばしく焼き上げます。

その上にバニラとグランマルニエ酒(オレンジのお酒)の香りを付けたカスタードクリームを絞ってから、色鮮やかな季節のフルーツを乗せていきます。

今回は、オレンジにグレープフルーツ、キウイ、イチゴ、フランボワーズ、ブルーベリー、グロゼイユを使いました。

何と言っても、このフルーツを盛り付ける作業が一番楽しい所です。

バランスに気を付けながら色々なフルーツを一つ一つ組み合わせていくと、自分が果物の沢山実った森の中や、お花畑にいる様な気さえしてきます。

仕上げに、アプリコットのジャムを艶出しに軽く塗ってから、ミントを飾ると完成です。

お菓子屋さんの作る特別なタルトではありませんが、今の自分に出来る自分らしいタルトになったと思います。

頼まれたお客様にも、とても喜んでいただけました。

出来ないことを考えるのでは無く、今の自分に出来ることを一生懸命に頑張る事が大切だと思いますし、きっとお客様にもその気持ちは伝わると信じています。

 

 

 

 


シャラン産鴨のロースト 赤ワインソース フォワグラ添え

2007年02月15日 | メインディッシュ

本日は、メインデッシュの一皿をご紹介します。

シャラン産鴨のロースト 赤ワインソース フォワグラ添えです。

フランス料理で鴨と言えば、シャラン産と言われるほど有名な食材です。

飼育の物ですが、窒息させて肉に血を回す為、血の香りが濃くて、とても味わい深いですし、ジビエ(野生の物)に比べると、脂がのっているのでコクが有り、食感も柔らかくて本当に美味しい鴨です。

一般的には、皮をカリッと焼いてから薄切りに仕立てる料理が多いのですが、今回は赤ワインソースとの相性を味わっていただきたい為に、あえて皮を外してローストしています。

カットも、横に二枚に切る少し変わったやり方です。

綺麗にロゼ(バラ色)に焼けた断面を見ていただきたいですし、厚切りの肉をしっかりと味わってもらいたくてこの様にしています。

贅沢ですが、鴨のフォワグラを添えてより濃厚な一皿になりました。

付け合わせは、旬の牛蒡をピューレにした物と、油でカリカリに揚げた物を添えています。

ピューレとチップの二種類にする事で、食感の違いや形の面白さが出せたと思います。

濃厚な赤ワインソースに、血の味の鴨肉と土の香りのする牛蒡を合わせて食べると、自然と上質な赤ワインが欲しくなる気がします。

さて、まだまだ寒い日が続いていますが、春の面影を感じる事も多くなってきました。

今も春からの新しいメニューを考えている所です。

今回の鴨の一皿の様に、落ち着いた冬を感じる物から、春野菜や香草などを沢山使った、華やかで初々しい皿に変わっていきます。

それぞれの季節と共に変わっていく料理に出会える事を、誰よりも自分自身が一番楽しみにしています。

 

 

 


シュークルート ガルニ

2007年02月11日 | 賄い料理

本日は、賄い料理の一皿をご紹介します。

シュークルート ガルニです。

シュークルート ガルニとは、フランス アルザス地方の名物料理で、塩漬けして発酵させたキャベツを、豚肉とその加工品と共に蒸し煮にした、伝統的な郷土料理です。

フランス修行中にも何回か食べましたが、柔らかく煮込まれた豚肉と酸味の効いたキャベツの美味しさに、いつも感激していました。

パリや他の地方でも食べる事が出来ましたが、本場アルザスで食べたシュークルートは、ボリュームも味も一味違い、とても感動した記憶があります。

今回はそんな記憶を思い出したくて、賄い料理として作りました。

作り方は、最初に玉葱を鴨の脂でよく炒め、そこにシュークルート(キャベツ)を合わせます。

前日に塩漬けした骨付きの豚スネ肉とベーコンを加えて、白ワイン(アルザスの物)とブイヨンを注ぎます。

そして、ネズの実、クローブ、ブーケガルニを入れてから、蓋をして豚肉が柔らかくなるまで弱火のオーブンで煮込みます。

ジャガ芋は別の鍋で茹でてから、ソーセージは食べる数分前に鍋に加えて温めたら完成です。

液体で煮込むというよりは、キャベツで包み込んで加熱する様なイメージです。

食卓で鍋の蓋を開けた時の美味しそうな湯気が、とても幸せな気持ちにさせてくれます。

素朴な郷土料理ですのでソースはありませんが、その代わりにマスタードをたっぷりとつけて食べると、気取りの無い美味しさに感動します。

今回は、アルザスのリースリング(白ワイン)と合わせて食べる事が出来ましたので、同じ地方の料理とワインの相性の良さを十分に堪能できました。

今回の様に、グリンツィングでは賄いでフランス料理を作る事が多いのですが、その度に熱田オーナーは、「勉強の為に」と言われてその料理に合うワインを選んで飲ませてくれます。

グリンツィングで働かせていただいて3年と少し経ちましたが、数えきれない程のワインを飲ませていただきました。

ワインを飲みながら話されるオーナーの話はいつも楽しく、また貴重な経験の話ばかりですので、とても勉強になります。

それは賄いを通して、「食事の本当の豊かさとは何か」を教えていただいているのだと思います。

あまりこの様な事を言う機会もありませんでしたが、いつも感謝しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


高座豚と冬野菜の冷製ポトフ テリーヌ仕立て オーベルニュ風

2007年02月06日 | 前菜

本日は、しみじみと美味しい前菜の一皿をご紹介します。

高座豚と冬野菜の冷製ポトフ テリーヌ仕立て オーベルニュ風です。

ポトフと言いますと普通は熱々の鍋料理を想像しますが、今回は少し目線を変えて冷製のゼリー寄せにしてみました。

通常のポトフは、牛肉等のお肉と人参、洋ねぎ、蕪等の野菜を水と共に、柔らかくなるまでじっくりと鍋で煮込んで作ります。

最初に煮汁をスープとして飲み、別の皿に煮込んだお肉と野菜を盛り付けて、マスタードや塩、胡椒を添える食べ方がフランス流です。

いかにも家庭的で、フランスのお袋の味といった料理の一つですが、何とかレストランの料理としてお出し出来ないかと思い、この一皿を考えました。

ゼラチン質が多く味わいの濃い、神奈川県産の高座豚の骨付きスネ肉を、たっぷりの冬野菜と煮込み、その滋味深い煮汁と共にテリーヌ型に入れて冷し固めます。

メニュー名のオーベルニュ風の意味は、具の一つとしてチリメンキャベツを入れる事と、オーベルニュ地方の特産物のレンズ豆をサラダとして添えている事からきています。

ソースは、シェリー酒酢と赤ワイン酢にオリーブ油と胡桃油、トリュフ油を合わせた物をかけています。

ボリュームのある一皿ですが、そのソースの酸味のおかげで、サッパリと食べていただけます。

話は少し変わりますが、フランス修行中に、パリの有名なポトフ屋さんに行く機会がありました。

けっして高級なお店や上品な料理ではありませんでしたが、冬の寒い日に友達と一緒に馬鹿な話をしながら食べたポトフは、本当に温かくてしみじみと美味しかった思い出があります。

過去の楽しかった事の記憶は、今の自分にとってとても大切な財産だと思っています。

今日もその日の事を思い出しながら、この一皿を作っています。