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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

牡蠣のゼリー寄せ レモン風味

2009年03月06日 | 前菜

本日は、前菜の一皿をご紹介します。

牡蠣のゼリー寄せ レモン風味です。

牡蠣のシーズンも終わり、今はメニューには有りませんが、あるお客様のご要望からご紹介させていただきます。

時期が遅くなり申し訳ありません。

さて、牡蠣と言えば、生牡蠣にレモンを絞る食べ方が、もっともシンプルで美味しいと思います。

フランスのレストランでは、大皿に盛られた生牡蠣を囲んでシャンパーニュや白ワインを飲んでいる光景をよく見ました。

生牡蠣の美味しさを表現しながらも、フランス料理らしい一皿を作りたい。

そんな時に、フランスの三ツ星レストランに牡蠣の名物料理があった事を思い出し、そこから自分なりに考えて形にしたのが今回の一皿です。

その作り方ですが、牡蠣は殻を開けて塩水で軽く洗い、3%の塩を加えた熱湯でサッと湯がいてから、塩を加えた氷水に入れて冷やします。

そして、牡蠣のクリームは、鍋に牡蠣とひたひたの量の牛乳、塩を入れて加熱した所に戻した板ゼラチンを加え、ミキサーにかけてから裏ごします。

それを冷やしてから、8分立ての生クリームと合わせます。

最後にレモン風味のゼリーですが、東京グリンツィングの仙人秘水にレモンの皮で香りを付け、2%の塩と一緒に加熱し、戻した板ゼラチンを加えてからあら熱をとり、レモン汁を入れて漉し、冷蔵庫で冷やし固めます。

盛り付けは、お皿に岩塩を敷いて牡蠣の殻を置き、よくほぐした牡蠣クリームと湯がいた牡蠣、レモン風味のゼリーの順にのせて完成です。

牡蠣に一瞬火を通す事で旨みが強くなり、風味も穏やかになりますので、ワインとの相性も良いと思います。

牡蠣クリームは、フランス料理らしくソースの役割でもあります。

レモン風味のゼリーも酸味と塩味のインパクトは有りますが、あえて旨みを加えない事で、牡蠣本来の味を損なわないようにしています。

 

沢山のお客様に喜んでいただき、この一皿を作って本当に良かったと思っています。

 

 

「感謝」

突然ですが、ご報告があります。

ご存知の方もおられると思いますが、2月28日をもちまして東京グリンツィングを円満に退社することになりました。

お知らせが遅くなり申し訳ありません。

東京グリンツィングの料理長として5年間働かせていただきました。

本当にありがとうございました。

 

沢山のお客様の「美味しかった」にどれくらい励まされたことか。 

いつも良質な食材やワインを届けていただいた業者の皆さんにも、沢山の事を学ばせていただきました。

5年間、頑張ることが出来たのは、先輩や友達、後輩、新潟の家族に支えていただいたからで、自分一人の力ではありません。

グリンツィングでは、沢山のスタッフと一緒に仕事をさせていただきました。

楽しかった思い出もありますし、ぶつかって悩んだ時もあります。

みんなの助けがあったからこそ、自分の仕事が出来たのだと思います。

熱田会長とマダムには、人間的にも料理人としても未熟な自分に、貴重な経験と環境をあたえていただけた事を感謝しています。

沢山の事を教えていただきました。

そして、最後まで一緒にキッチンで働いてくれた新田さんには、厳しいことも言いましたし、仕事も大変だったと思います。

それでも我慢して、自分が望む以上の頑張りを見せてくれました。

一緒に働いた2年半で、本当に成長したと思います。

これからは、自信を持って頑張って下さい。

将来は、立派なシェフになると信じています。

 

お客様、業者さん、スタッフ、オーナー ・・・

すべての方に感謝しています。 

今回でグリンツィングのシェフブログは終わりになりますが、また新しい職場でこのようなブログを書ければと思います。

最後に、このような未熟な料理人のつたない文章を最後まで読んでいただき

本当にありがとうございました。

平成21年3月 

 磯部 冬人 

 

 

 

 

 

 

 

 


グリンピースの冷たいスープ

2008年05月25日 | 前菜

更新が遅くなりましてすみません。

今回は、前菜の前のアミューズの一皿をご紹介します。

グリンピースの冷たいスープです。

食事の始まりにあたって、少量でも満足感があり、旬の食材から季節を感じていただけるような一皿を提供したいと思い考えました。

スープは、好き嫌いが少なく安心感が有りますし、最初にのどごしが良く素直な味を感じる事で、後に続く食事をよりリラックスして楽しんでいただけると思います。

暑い日には冷たいスープを、寒い日には温かい物を提供する事で、ホッとした気持ちになっていただけたら嬉しいです。

今回のグリンピースのスープですが、こだわりの食材で作っています。

一緒に働いているキッチンスタッフの新田さんのお祖父さんから送っていただいたグリンピースを使わせていただきました。

奈良県にお住まいで昨年も送っていただきましたが、とても新鮮で良質なグリンピースに感動しています。

素晴らしいグリンピースを、ありがとうございます。

お店の賄いでも美味しくいただきましたが、この美味しさをお客様にも味わっていただきたいと思い、今回のスープを作りました。

一般的には野菜のスープを作る時には、甘さを補う為に玉葱を加えたり、旨みを強くする為にブイヨンを加えたりしますが、良質な食材には余計な味は必要ないと思いますので、グリンツィングではミネラルウォーター(仙人秘水)とフランス ゲランドの塩のみで煮込んでいます。

煮込んでからは、色が変わらないうちにすぐに冷やす所がポイントです。

そのままで飲んでも十分に美味しいのですが、お店ではもう少し滑らかさが欲しいので、裏ごしした後に少量の牛乳で濃度を調節しています。

そして、レストランらしい演出も必要ですので、トッピングにはカリカリに焼いたパルマ産の生ハムを崩した物と、良質なオリーブオイル、香草のシブレットの花を浮かべています。

このシブレットの花にも思い入れがあります。

先月、料理人の先輩の紹介で、東京 田無にありますハーブの生産者のニイクラファームさんに伺ったところ、お忙しい中とても熱心にハーブの説明をしていただきました。

新倉さんのお話を聞いていますと、穏やかな人柄と同時にその仕事に対する強い情熱を感じ、あらためて食材を育てる大変さと素晴らしさを実感する貴重な経験が出来ました。

その日、畑で黙々と作業をされていた新倉さんのお祖母さんが、とても印象的でした。

親切にしていただき、ありがとうございました。

今回のグリンピースのスープは、一口で飲めてしまう小さな料理ですが、その中には後に続く前菜やメインディッシュ、デザートと同じくらい、時にはそれ以上の気持ちが入っています。

是非ともグリンツィングでの食事の始まりに、小さな季節を味わっていただければと思います。

 

「仕事」

更新が遅くなり、お伝えするには少し時期がずれてしまいましたが、今年の5月の連休もお休みを頂き、実家のある新潟に行って来ました。

実家は、お米を作る兼業農家をしていまして、この時期は田植えの作業になります。

以前は、忙しいやら用事があると言っては作業を避けていましたが、最近は少しでも手伝えればと思うようになりました。

手伝うと言っても物を運んだり器具を洗ったりする位で、ほとんどの作業は両親がやっています。

今は機械が発達して、農作業も昔とは変わったと両親は言っていましたが、それでも楽な仕事ではないと思います。

そして、実家に帰るたびに祖母の事を思い出します。

いつも祖母は働いていました。

田んぼの他にも野菜を作る畑もありますので、だいたい祖母を見るのはそのどちらかでしたし、以前は母も会社に勤めていましたので、祖母の仕事量はとても多かったと思います。

朝早くから畑にいて、日が落ちて暗くなるまで働いていました。

肌は真っ黒に焼けて背中も丸くなっていましたが、よく見ると農作業のやりすぎで、手や足の指の形が変わっていた事を憶えています。

新潟にいた頃には感じなかったのですが、今こうして働く身になって祖母の素晴らしさを実感出来るようになりました。

自分の生まれる以前の祖母についての話を、祖父や両親から聞いても、そのほとんどは仕事をしていた話ばかりです。

生まれてから、働いて、働いて、働いて、そして最後まで働いて。

決して華やかな人生ではないかも知れませんが、自分はそんな生き方を心から尊敬しています。

美味しいグリンピースを送っていただいた新田さんのお祖父さん。

いつも新鮮なハーブを送っていただいています新倉さんのお祖母さん。

本当にありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 


ホワイトアスパラガスのグラティネ オランデーズソース

2008年03月31日 | 前菜

本日は、前菜の一皿をご紹介します。

ホワイトアスパラガスのグラティネ オランデーズソースです。

春と言えば真っ先に思い浮かぶ食材の一つが、ホワイトアスパラガスです。

グリンツィングにも3月から、フランス・ボルドー産の素晴らしいホワイトアスパラガスが届いています。

国産のホワイトアスパラガスも優しく繊細な美味しさが有りますが、フランス産は大きさ味わい共に素晴らしく、甘味と苦味のバランスは、味見をする度にうっとりとしてしまいます。

今、グリンツィングでは、数に限りの有るフランス産と良質な香川県産の物を使っています。

今回の写真は香川県産で、太さではフランス産に負けますが、穂先の美味しいところを4本付けていますので、十分に堪能して頂けると思います。

一年中食べる事の出来る野菜が多い中、時期の短いホワイトアスパラガスは、季節を味わう贅沢を感じさせてくれます。

今回は、そんなホワイトアスパラガスをオーソドックスなオランデーズソースと共に、シンプルに仕立ててみました。

オランデーズソースは、最初にエシャロットの微塵切りに白ワイン、白ワインビネガー、白胡椒を軽く煮詰めてから漉して、卵黄とミネラルウオーター、ゲランド産の塩と一緒に、湯煎にかけて加熱しながら空気を入れるようにかき立てていきます。

濃度が付いたところで、澄ましたエシレバターを少しずつ加え、最後に漉して完成です。

分かりやすく例えると温かいマヨネーズソースですが、空気を含ませていますので口当たりはとても軽いです。

茹でた野菜に温かいマヨネーズは、それだけでも美味しい組み合わせですが、今回は更にグラティネ(ソース等で表面を覆い焼き色を付ける)する事で、香ばしさと食感の変化を付けています。

そして、ホワイトアスパラガスの茹で方にも一工夫あります。

茹でてすぐにお皿に盛り付けるのではなく、最初に岩塩を加えた水に剥いたアスパラガスの皮を入れて10分程煮出してダシを作り、そこにアスパラガスを入れて茹でます。

火が通ったら容器に移し替えて、その煮汁と共に浸けておきます。

何でも茹で上げが美味しそうな気がしますが、煮汁から風味と塩分の戻ったホワイトアスパラガスは、ただ茹でただけの物よりも更に美味しいのです。

いつも思うのですが、食材が上質になるほどに、料理はシンプルになっていきます。

だからこそ、お客様一人一人の感性で味わっていただけたら嬉しいです。

 

「初心」

この時期になりますと、新入生や新入社員の話がいろいろな所で話題になります。

先日も外で食事をしていると、どこからかそんな話が聞こえてきました。

話を聞きながら、自分自身の新入社員の時を思い出し、少し懐かしい気持ちになりました。

正式には社員ではなくて契約社員でしたが、新潟の高校を卒業して東京の調理師学校に入学、そして同時に、夜はレストランで働く事になりました。

高校時代も簡単なアルバイトはしたことがありましたが、本気で働くという経験はこの時が初めてでした。

今はフランス料理のシェフをしていますが、その時は自分が何料理を作りたいかも分からず、ただ何となく決められたお店に入ってしまった事を憶えています。

その紹介していただいたお店は、一階と二階に分かれていて、二階ではフランス料理を、自分の働く一階ではもっとカジュアルな料理を出していました。

最初の入って数日は、調理場の洗い物と掃除や雑用をしていましたが、ある日から簡単な前菜の担当になりました。

それまで料理を作った経験がほとんどなく、ましてや西洋料理を食べた事はほとんどありませんでしたので、見る物も聞く事もすべてが初めてで、本当に出来るのかとても心配でした。

そこでシェフが、前菜を教えてくれました。

カットしたパパイヤにスライスした生ハムをのせる一皿です。

よくある一皿ではありますが、その時は憶える事に必死でしたので、そういう料理かと真剣に聞いていました。

そして、最後の仕上げにシェフが、ピュッと線を描くように木苺の真っ赤なソースをその白い皿にかけたのです。

「磯部分かったか?お前もやってみろ」

パパイヤと生ハムを盛り付け、そして最後に緊張しながらシェフと同じ様に木苺のソースをかけました。

その時、自分の作った一皿を見て思ったのです。

「フランス料理って綺麗だな」

それからは、フランス料理の魅力にとりつかれて今までやってきました。

今思えばあの赤いソースが、自分とフランス料理との最初の出会いでした。

今も営業中には、毎日沢山の料理を作り、最後にソースをかけています。

あの時のたどたどしくソースをかけていた自分から、14年後の今は少しは上手になったのでしょうか。

しかし、その気持ちは、昔も今も変わりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


牡蠣とポワロー葱のテリーヌ トリュフ風味

2008年01月06日 | 前菜

明けまして おめでとうございます

今年も、東京グリンツィングの沢山の料理をご紹介していきます。

本日は、前菜の一皿から 牡蠣とポワロー葱のテリーヌ トリュフ風味です。

旬の牡蠣を相性の良いポワロー葱と一緒に、冷製のテリーヌにしてみました。

最初は、フランスの家庭やビストロで食べる、茹でたポワロー葱にドレッシングをかけて食べる料理を作りたかったのですが、ポワロー葱だけでは物足りないので、牡蠣と黒トリュフを組み合わせてレストランらしい一皿にしました。

旨みの濃い牡蠣と柔らかくて甘いポワロー葱に、爽やかな柚子の酸味と高貴な黒トリュフの香り、そこに濃厚で滑らかなクリームソース、見た目は地味ですが、しみじみとした美味しさを感じていただけると思います。 

作り方は、柔らかく茹でたポワロー葱に、サッと湯がいて冷やした牡蠣を、柚子で香りと酸味を付けた水にゼラチンを加えた物と一緒に、テリーヌ型に詰めて冷やし固めます。

下に敷いたクリームソースは、牡蠣を塩味を付けた牛乳で火を通してから、ゼラチンを加えてミキサーにかけて漉した物に、同量の生クリームを合わせています。

皿にクリームソースをたっぷりと流してから、1㎝位にカットしたテリーヌをのせて、最後に黒トリュフの微塵切りと白ワインビネガー、オリーブオイル、トリュフオイル、塩を混ぜたドレッシングを上にかけて完成です。

きりっと冷えたテリーヌに、トリュフドレッシングのツンとした酸味、牡蠣クリームの塩味が、上質の白ワインにピッタリの前菜だと思います。

 

毎年の事ですが、去年は色々な事がありました。

そして、今年も色々な事があるでしょう。

去年は、沢山のお客様にグリンツィングに来ていただき、沢山の料理を食べていただきました。

調理場にいますので、実際に会ってお礼を言う事は出来ませんが、お客様にはいつも感謝しています。

同じく、読みにくい自分のブログをいつも読んでいただいている方にも感謝しています。

お店の外でいつも自分を見守ってくれている家族や先輩、友達、後輩にも感謝しています。

毎日、新鮮で良質な食材やワインを届けてくれる業者さんにも感謝しています。

料理人としての経験とチャンスをいただいた熱田オーナーにも感謝しています。

そして、一緒に頑張ってくれるキッチンスタッフに感謝しています。

今の自分の仕事は、一人では出来ません。

 

本当にありがとうございます。

そして、今年もよろしくお願いいたします。

皆さんにとって良い年でありますように。 

 


ランド産フォワグラのテリーヌ アルマニャック風味 

2007年12月24日 | 前菜

本日は、前菜の一皿をご紹介します。

ランド産フォワグラのテリーヌ アルマニャック風味です。

フランス料理で最も定番の食材のフォワグラを、香り高く濃厚で滑らかなテリーヌにしています。

テリーヌと言いますと、上品に四角にカットした形が一般的ですが、今回は豪快に、ざっくりとスプーンですくって盛り付けてみました。

今回使っていますフォワグラは、良質で有名なフランス ランド地方の鴨の物で、とても鮮度の良い状態で届いています。

他の産地のフォワグラも使う事が出来ますが、上等なアルマニャックをたっぷりと使ったこのテリーヌには、どうしてもランド産のフォワグラが使いたかったのです。

この一皿のイメージは、フランス南西部がテーマとしてありますので、ランド産のフォワグラにアルマニャックの香りを付け、写真では見えませんが、カオールの赤ワインで煮たプルーンのコンポートを添えています。

そして別皿で、こんがりとトーストしたブリオッシュをお出ししています。

今の時期には、特別に黒トリュフのスライスをのせていますが、こちらは残念ながらフランス産ではなくヒマラヤ産になります。

とても簡素な一皿ですが、気取り無く、旨い物をたっぷりと味わっていただきたい思いで作っています。

皿の上が明確なだけに逆にワインは、お客様の気分で自由な楽しみ方が出来ると思います。

しっかりとした個性を持ちながらも、余計な物が無く、余裕の有るおおらかな料理にこそ、ワインは惚れる気がします。

 

自分自身、この様にシンプルな料理をきちんと作りたい思いが、今とても強くなっています。

しかし反面、本当に素材を理解し、その調理法を自分の物にする事が、すごく大変な作業だと改めて痛感しています。

程々に美味しい料理に比べて、本当に美味しい料理を作る難しさは、歳を重ねるごとに感じてます。

「難しい」だからこそ、挑戦したいのです。

以前は、自分にも特別な才能が有れば、どんなに楽だろうと考えた時期も有りましたが、今は必要ないと思っています。

そんな限界の有る物に頼る事の愚かさを、フランス料理の仕事から学びました。

「コツコツと努力する」それ以外に、この難しい壁を乗り越える方法は有りません。

そこに限界は無いと信じています。