goo blog サービス終了のお知らせ 

東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

蝦夷鹿腿肉のロースト ポワヴラードソース

2006年11月29日 | メインディッシュ

本日は、旬のジビエ料理の一皿をご紹介します。

蝦夷鹿腿肉のロースト ポワヴラードソースです。

毎年、北海道産の蝦夷鹿を本日の特別料理としてお出ししています。

今年もジビエの季節になりましたので、蝦夷鹿の腿肉を取り寄せてみました。

一般的には、フィレ肉やロース肉を使うレストランが多いのですが、グリンツィングでは腿肉や肩肉を好んで使っています。

仕入れ値としてフィレ肉やロース肉はとても高いのですが、腿肉や肩肉はそこまで高くありませんので、リーズナブルな料金で食べていただけます。

味わいの面でも、フィレ肉やロース肉は勿論軟らかく美味しいのですが、腿肉と肩肉にもそれぞれの良い個性が有り、調理法によっては本当に美味しく出来る面白い食材です。

個人的にはローストして食べる部位として腿肉が、味も濃くて程よい噛みごたえも有るので一番好きです。

赤ワインともピッタリの相性です。

その様な訳で今回は、腿肉の塊をシンプルなローストにしています。

脂の少ない部位ですので、たっぷりのバターと共に低温のオーブンでゆっくりと火を通す事で、軟らかくジューシーに焼き上がります。

ソースはその時の気分や食材の状態でそのつど変わりますが、今回は鹿肉の定番的なソースのポワヴラードソース(胡椒風味のソース)を添えてみました。

刺激的な胡椒の香りとコニャックや赤ワインのアルコールの香り、鹿の骨から出るコクと仕上げに加えた豚血の独特の風味が、渾然一体となってとても滋味深い味になっています。

付け合わせには、香ばしい茸のソテーと根セロリと林檎のピューレを添えて鹿肉の味を引き立てています。

とても昔から有る組み合わせと調理法ですが、今も作るたびに新しい発見とすべてを理解できない難しさを感じます。

簡単に解る事では有りませんが、少しずつでも前に進める様に努力していきたいと思っています。

 

 

 

 

 


牡蠣のゼリー寄せ シャンパーニュ風味

2006年11月26日 | 前菜

本日は、お客様に人気の前菜をご紹介します。

牡蠣のゼリー寄せ シャンパーニュ風味です。

毎年グリンツィングでは、寒い時期になりますとこの一皿をメニューに載せています。

本来は生牡蠣としてお出ししたい気持ちもあるのですが、せっかくレストランに来ていただいているので、家では出来ない食べ方で味わってもらいたいと思っています。

実際に食べていただくと、限りなく生牡蠣に近い味わいに、皆さんが喜ばれます。

作り方は、新鮮な殻付きの牡蠣を開け、熱湯にサッと通してから冷やして置きます。

牡蠣のクリームは、他の牡蠣を牛乳で火を通してゼラチンを加え、ミキサーにかけてから漉して冷やします。そこに6分に立てた生クリームを合わせて、塩とタバスコで味を調えて冷蔵庫で冷し固めます。

そしてゼリーは、ミネラルウオーターにシャンパーニュを合わせて火にかけて沸かし、塩で味を付けてからゼラチンを加えて冷し固めます。

人参、小玉葱、セロリを小さくカットして湯がきます。

仕上げに、岩塩を敷いたお皿に牡蠣の殻を置き牡蠣のクリームを流してから牡蠣をのせます。湯がいた野菜をのせて上からシャンパーニュ風味のゼリーをかけて完成です。

牡蠣を湯がいていますので、生では有りませんが、火を通す事で風味も穏やかになって食べやすくなりますし、牡蠣の味わいも生より濃くなる様に感じます。

下に敷いてあるクリームも牡蠣の風味がいっぱいで、一緒に食べていただくとより濃厚な味わいになります。牡蠣とクリームの相性は本当に良いと実感できました。

上にかけるゼリーは、牡蠣をシャンパーニュと共に楽しんでいるイメージと牡蠣自体の海水を合わせた感じで仕上げています。

この一皿を食べたあるお客様は、海の中を観ている様でとても幻想的ですね。と言われ喜ばれていました。

そんな風に自分の料理を食べていただきとても嬉しかったです。料理は味が美味しい事が大事ですが、他にも感性として味わっていただく事が出来たら、もっと素晴らしいと思います。

 

 

 

 


ホロホロ鶏とフォワグラのパイ包み焼き トリュフソース

2006年11月22日 | メインディッシュ

本日は、正統派のフランス料理の一皿をご紹介します。

ホロホロ鶏とフォワグラのパイ包み焼き トリュフソースです。

寒い時期になると、香ばしく焼かれたバターの香り豊かなパイ料理が食べたくなります。

今回は、ホロホロ鶏の腿肉と豚のノド肉をミンチにして鶏のレバーでつないだ物に、ソテーした鴨のフォワグラを詰めパイ生地で包んでいます。

今までにも鴨やウズラなどで作ってきましたが、少し変わった所でホロホロ鶏に挑戦してみました。

鴨などの赤身の肉に比べると若干淡白に感じますが、鶏肉よりも力強く、ウズラには無いコクが有ります。淡白な所は中のフォワグラで補っていますので、風味豊かなとても食べ応えの有るパイ包み焼きになりました。

合わせているソースは、ヒマラヤ産トリュフを使ったぺリゴール風ソースです。

本来ならフランス産のトリュフを使いたいのですが、値段がとても高いためグリンツィングの4200円のコースではとても使えません。今回はあえてレベルの落ちるヒマラヤ産のトリュフを使う必要が有るのか悩みましたが、フランス産のトリュフジュースや、たっぷりのコニャック、ポルト酒、マデラ酒等のお酒を使うことで近い物にする事ができました。

ヒマラヤ産のトリュフは、生のままサラダ等に使うには香りも弱く少し泥臭さを感じる事も有りますが、みじん切りにしてソースの中で加熱するとトリュフらしい香りも出てきます。

付け合わせには、根セロリと林檎のピューレを添えています。家禽のホロホロ鶏ですが、秋らしくジビエ料理の雰囲気を意識してみました。少し癖のある根セロリの香りと、林檎の甘味がとても相性が良いのです。

パイ包みにしたフランス産の家禽とフォワグラをトリュフのソースで食べる。まさに王道の組み合わせです。

世間には、健康を意識した必要以上に軽い料理や、素材重視の行き過ぎたソースの無いフランス料理、料理をアートとして表現しようとする理解し難い皿、色々なフランス料理が有ります。

シェフそれぞれの信念が有ると思いますので、自分には良い悪いは言えませんが、自分自身も本当のフランス料理とは何かを、考え直したいと思っています。

 

 

 


フォワグラとイチジクのテリーヌ

2006年11月19日 | 前菜

本日は、高級食材のフォワグラを使った一皿をご紹介します。

フォワグラとイチジクのテリーヌです。

グリンツィングでは前菜の一皿として、冷製のフォワグラのテリーヌを年間を通してお出ししています。

それぞれの季節によって、付け合せや仕立て方は変わりますが、その贅沢な味わいはワインの友として欠かせません。

今回11月からのメニューでは、白ポルト酒でマリネしたドライイチジクを同じく白ポルト酒とコニャックでマリネした鴨のフォワグラと一緒に、湯煎焼きにして冷やし固めたテリーヌを作っています。

今までにも色々なフルーツを合わせてみましたが、今回のイチジクは絶対の相性の良さを感じさせる自信作です。

そこで盛り付けも、他の飾りや付け合わせを排除して、それのみを味わっていただく形にしてみました。

飾り気も無く、さびしく感じる方もおられるかもしれませんが、個人的には滑らかなフォワグラとイチジクのモダンな断面を見てもらえれば、見た目にも十分に味わっていただける形になったと思っています。

シンプルな表現は決して簡単な事では無いと思います。丁寧な仕込みと良質な食材、計算された料理人の経験と感性が有って、初めて成り立つ物ではと最近になって感じます。

まだまだ完璧には程遠いですが、少しずつでも理想の形に近づきたいと思っています。


マロンのスフレ

2006年11月15日 | デザート

本日は、熱々のデザートをご紹介します。

マロンのスフレです。

フランス産のマロンペーストを使っているのでとても香ばしく、コクのある味になっています。

通常のデザートは営業前に仕込んでおいた物を、オーダーが入ると組み立てたり温めなおして盛り付ける場合がほとんどですが、スフレはその場で混ぜ合わせて焼かなければいけないため、とても手間が掛かります。

しかも、少しの生地の状態の違いやオーブンの温度で、焼き上がりが変わってしまいます。そのためオーダーが通るたびに緊張します。

今回のマロンのスフレは、最初の試作の段階ではなかなか上手くいかず苦労しました。

結果としては大きく膨らむ様になり、周りはカリッと中はふわふわで、スプーンを入れるとマロンとラム酒の穏やかな香りが立ち上がる、とても美味しい一皿になりました。

グリンツィングではマロンのスフレの他に、カルバドス酒やグランマルニエ酒などのお酒を使った物もお出しする事が有ります。

それぞれに良さが有りますが、焼きたての一瞬を味わっていただく、レストランならではの贅沢なデザートに変わりはありません。

営業中の忙しい中、他の席のお肉やお魚を焼きながらや、前菜を盛り付けをしながらスフレを焼く事はとても難しいですが、無理と思えば何も出来なくなってしまいます。

難しい事に挑戦することで、色んな発見や今まで出来なかった事ができる様になり、自分自身が成長出来ると信じています。

小さなキッチンでは大変なデザートですが、大きく膨らんだスフレを見たときのお客様の喜ぶ顔を見ると、挑戦してよかったと本当に思います。