本日は、デザートの一皿をご紹介します。
春のフルーツとマスカルポーネのアイスクリーム タルト仕立てです。
苺やフランボワーズ(木苺)、グロゼイユ(赤スグリ),ブルーベリー等の旬のフルーツに、相性の良いマスカルポーネチーズで作ったアイスクリームと薄く焼いたテュイル(小麦粉やバター等で作った瓦型の焼き菓子)を組み合わせてみました。
お菓子屋さんの季節のフルーツが沢山のっているタルトをイメージしましたが、ここではレストランらしく作りたてのデザートにアレンジしています。
お菓子屋さんには、いろんな種類のタルトが有りますし、レストランやビストロでもタルトは定番のデザートです。
個人的にも、林檎のタルトや苺のタルトは大好きなお菓子ですが、一つだけ問題と言いますか残念な事があります。
それは、一度でも冷蔵庫に入れてしまうと、せっかく香ばしく焼かれた生地が美味しくなくなってしまう事です。
タルトを焼いた当日は、生地も香ばしく本来の美味しさのままですが、翌日に残すために冷蔵庫に入れてしまうと、その状態は極端に変わってしまいます。
しかも、今回のデザートのベースになったフレッシュフルーツのタルトは、常温で保管する事が出来ませんので、その美味しさの寿命はとても短いのです。
タルトのそんな欠点を、何とかグリンツィングらしい美味しさに変えたいと思った事が、この一皿の始まりでした。
焼き立てで香ばしいサクサクとした生地、新鮮で瑞々しく香り高いフルーツ、濃厚な旨みがありながら食事の最後にサッパリと無理なく食べる事の出来るクリーム・・・
そして、今回のデザートが生まれました。
正直、タルトと言うにはお菓子屋さんに申し訳ないと思いましたので、メニューにはタルト仕立てとしていますが、すべてをその場で組み立てるレストランらしい一皿になったと思っています。
下に敷いてあるソースは、フランボワーズに香り高いキルシュ(サクランボのブランデー)を加えて作っています。
普段は、料理を作りながらお客様の性別を意識する事は少ないのですが、この一皿を作る時は、なぜか女性のお客様をイメージしてしまいます。
春を感じながら食べていただけたら、とても嬉しいです。
「ワインと人」
熱田オーナーからは、いつもいろいろなお話を聞かせていただき勉強になります。
これから書く事も、とても興味深いお話でした。
熱田オーナーは、人と話をされる時に、生まれた所や育った環境、家族の事を良く聞かれます。
自分自身、最初は話のきっかけ作りか、相手に喜んでもらう位の理由にしか思っていませんでした。
自分の出身地の新潟の話も、今までに沢山話しました。
不思議に思っていたある日、熱田オーナーが話の中でこう言われたのです。
「人にもテロワールがある。」
ワインや食材のように、人間もどこで生まれ育ったかによって違いがある。
ワインでは良くテロワールという言葉を使います。
日本語で同じ言葉があるかわかりませんが、「風土」や「地域性」等の意味があると思います。
今まで人間をワインや食材のように産地で考えた事が無かったので、その発想にびっくりしました。
今までにグリンツィングでも、いろんな人と働いてきました。
北海道、茨城、神奈川、千葉、埼玉、東京、大阪、島根・・・
確かにそれぞれに良さが有り、その土地らしさが有りました。
誠実で真面目であったり、素朴で素直であったり、とても優しかったり・・・
正月にお休みを頂き、新幹線で実家のある新潟に帰る時、いつも思う事が有ります。
途中に長いトンネルがあるのですが、そこを抜けると雪におおわれた別の世界に入ります。
今は東京で普通に働いていますが、生まれてから高校までは、この世界で生活していました。
小学生の時に、学校までの何も無い雪道を2時間近く歩いて通っていた時の記憶は、自分の中から消える事は無いでしょう。
新幹線の中で熱田オーナーの言葉を思い出し、自分を育ててくれた故郷に愛情と感謝を感じています。
自然の中では、人間も葡萄も同じなのかもしれません。