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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

真鯛のポワレ エストラゴン風味 カプチーノソース

2007年09月16日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

真鯛のポワレ エストラゴン風味 カプチーノソースです。

真鯛は、お刺身風のマリネにすると美味しいですが、皮付きをフライパンでパリッと焼いた美味しさも、沢山の方に喜ばれる調理法です。

グリンツィングでは、前菜として真鯛を使う機会が多いのですが、肉厚な身を焼いた時の美味しさも是非楽しんでいただきたいと思い、最近はメインディッシュでもお出ししています。

他のお魚でも皮付きでポワレ(フライパン焼き)しますが、特に真鯛は皮が美味しいので、個人的にも大好きです。

しかし真鯛にも、全く欠点が無い訳では有りません。

日本のお魚全般に言えますが、繊細で鮮度も良い為に生で食べるには素晴らしいのですが、加熱する場合は少しでも火を通しすぎると、すぐにパサパサになってしまうのです。

特に真鯛は、フライパンで焼くとパサつきやすく、しっとりと柔らかく仕上げる為には、とても注意が必要です。

薄い身の場合は、そのまま焼き上げてしまいますが、大きくて身の厚い場合は、火が通るまでに時間がかかり乾燥しやすいので、皮がある程度焼けた所で、軽く蓋をして蒸し焼きにしています。

火の通る時間も短くなりますし、蒸気で身もしっとりと仕上がりますので、この方法は気に入っています。

そしてソースですが、仕上げにカプチーノの様に泡立てていますので、バターや生クリームを沢山使っていても、とても軽い味わいになっています。

作り方は、スライスしたマッシュルームとエシャロット、ニンニクを鍋に入れてバターで炒めた所に、流水にさらしておいた真鯛の頭や骨のぶつ切りを加えて軽く炒めます。

その鍋に白ワインを注ぎ強火で煮詰めてから、水とブーケガルニ、スパイス、岩塩を入れて20分程煮た後に、静かに漉します。

漉した液体を別の鍋で更に煮詰めていき、少量の生クリームとたっぷりのバターを加えてから、ハンドミキサーで泡立てて完成です。

真鯛の頭と骨からは、とても美味しいダシが取れますので、真鯛は本当に無駄の出ない良い食材です。

仕上げに散らしたエストラゴンも、お魚やクリーム、バターとの相性が良くて、香りのアクセントとして効果を発揮しています。

ポワレしたお魚に、季節野菜とバターソースを添えただけの料理ですが、一つ一つのプロセスをきちんと的確にする事で、少しでも特別な一皿に出来ればと思っています。

料理には、新しさや奇抜さも大切かもしれませんが、まだ若い自分だからこそ、基本の大切さを意識した仕事を、常に忘れない様にしていきたいです。


国産牛ランプ肉のグリル エシャロットとディジョン産マスタードのソース

2007年09月02日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

国産牛ランプ肉のグリル エシャロットとディジョン産マスタードのソースです。

以前にも、国産牛のランプ肉のグリルをご紹介しましたが、今回は更に進化させた一皿を見て頂きたいと思います。

前回はグリルしたランプ肉に、赤ワインを使った定番のボルドレーズソースの組み合わせでしたが、国産牛の甘くて香りの良い脂の旨みを、より美味しく味わってもらえる様にと、同じ甘さを持ったエシャロットとマデイラ酒をベースに、シェリービネガーとディジョン産の粒入りマスタードで酸味と食感を加えたソースに変えてみました。

甘くて少し酸っぱい味わいが、日本人の大好きな美味しさです。

勿論フランスでも、牛肉のステーキやグリルにエシャロットソースの組み合わせは王道ですし、更にマスタードとお肉との相性は、間違いありません。

そして盛り付けも、前回と違う形と思いまして、2人前の塊をグリルしてから半分にカットしてみました。

ロゼ(バラ色)に焼けた断面を、目で見て味わう事が出来ますし、大きな塊で調理した方が、より柔らかくジューシーになると思います。

さて、ソースの作り方ですが、鍋にバターを熱した所に、ランプ肉の端の部分やスジを小さくカットしたものを加えて、じっくりと炒めていきます。

途中、皮付きのニンニクとエシャロットを加えて、更に香ばしく炒めます。

十分に焼き色が付きましたら、タイムとローリエ、黒胡椒を加えて軽く炒めて香りを出し、そして余分な脂を捨てた後に、ミネラルウオーターを入れてなべ底の旨みを煮溶かします。

軽く煮詰めたら、フォンドヴォー(子牛のダシ)を入れて15分程煮込んで漉します。

ここまでが、このソースのベースのベースです。

そしてここからが、ソースのベースです。

鍋にバターを熱してエシャロットの微塵切りを炒めた所に、シェリービネガーを加えて煮詰めます。

完全に煮詰まったら、マデイラ酒をたっぷりと注ぎ更に煮詰めていき、先ほどのベースのベースを加えて、ソースらしい味になるまで軽く煮詰めます。

ここまでが、ソースのベースです。

そして、ランプ肉のオーダーが入りましたら、小鍋でソースのベースを温めた所に、ディジョン産の粒入りマスタードとイタリアンパセリの微塵切りを加えてから、塩と胡椒、バターで味を調えて完成です。

ここにはこれ以上書きませんが、フォンドヴォー(仔牛のダシ)からの作業を考えると、とても沢山の食材と手間がかかっています。

このソースの味見をすると、まさに旨みの詰まった凝縮した液体と言う感じがします。

フランス料理にとって本当に大切な物とは「やはりソースなのでは」と、最近になって特に思います。

牛肉や仔羊、鶏等の肉に限らず、魚や海老、野菜等、ほとんどの食材を調理すると、必ずその骨や殻、スジ、脂、皮等の色々な部位が残ります。

では、それらの部位はどうするのでしょうか?そのままでは美味しくないので、捨ててしまうのでしょうか?

そんな部位を、ソースとして皿の上に再生出来る事こそが、フランス料理の素晴らしさであり、本質だと感じます。

美味しいソースを作る過程の中で、フランス料理の魂に触れる事が出来るように、これからも努力していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 


国産牛ランプ肉のグリル ボルドレーズソース

2007年07月01日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

国産牛ランプ肉のグリル ボルドレーズソースです。

定番の和牛頬肉の赤ワイン煮込みに代わる牛肉料理として考えてみました。

グリンツィングでは煮込み料理は別として、牛肉をメインディッシュとしてメニューに載せる事が今まであまり有りませんでした。

その理由としては、比較的食べる機会の多い牛肉よりも、仔羊や鴨、鳩等のフランス料理ならではの食材を食べていただきたかった事と、和牛肉の高すぎるお値段、必要以上の脂の霜降りがくどくて、フランス的なソースに合わせ難い等の理由がありました。

しかし個人的には、分厚く焼いた牛肉ならではのダイナミックな美味しさも大好きなので、何とかグリンツィングらしい一皿としてこの様な形にしてみました。

輸入牛に比べて脂の香りが良くて柔らかい国産の牛肉ですが、高級なヒレ肉やサーロインではなく、若干リーズナブルな部位のランプ肉を使う事で、¥4、200のメニューでも食べていただく事が出来、そして過剰な脂の無い赤身ならではの味わいの濃さが、濃厚なソースを十分に受け止めてくれます。

ですがランプ肉は良い所ばかりでは無く、無理に焼くと身が縮みやすくて、とても固くなりやすい部位なのです。

そこで今回は、鉄のグリル板を使い少し時間をかけて焼く方法をとっています。

一般的なフライパンと高温のオーブンを使うローストですと、肉に一気に負担が掛かり繊維が縮んでしまう事で、固くなるだけでなく大切な肉汁も外に出て行ってしまいます。

しかし焦らずにじっくりと火を通すことで、肉に過剰な負担が掛からず、肉汁たっぷりのジューシーで柔らかい味わいになります。

合わせるソースは、フランス料理の王道のボルドレーズソースです。

基本的にはエシャロットとニンニクをバターで炒めた所に、たっぷりの赤ワインを加えて煮詰めていき、そこに旨みの詰まったフォンドヴォーを合わせて更に煮詰めます。

そして漉した後に塩、胡椒で味を調え、少量のバターを溶かし込んで仕上げます。

グリンツィングでは基本の作り方と少し違いますが、赤ワインだけでなくポルト酒とマデラ酒を加える事で、より深みのあるソースにしています。

付け合せには、ほろ苦いセージの香りを付けたジャガ芋のニョッキをソテーして添えています。

とてもシンプルですが、是非ともワインと共に楽しんでいただきたい一皿です。

新鮮で良質な食材を美味しく食べるには、そんなに複雑で沢山の要素は必要ないのではと、最近になって特にそう思います。

 

 


仔羊のロースト 南仏風

2007年06月25日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

仔羊のロースト 南仏風です。

定番料理の仔羊のローストを、夏のイメージで仕立ててみました。

骨付きの仔羊の背肉をシンプルに味わっていただきたく、塩、胡椒、タイム、ローズマリーのみの味付けで、オーブンを使わずに弱火のフライパンの上で、じっくりとジューシーに焼き上げています。

ソースは、さらりとした仔羊の肉汁に黒オリーブの微塵切りを加えて、南仏産の良質なオリーブオイルで仕上げています。

サッパリとしたソースですが、とても良く仔羊の味を引き立ててくれます。

付け合せもシンプルに、沢山の夏野菜をオリーブオイルと共に香ばしくソテーしました。

ボリュームのあるお肉を飽きずに食べられる様にと、あえて野菜の量も種類も多くしています。

今回は、皮付きのヤングコーンや自家製のドライトマト、黄色ズッキーニ、赤ピーマン、オリーブ、姫大根、ニンニク、茄子、甘長唐辛子 等を添えています。

お客様にも季節感を感じていただきたく、夏の畑にいる様な爽快な気分で盛り付けてみました。

フランス料理だからと上品にならずに、気取らずに大胆に食べていただけたら嬉しい一皿です。

 

 


シャラン鴨のロースト 赤ワインソース フォワグラ添え

2007年06月12日 | メインディッシュ

本日は、メインディッシュの一皿をご紹介します。

シャラン鴨のロースト 赤ワインソース フォワグラ添えです。

フランス シャラン産の鴨肉にも幾つか種類がありますが、グリンツィングでは限定されたシャラン地域にのみ生息していた鴨を家畜化した純血種で、有名な生産者「ビュルゴー家」のシャラン鴨を使っています。

以前は、シャラン全域で飼育されているバルバリー種等のシャラン産の鴨を使っていましたが、やはり純血種の物と比べると味わいも香りも物足りなく、仕入れのお値段は高くなりましたが、お客様に本物を食べていただきたい思いで、今の鴨に変えました。

そんな素晴らしい食材なだけに、調理できる喜びと共に緊張もします。

良い食材に成る程、料理人としての技量が試される所があり、少しでも気を抜くと、せっかく高いお金で仕入れた高価な食材が、並みの食材以下の味になってしまいます。

とは言いましても、その素晴らしい味わいをいかにシンプルに味わえるかを考える嬉しさの方が、多いことには変わりありません。

今回はオーソドックスですが、濃厚な赤ワインソースを添えてみました。

素材の味わいを素直に生かすために、軽い肉汁のソースでも良いのではないかと迷いましたが、血の香りがして個性が強いこの鴨には、ある程度の強さの有るしっかりとしたソースが似合う気がしました。

本当に柔らかく美味しいお肉ですので、鴨料理でよくある薄切りにして並べる盛り付けでは無く、厚切りの一枚にしてその味わいを噛みしめていただきたいと思います。

そして付け合せには、鴨のフォワグラにイチジクのローストです。

同じ鴨のフォワグラの相性の良さは言うまでも有りませんが、イチジクも昔から美味しいとされている定番の組み合わせです。

イチジクはバターとグラニュー糖、塩と共にローストしていますので、その甘しょっぱい味は、ソテーしたフォワグラをとても引き立ててくれます。

全体としてとてもシンプルな表現の一皿ですが、一つ一つの食材や調理法に意味が有り、お客様にも分かりやすく楽しんでいただけると思います。

以前はシンプルにと言うと、何かを削ぎ落とす事に意味を感じていましたが、最近になって本当に必要な事を的確にする事こそが、その意味ではないかと考えています。

少しでも美味しく、まだまだこれから頑張らないといけません。