中国経済のデフレ化に回復の兆しはない。その根本的原因は、習近平政権の政策の失敗である。政策の失敗を認めることは、習政権の独裁があるかぎりは不可能だ。そのため中国デフレを阻止する政策は、根本的なものよりも、小出しのつじつま合わせのものになる。最近も事実上の政策金利を下げたが、たかだか0・1%であり景気刺激効果は無に等しい。
中国共産党の重要な会議である「三中全会」が7月中旬に行われた。三中全会は、長期的な経済対策を決める場だった。中国経済で3割強のウエートを占める不動産関連市場の不況が問題視された。ただし有効な対応策は皆無に等しい。そもそも不動産市場の崩壊が始まったきっかけは、習政権の「共同富裕」というバブル潰しが原因だった。
不動産市場への資金供給を絞ることで、投機マネーを抑制し、所得や資産の不平等を防ぐというのが表向きの目的だ。だが、本当の狙いは国民受けがいい「汚職追放」と同じで、一部の富裕層や企業を懲らしめて、習政権の人気取りをすることにあったとみていい。その象徴が、大手不動産開発グループ中国恒大集団の経営危機である。
国民がみんな富裕になる、というスローガンだが、経済を冷却化させることで、国民みんなが貧しくなっただけだ。習氏は党のトップとして現在、3期目の任期にあるが、さらに長期政権を望んでいる。つまり政策の大胆な変更は、有事や世界経済危機でもないかぎり当分ないだろう。そのため中国のデフレ経済が長期化する可能性は大きい。
中国のデフレ化は、消費の低迷に顕著だ。6月の新車販売数は前年比2・7%減になり、4カ月ぶりに減少した。新車買い替えに補助金を出す景気刺激策を採用したが、効果は限定的だ。小売り全体も低調なままである。
その背景には、都市や農村での可処分所得の落ち込みがある。また先行きの不透明感が、消費よりも貯蓄に庶民を走らせているのだろう。日本でも深刻なデフレ期にみられたが、実質国内総生産(GDP)が名目GDPを上回る「名実逆転」が生じていて、4月から6月のGDPデフレーターは、昨年の春から5期連続でマイナスのままである。
この中国のデフレは、地方財政をも直撃している。地方財政は土地使用権譲渡収入に大きく依存している。昨年に続き、今年も不動産不況によって土地収入は2割近い落ち込みが予想されている。中国は地方からまず本格的なデフレ不況に落ち込んでいくだろう。
習政権であるかぎり、中国国民のデフレ懸念は増していく可能性が大きい。
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